StarWalker’s diary

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鉄道員(1956年・イタリア)

 1956年のイタリア映画の名作『鉄道員』を紹介します。

 日本では「鉄道員」と書くと、高倉健主演の『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年・日)(浅田次郎の短編小説の映画版)があるので、ひょっとしたらそちらの方は知っているという人もいるかもしれませんが、この『鉄道員』はイタリア映画を代表する感動作です。映画自体を見たことのない人でも、映画の中で流れるカルロ・ルスティケリ作曲の何とも言えない哀愁漂う曲が有名なので、そちらは聞いたことがある人もいると思います。 

あらすじ

  主人公アンドレアは、国鉄機関士。真面目一徹で頑固ですが情味のある父親で、妻のサラと3人の子供がいる。長男マルチェロ、長女ジュリア、そして末っ子で小学生の男の子のサンドロ。サンドロにとって父のアンドレアは誇りであり彼を慕っているが、他の子どもたちは父親の厳格な性格に反発して嫌っている。

 ある時、アンドレアが運転する列車に若い男が飛び込む。慌ててブレーキをかけたアンドレアだったが間に合わずその男を轢いてしまう。事故にショックを受けたアンドレアは、さらに赤信号を見落とすという不注意をしてしまい、あやうく列車の衝突事故を起こしそうになる。

 事情聴取をうけることになったアンドレア。事故の原因が長時間労働だと待遇の改善を労働組合にも訴えるが、全く聞き入れてもらえない。それどころか、真面目な性格のアンドレアはスト中に列車を運転してしまい、職場の連中からスト破りのレッテルをはられて疎外されてしまう。アンドレアは、とうとう特急列車の運転の仕事から格下げされてしまい、酒に溺れる・・・

 一方、ジュリアは付き合っていた男のレナートの子供を妊娠し、アンドレアは激怒した末、ジュリアとレナートを結婚させるが、不運なことにジュリアは流産してしまう。結婚したことに対して喜べないでいたジュリアの前に、昔付き合っていた男が現れる。その男と一緒にいたところを見られてしまったジュリアは、アンドレアに不倫していると一方的に責められた挙句、家を出ていく。その状況をみたマルチェロも、アンドレアとうまくいかない家庭に嫌気がさしてしまい、家を出て行ってしまう・・・ 

 見どころ解説

家族の絆 

 主人公のアンドレアは、監督のピエトロ・ジェミニ自身が演じている50歳の国鉄機関士です。真面目で30年間、鉄道員として生きてきた男です。この作品の見どころは、このアンドレアの家族とまた登場する人々が悩みながら、また葛藤を抱えながら、一生懸命に生きていく、その姿です。ピエトロ・ジェミニの演出により描かれたアンドレア一家の姿が、この作品を感動作にしています。

 アンドレアは、表面的には権威的で暴力的な父親ながらも、じつに情味溢れる本当は家族想いの優しい父親です。 長男マルチェロは失業中で仕事をしていないで、仕事を探しに行こうともしない。どうも不良少年たちと付き合っているらしい。美しい長女のジュリアは、レナートという小さな個人経営店を営んでいる男と付き合っています。ジュリアはレナートの子供を妊娠しているんです。だけど、それを父親に切り出せずにいる。そして、父親から愛されていないと感じています。アンドレアの妻のサラは、よくできた素晴らしいお母さんです。子供のこと、そして夫のことを本当に愛している、献身的で慈悲深いお母さんです。

口笛

 この映画で注目してほしいところは、アンドレアの家族がお互いに呼びあうときに口笛を吹くんですね。階段の下からとか、建物の入り口で、相手を呼ぶときに口笛で合図をします。これがいいですね。家族の習慣なんですね。バラバラになった家族なんだけれども、口笛が吹かれると、みんな振り返る。口笛が、家族の繋がりを表しているというピエトロ・ジェルミの演出の妙がでています。

 冒頭、サンドロがアンドレアをようやく飲み屋から連れて戻ってくるシーンで、階段から口笛を吹いて家族に戻ってきたことを合図します。それ以外にも、口笛を吹いて合図する、というシーンが要所要所で出てきます。

サンドロとサラ

 サンドロ君にとってお父さんのアンドレアは格好いいお父さんなんです。鉄道の機関士でパパが好きなんですね。最初のシーンも駅にお父さんが運転してきた列車が到着するので、サンドロ君がお父さんを迎えに行くところから物語が始まります。

  冒頭のシーン、線路が目の前にずっと伸びていて、その上を列車目線で列車が駅に近づいていく様子が写されます。これはアンドレアの機関士の視点ですね。ここで流れる音楽のテンポと、父親に会いたくて仕方ないサンドロ君の気持ちがマッチしています。

  途中、アンドレア、ジュリア、マルチェロとどんどんと家族がバラバラ、離れ離れになっていってしまいます。だけども、この映画はそれでも家族がもっている絆の強さに希望を抱かせています。

 ジュリアとマルチェロが出て行ってしまい、家にはサラとサンドロ君の二人だけになってしまいます。サンドロ君が母サラのベッドにもぐりこんでこう聞きます。

 -ジュリアとパパはどっちが正しいの?

 サラが優しくサンドロ君の頭をなでながら答えます。

 -ジュリアもパパもどちらの正しいのよ。喧嘩とはそういうものなの。 

 -じゃあ仲直りできないの?ふたりとも正しいなら、謝らないよ。

 -問題はね、今まで話し合ったことがないことなの。だから衝突するの。

  話し合わないから、小さなことで大ゲンカになるの。

  不満がたまって気がついたときには関係が傷ついてしまうの。

 この二人の静かなやり取りが、ぐっときます。 

 アンドレアと家族が、本当は互いのことを思っているはずなんだけども、互いにいき違ってしまう。上手くいかない。そんなところが実に悲しい、歯がゆい気がする。そして、そんなアンドレアの姿が哀れに見えてきます。

シルヴァ・コシナのデビュー作品

  この映画で、ジュリアを演じている女優さん、シルヴァ・コシナはこの作品でデビューしました。当時まだ20代前半です。本当に綺麗で美しいです。ジュリアは、レナートの子供を妊娠したことで、父親から無理やりにレナートと結婚させられますが、全然嬉しそうでない表情でいます。レナートの店を手伝うのですが、なんか悲しそうな虚ろな表情をしています。綺麗で美しいシルヴァ・コシナが、悲しそうな虚ろな表情をしているのが、なんともかわいそうになってきます。

 徐々にレナートとの生活を改善しようと明るくなっていきますが、以前付き合っていた男が付きまとってきて街でばったりと出会ってしまったことから、ハラハラする展開になっていきます。

 アンドレアと大喧嘩をして、家を飛び出してクリーニング屋で働きますが、そこにサンドロが訪ねてきます。クリーニング屋で働くジュリアは、顔にも少し疲れをみせながら、髪も整っていない、仕事が大変なことがわかります。久しぶりに訪ねてきたサンドロと買い物に行くために街に飛び出します。生き生きと明るい表情をして、サンドロ君と手をつないで駆けていくジュリアの姿がまた綺麗で可愛らしく、とても魅力的です。

 二人の男性との愛情のもつれと、それを父親に話ができないでいる。そして、その父親からは愛されていないのではと感じている。そんな美しい娘を見事に演じています。

 

ネオレアリズモ最後の傑作

 最後にこの映画全体に関することだけ簡単に紹介します。

 この映画は、ネオレアリズモの最後の傑作と言われる映画です。ネオ・レアリズモというのは、戦後のイタリアの1940年代から1950年代にかけての映画の、文学の潮流です。レアリズモというのは、英語でいうリアリズム、日本語でいう現実主義ということになります。

 イタリアという国は、当時はイタリア王国ですが、最初は日本、ナイツドイツと組んで枢軸国として第二次世界大戦に参加しますが、戦争継続が難しくなったことでムッソリーニが指示を失い、クーデターで、ムッソリーニは失脚します。後を継いだバドリオ政権は、連合国に降伏しますが、ムッソリーニとその支持派は北側のドイツの支配地域で、イタリア社会共和国として体制を維持します。つまり、1943年から1945年の2年間、イタリアは北部と南部と分裂した状態にあり、内戦状態となったわけです。

 戦後、その荒廃と内戦による破壊と混乱、恐怖によって生まれた社会の様々な問題や目の前の現実を題材にした映画、文学が生まれました。

 ネオレアリズモの代表的作品と言われるのが、『無防備都市』(1945年・ロベルト・ロッセリーニ監督)、『自転車泥棒』(1948年・ヴィットリオ・デ・シーカ監督)、『揺れる大地』(1948年・ルキノ・ヴィスコンティ監督)の3つです。『無防備都市』は、戦時中の内戦が生みだした色んな社会の歪、問題を描いたネオレアリズモの最初の衝撃作です。『揺れる大地』『自転車泥棒』は、戦争が終わって労働者を取り巻く貧困、そこで生きようとする人を描いた作品です。この『鉄道員』も、貧しい中で一生懸命に生きる、一人の鉄道員の家族の物語を描いているという意味でネオレアリズモの作品です。

 ネオレアリズモの一連の作品は、イタリア映画の国際的評価を高めましたが、やがて1950年代になって国が戦後の復興をなしていく中で、社会的なテーマを扱うよりも大衆文化的なコメディタッチな映画にシフトしていき、ネオレアリズモは徐々に終結していきます。この『鉄道員』も1956年に作られた作品で、この時期になるとネオレアリズモはほんとんど終結して、イタリア映画も次の時代、「ピンク・ネオリアリズモ(ネオレアリズモ・ローザ )」と呼ばれる作品がでてきます。ピエトロ・ジェミニ自身も、『鉄道員』を最後に、その後は「ピンク・ネオリアリズモ」路線でコメディ映画を作っていくようになります。

 

まとめ

  ピエトロ・ジェミニ監督の『鉄道員』は、ネオレアリズモ最後の傑作と呼ばれるイタリア映画史上に残る名作です。涙を流さずには見られない心に残る作品ですので、皆さんぜひご覧下さい。  

 

基本情報:『鉄道員

[作品データ]
原題: Il Ferroviere
製作年:1956年
製作国:イタリア
上映時間:118分

[スタッフ]
監督:ピエトロ・ジェルミ
脚本:アルフレード・ジャンネッティ
   ピエトロ・ジェルミ
   ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
製作:カルロ・ポンティ

[キャスト]
ピエトロ・ジェルミ
エドアルド・ネボラ
ルイザ・デラ・ノーチェ
シルヴァ・コシナ
サロ・ウルツィ
レナート・スペツィアリ
カルロ・ジュフレ

 

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