StarWalker’s diary

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の謎解き~ヒンドゥー教の三神一体とアーサー王物語から読み解くカイロ・レンの正体~

 2015年12月に公開された『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』。今年12月には続編となるエピソード8『最後のジェダイ』が公開される。先月から「スター・ウォーズの謎解き」と題して、私の『フォースの覚醒』をはじめとする新三部作に関する考察をまとめているが、前回、前々回とレイそしてフィンを扱い、アーサー王物語の聖杯探求の物語との類似性などを挙げた。

 今回は、カイロ・レンの謎を解いていこうと思う。

 カイロ・レンの謎もまたアーサー王物語にある。そして、同時にヒンドゥー教の神とフォースの概念の結びつきについて示してみたい。

≪以下、ネタバレを含みます≫

 

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ヒンドゥー教の三神一体とフォースの概念

 カイロ・レンを語る前に、振り返りとして旧三部作の皇帝とアナキン、フォースの暗黒面、光明面についての考察を整理したいと思う。

 実は、フォースの暗黒面、光明面という二面性の概念は、ヒンドゥー教における三神一体から、シヴァの持つ宇宙の破壊的機能とヴィシュヌの持つ宇宙の維持的機能をそれぞれ抜き出して対位させた概念に他ならないからだ。

 もともと1974年からルーカスが作成し始めた『スター・ウォーズ』の第一稿には、すでにフォースの概念(フォース・オブ・アザーズと呼称されていた)が登場している。そして、光と闇というその二面性については第二稿で、フォースの概念が掘り下げられる同時に登場しているが、この時、フォースの良い面には「アシュラ」、悪い面には「ボーガン」という名前が付けられていた。

シーブ・パルパティーンの正体

 さて、旧三部作と前日譚(プリクエル)三部作における敵役であった銀河帝国皇帝だが、彼の本名はシーブ・パルパティーン(Sheev Palpatine)と言い、ナブー出身の銀河元老院議員という設定であった。

 実はこのシーブ・パルパティーンという名前はヒンドゥー教の三神の一人であるシヴァ神とその配偶神に由来する。ヒンドゥー教に登場するシヴァ神は、「宇宙の破壊/再生」を司るとされ、ブラフマー、ヴィシュヌとともに3柱の1人である。また、ヒンドゥー教のうちシヴァ派では世界の創造、維持、再生を司る最高神として位置づけられる。 

 シヴァ神の名前は比較的有名であるが、そのシヴァ神の配偶神の名前は少し知られていないと思う。実は配偶神はパールヴァティというだ。

 シヴァ神(Siva)とその配偶神であるパールヴァティ(Parvati)女神の二人の名前を合わせると、すなわち「シヴァ・パールヴァティ(Siva Parvati)」となり、これは「シーブ・パルパティーン(Sheev Palpatine)」の名前の由来に他ならない。 

 

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シヴァとその配偶神パールヴァティ。宇宙の破壊/再生をつかさどるヒンドゥー教の神こそ、銀河帝国皇帝パルパティーンの正体である。

 

ヴィシュヌ神が表すフォースの光明面

 シヴァ神は宇宙の破壊的機能を体言化した神であり、フォースの暗黒面が象徴するものである。では、対になるフォースの光明面を具現化したキャラクターは誰か?ヒンドゥー教の三神一体では、宇宙の維持的機能はヴィシュヌ神が持つとされる。

 ヴィシュヌにも配偶神がいるが、この名前をラクシュミー(Lakshmi)という。

 実は、このラクシュミー(Lakshmi)の名前から名付けられたキャラクターが『スター・ウォーズ』に登場する。ずばり、それはシミ・スカイウォーカー(Shmi Skywalker)である。彼女は『エピソード1/ファントム・メナス』『エピソード2/クローンの攻撃』に登場したアナキン・スカイウォーカーの母親だ。

 アナキンには父親がいない設定だった。だからヴィシュヌ神に直接対応するキャラクターはいないが、その妻の神に該当するキャラクターとしてシミ・スカイウォーカーがいるのである。

 ここに、パルパティーンとスカイウォーカーというフォースの暗黒面と光明面の対立の構図が、それぞれヒンドゥー教シヴァ神ヴィシュヌ神の象徴する、宇宙の破壊/再生と維持という二つの機能の対立構造を『スター・ウォーズ』世界において具現化したキャラクターとして設定されていることがわかるのである。 

 

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アナキンの母親シミ・スカイウォーカー。ヒンドゥー教で宇宙の維持をつかさどるヴィシュヌの配偶神ラクシュミー(Lakshmi)こそシミ(Shmi )の名前の由来だ。

 

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パルパティーンvsスカイウォーカーは、フォースの暗黒面vs光明面の対立であり、ヒンドゥー教シヴァ神vsヴィシュヌ神、宇宙の破壊/再生vs維持の対立構造を意味する

 

ラクシュミーとパドマと蓮の花

  ラクシュミーがシミ・スカイウォーカーとするとさらに幾つかの謎が解ける。ラクシュミーは美と富と豊穣と幸運を司る女神とされ、上に載せた絵でもわかるように、蓮華の目を持ち、蓮華色の肌をしており、蓮華の衣を纏うとされる。さらに4本の腕を持つが、その手に水蓮を持ち、紅い蓮華の上に立っている。

 このようにラクシュミーは蓮の花そのものに象徴される女神なのだが、実は蓮の花のことをサンスクリット語「パドマ(padma)」という。すなわち、パドメ・アミダラの「パドメ」なのである。「アミダラ」は阿弥陀如来アミターバ)に由来することはその音から明らかであり、その阿弥陀如来の三昧耶形(それぞれの仏を表す象徴物)は、蓮の花なのである。

 蓮の花に象徴される女神の名前を持つパドメ・アミダラだが、彼女をラクシュミーの位置に置くと、その配偶者となったアナキン・スカイウォーカーダース・ヴェイダー自身が、ヴィシュヌであるともとらえることができる。 

 さて、シミ・スカイウォーカー、パドメ・アミダラの名前の由来とヒンドゥー教、蓮華に関する考察をまとめてみたが、このたび『フォースの覚醒』で蓮の花に由来する名前を持つキャラクターが再び登場した。それがカイロ・レンという男である。 

カイロ・レンの名前が示すこととは?

 カイロ・レン(Kylo Ren)のレンとは皆様もご存知の日本語で、蓮の花の意味だ。シミ・スカイウォーカー、パドメ・アミダラから続く蓮の花に由来する名前を彼もまた持っているのである。

 では、カイロとは何を意味するのか?

 これについては、すでにPatrick Haney氏が自身のYouTube動画で解き明かしてくれている。Patrick Haney氏によれば、カイロ(kylo)は、sonsを意味するヴィジュネル暗号になっていて、kyloをスカイウォーカー(skywalker)という鍵でとくと、sonsとなるのだという。

 

www.youtube.com

 

 すなわち、カイロ・レン(Kylo Ren)の名前には、スカイウォーカーの子孫(sons of Skywalker)という意味が隠れているのである。『フォースの覚醒』の劇中で、彼がベン・ソロであり、レイアとハンの息子であることが既に判明しているが、既にその名前に彼の正体は隠されていたのだ。

 カイロ・レンは、シミ・スカイウォーカー、パドメと同じようにレンという蓮の花に由来する名前を持っていることがわかった。これが意味するところは、彼がシヴァ=パールバティとヴィシュヌ=ラクシュミーの対立構図の中で、ヴィシュヌ神側の化身であることである。すなわち暗黒面でなくフォースの光明面の化身だ。

 『フォースの覚醒』でカイロ・レンはスノークに誘惑され暗黒面におちたルークの弟子であるが、必ず彼はフォースの光明面に戻ってくるはずである。そして、それらの伏線は『フォースの覚醒』の中にも登場している。

 暗黒面に落ちて、光明面にもどってきたジェダイの騎士は、もちろんカイロ・レン以前にアナキン・スカイウォーカーがいた。「まだ善の心がある」とパドメやルークが信じていたダース・ヴェイダーは光明面に転向した。『フォースの覚醒』でもレイアは息子にまだ光があると信じている。

 すなわち、カイロ・レン=アナキン・スカイウォーカーであり、レイ=ルーク・スカイウォーカーであるのが新三部作なのである。レイはカイロ・レンが再び転向するためのカギを握っているキャラクターと言える。

 

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 「彼にはまだ善の心がある」と信じていたパドメ(『シスの復讐』)

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 「父にはまだ善の心があります」と信じていたルーク(『ジェダイの帰還』)

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「息子にはまだ光があるわ」と信じているレイア(『フォースの覚醒』)

 

 

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新三部作で描かれるカイロ・レンの聖杯探求物語とは?

 カイロ・レンが、アーサー王伝説に登場するアーサー王の甥であるモルドレッドとして登場していることは、こちらの記事(スター・ウォーズの謎解き~1~:『フォースの覚醒』新三部作はアーサー王物語だ!類似性から読み解くレイの正体 - StarWalker’s diary)で書いたので繰り返しは避ける。 

 重要な点だけ要約すると、ジェフリー・オブ・モンマスによる『ブリタニア列王史』にあるモルドレッドは、ロージアン王ロットとアーサーの妹アンの間に出来た二人の息子の一人とされ、アーサー王とモルドレッドの関係は、ルークとカイロ・レンの関係に当てはまる。そして、このモルドレッドが、アーサー王に対して謀反を起こすという物語は、そのままスター・ウォーズ/フォースの覚醒』で語られた物語である。 

 『フォースの覚醒』では、カイロ・レンの裏切りによってルークは惑星アク=トゥーで隠遁生活を送っている。アーサー王物語では、モルドレッドはアーサー王に謀反して殺されるところで終わっており、これにより深手の傷を負ったアーサー王は、アヴァロンの島に行き生涯を終える。

 さて、カイロ・レン=モルドレッドであるとすると、新三部作における彼の役割は何になるのであろうか。実は、『フォースの覚醒』以後の新三部作におけるカイロ・レンの役割を考察するには、カイロ・レン=モルドレッドという視点以外に、実はアーサー王物語に登場するもう一人の円卓の騎士について考えてみる必要があるそれらの騎士を、ガウェインとボールスという。

  では、アーサー王物語におけるガウェインとボールスの話は、『スター・ウォーズ』新三部作におけるカイロ・レンの物語にどのようにつながってくるのだろうか? 

カイロ・レンとガウェインの共通点

  ガウェインはアーサー王物語に登場する円卓の騎士の一人だが、アーサー王の甥である。モルドレッドもアーサー王の甥であるが、ブリタニア列王史』ではロット王とアーサーの妹アンナの間に出来た二人の息子の一人とされ、モルドレッドの実兄にあたる(その後の時代では、ロット王とアーサーの異父姉モルゴースの子で、モルドレッドとは腹違いの兄であったり設定が少し異なっている)。

 「スター・ウォーズの謎解き~1~」(スター・ウォーズの謎解き~1~:『フォースの覚醒』新三部作はアーサー王物語だ!類似性から読み解くレイの正体 - StarWalker’s diary)で詳しく書いたように、アーサー王=ルークとしてこの関係を見た場合、カイロ・レンはアーサー王の甥であるモルドレッドに相当するのはもちろん、カイロ・レンとガウェインの物語にも多くの共通点があり、カイロ・レン=モルドレッド+ガウェインであると考えられる。  

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石に刺さった剣を抜こうとして失敗したガウェイン。カイロ・レンも雪に刺さったルークのライトセーバーを引き抜くことができなかった。

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カイロ・レンはアーサー王の甥のガウェインがガラハッドから受けたように、自身が抜けなかった剣による一撃を受ける。

 

 さて、そのガウェインとはどのような騎士であったのか?

 ガウェインはアーサー王の甥として、円卓の騎士の中では最古参の一人として登場する。そして非常に優秀な騎士であり、騎士道の鑑として描かれている。もっとも、これはジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』などの初期の文学作品におけるガウェインの描かれ方で、後のトマス・マロリーによる物語などでは少し描かれ方が変わっている。

 ガウェインは、『アーサーの甥、ガウェインの成長記』『ガウェイン卿と緑の騎士』『ガウェインの結婚』など彼を主人公とした様々な逸話も作られるほど、扱いとしては地位が高い。物語の中でも、終始アーサー王の右腕として活躍するのである。

 そして、印象的なのは、その最後である。

 ガウェインはアーサー王に謀反を起こしたモルドレッドとの戦いにおいて、戦死するのである。後世の話の中ではアーサー王の腕に抱かれたガウェインは、自分の強情がモルドレッドの反乱を起こしたことを詫びながら死んでいくという描写がされ、最後までアーサー王への忠義を尽くした騎士として描かれる。

 ガウェインとモルドレッドは、アーサー王の甥ながら、兄のガウェインは忠義の騎士として死んでいき、モルドレッドは謀反人になって戦うことになる悲劇の兄弟である。

 このことは、『スター・ウォーズ』におけるカイロ・レンと比較してみると面白い。すなわち、カイロ・レンの暗黒面転向前=ガウェインであり、カイロ・レンの暗黒面時代=モルドレッドという風に考えることはできないかということである。

  ルークの次世代ジェダイ育成プロジェクトの中で、カイロ・レンはその血統から一番優秀かつ将来が期待された男であったことは間違いない。スノークに目を付けられ裏切るまでは、ルークに対しても忠義を尽くしたのではないだろうか。しかし、暗黒面に転向したカイロ・レンはモルドレッドのごとくルークを裏切った。この時、カイロ・レンの中のガウェインは死に、モルドレッドとなったのである。 

カイロ・レンとボールスと聖杯探求

 カイロ・レンの正体を考えるうえで、もう一人の円卓の騎士のことを考えなければならない。それがボールスである。

 ボールスは聖杯探求の物語で活躍する円卓の騎士である。カイロ・レンはフォースの光明面に戻ってくるだろうと書いたが、では再度光明面に転向したカイロ・レンは何をするのだろうか。実は、それを解くカギがもう一つアーサー王物語における聖杯探求のボールスの物語にある。

 アーサー王物語で、聖杯探求に成功するのは、ガラハッド、パーシヴァル、そしてボールスという三人の騎士である。このうち、『スター・ウォーズ』において、ガラハッド=レイ、パーシヴァル=フィンであることはすでに記事として書いた。

 では、残りのボールスにあたる人物は誰だろう?それが、すばり光明面転向後のカイロ・レンである。つまり、レイ、フィン、光明面に戻ってきたカイロ・レンによる聖杯探求の物語こそが、新三部作に組み込まれているのだ。

 カイロ・レンとボールスの物語には多くの共通点がある。 

 聖杯探求の物語で、ボールスは一人だけガラハッドとパーシヴァルは異なる点がある。それは、ガラハッドとパーシヴァルは罪に冒されていない者であるが、ボールスは過去に罪を犯したが改心している者という点である。

 ガラハッドは、もともと聖杯をイギリスへ渡ったというアリマタヤのヨセフの末裔であり、そのために聖杯を見つけることに成功する。パーシヴァルは聖愚であり、純真で穢れなき者であるために聖杯を見つけられたのだ。そして、ボールスは自分の罪を懺悔しイエス・キリストを改心したために聖杯に行きつく

 これらはキリスト教信仰に必要なものをそれぞれ象徴しているのだが、『スター・ウォーズ』におけるカイロ・レンを思い出して欲しい。彼は暗黒面に転向して、再度光明面に戻ってくるという意味で、罪を犯し懺悔して改心するのである。まさしく、ボールスの特徴をもつキャラクターがカイロ・レンなのである。

 これが1つ目の共通点である。 

 2つ目の共通点は、カイロ・レンがルークを裏切ったのと同様、ボールスはモルドレッドと同じようにアーサー王に対しても反旗を翻して戦っているのだ。ボールスは湖の騎士ランスロットの従兄弟なのだが、ランスロットが王妃グィネヴィアとの不義の恋によってアーサー王と対立すると、ランスロット側に加勢する。ボールスは有能な騎士であり、アーサー王をあわや打ち取る寸前まで追い詰めるほど活躍するのだ。

 アーサー王物語におけるボールスは忠義深く、かつとても強い騎士であり、アーサー王を裏切ったものの、その動機はランスロットへのより深い忠誠と彼の誠実さのためであったが、アーサー王を裏切った点は、モルドレッドと同じであり、『スター・ウォーズ』におけるカイロ・レンと同じである。  

 さて、誠実で力も強い騎士だして描かれるボールスだが、カイロ・レンともある共通の外見的な特徴をもっている。それが額の傷だ。ボールスは額にはっきりとした傷跡があったとされているが、『フォースの覚醒』の中でカイロ・レンもレイと闘い、額に傷を受けていた。『最後のジェダイ』の予告編の中でもこの傷跡ははっきりとしており、ボールスとの共通点になっている。これが3つ目の共通点だ。

 

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カイロ・レンの額の傷跡もボールスの特徴と一致するが、これの意味することとは?

 

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ボールスの聖杯探求の物語は、新三部作のカイロ・レンの物語か? 

 ボールスの物語には一つ面白い話がある。それが、蘇るヒナ鳥の話と黒い騎士プライアダンとの決闘である。

 聖杯を探す途中、彼は蘇るヒナ鳥を目撃する。巣に帰ってヒナが死んでいるのを見た鳥が、自分をくちばしで突っつき血を流して死んでしまう。しかしその血をあびたヒナが生き返るという光景を目撃する。

 そして、その後、ボールスはとある貴婦人の家に泊めてもらうことになるのだが、その貴婦人というのは姉と戦争中であり、姉の軍を率いる黒い騎士プライアダンと戦う騎士を探していたのである。

 貴婦人の姉は、国に不正と邪悪をもたらしたために追放されており、妹であるその貴婦人が国を守っていたが、姉が再び妹から国を取り戻そうとしていた。ボールスはこの貴婦人の話を聞いて、力を貸し、黒い騎士プライアダンと決闘し、最後にボールスは見事勝利するのだ。

 ボールスは、その後旅を続けてであった修道院長にこのことの意味を訪ねるのだが、修道院長は、自ら血を流して死んだヒナ鳥を救ったのは、人間を罪から救ったイエス・キリストの比喩であることを告げる。そして、ボールスとプライアダンとの決闘は、同じように罪から人を救うためのボールス自身の戦いとして意味を持っている。 

 新三部作では、イエス・キリスト亡き後の境界の分裂と、イエス・キリストの再臨、最終戦争が描かれると以前書いたが、この聖杯探求におけるボールスの物語は、新三部作におけるカイロ・レンの物語として『スター・ウォーズ』に描かれることになるのではないだろうか。

 すなわち、カイロ・レンは暗黒面に落ちたが、光明面に転向して改心する。そのカイロ・レンはイエス・キリストがかつてそうした如く、人間の罪を救うためファースト・オーダー、そしてその最高指導者スノークと戦うことになるのである。

 これはまさしく、ボールスと国に不正と邪悪をもたらしたという黒い騎士プライアダンとの決闘そのものだ。カイロ・レンは聖杯探求におけるボールスなのである。 

まとめ

  今回はアーサー王物語からカイロ・レンの正体を読み解いてみました。カイロ・レンはアーサー王の甥であるモルドレットそしてガウェイン、聖杯探求のボールスにあたるのではないかということを示してみた。

 これまでの記事で紹介したように、『フォースの覚醒』から始まる新三部作は古代ケルト神話アイルランド神話の影響を大きく受けている。このような物語構成になった理由ははっきりとはわからないが、もしかすると、ルーカスフィルムがディズニー傘下になったことで、中世ヨーロッパを舞台とする逸話や物語が多くが、新三部作のストーリーの製作過程で、題材にされたのかもしれない。

 もともと、ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』を作った時、プロデューサーで大学で比較宗教学を学んだゲイリー・カーツと相談しながら、物語に世界の神話や逸話、宗教哲学の要素を取り込んだ。

 旧三部作と前日譚(プリクエル)三部作までは、ジョージ・ルーカス個人の独創性から生まれた非常に個人的な物語だったのに対して、ディズニーそして、ルーカスフィルム代表のキャスリーン・ケネディのものになった。

 ルーカスフィルムは、映画制作会社として特殊効果、CGI、音響などに関しては優れた製作能力を持っている会社だが、『スター・ウォーズ』の物語は、ルーカス個人の創造性によるものであるため、ルーカスフィルム自体には物語を作る力はない。

 また、ウォルト・ディズニー・スタジオにしても、実はオリジナルの物語を作る能力はあまりなく、特にアニメーションは中世ヨーロッパの童話や逸話を原作にしたお姫様物語のアニメーションが十八番なわけで、実写やピクサー以前のCGアニメーションは全く良いストーリー、脚本の作品はなかった。

 ディズニーは、ピクサーを買収して傘下におさめ、ようやく質の高いオリジナルストーリーに基づくCGアニメーション作品を作れるようになったが、今回の『スター・ウォーズ』にあたっては、もともと『スター・ウォーズ』が持っていた神話性を失わずに、新しい物語を作ろうとしたときに、これまでディズニーが商業的に成功してきた王道通りの中世ヨーロッパのお伽話とプリンセスのシンデレラストーリーの系譜にしたがったということなのかもしれません。

  さて、いよいよ次回は第4回になりますが、ここまで3回を通してメイン・キャラクターを順番に取り上げてきた。

 次回は、これにならってスノークの正体が、あるいはレイの両親の謎、このあたりを取り上げようと思っています。というわけで、皆様、フォースと共にあれ・・・

  

 ~スター・ウォーズの謎解き~シリーズ記事

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