2015年12月に公開された『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』。今年12月には続編となるエピソード8『最後のジェダイ』が公開される。新たに始動した新三部作は、世界を熱狂に巻き込んだ。だが、一方で、前作『フォースの覚醒』には多くの謎が残されたままである。
私も私なりに『フォースの覚醒』をはじめ新三部作に関して考察を持っているが、ようやく記事にする時間ができたので、今後順番に投稿していきたいと思う。
まずは、第1回目として、主にレイの謎に迫ってみたい。書いていて記事が長くなってしまったため次回以降複数回に分けて投稿しようと思う。また、今後カイロ・レン、フィン、スノークについても考察を追加していくつもりである。
レイの正体、カイロ・レン、フィンなど新しいキャラクターや物語の謎を解く鍵は、新三部作と中世の騎士道物語であるアーサー王物語の類似性にある。
≪以下、ネタバレを含みます≫
- アーサー王伝説とは?
- ルーク=アーサー王として『スター・ウォーズ』を読み解く
- 新三部作にみる中世ヨーロッパ・デザイン
- 湖の乙女
- レイの正体は誰か?
- レイ三部作は聖杯探求の旅
- 新三部作は、キリスト亡き後の教会の分裂を描く
- まとめ
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アーサー王伝説とは?
アーサー王伝説についてこの記事で全ての書こうとするととても納まりきれない。一般的な解説はwikipediaに任せることにするが、記事を読み進めるにあたって必要最低限の説明をしておくとする。
アーサー王は、5世紀後半から6世紀にかけて存在したブリテン人の君主であるとされている。当時、大陸からきたサクソン人の侵攻と戦い、撃退したとされています。しかしながら、アーサー王が実在したかについては歴史家の間でも色々な議論があるようだ。しかし実在したしないに関わらず12世紀には、アーサー王の物語は、歴史書や騎士道物語に登場し、アーサー王と円卓の騎士たちの物語は広く有名になりました。その中でアーサー王の物語はその後、色々な時代に多種多様なエピソードがつくられ編纂されているので、いくつかのバージョンがあり、登場人物の設定などが互いに異なってたりする。なので、人物設定に関しては必要な注記をいれる。
ルーク=アーサー王として『スター・ウォーズ』を読み解く
『スター・ウォーズ』におけるアーサー王は誰であろうか?それは、ルーク・スカイウォーカー=アーサー王に他ならない。アーサー王伝説で有名な円卓の騎士とは、すなわちジェダイ騎士団を意味すると考えてよい。
これは、これ以降の話を進めるにあたっての前提になるのできちんと説明をしておくが、ルークがアーサー王と位置付けると、ルークを取り巻く人間関係が、『スター・ウォーズ』のそれとぴったり一致するのである。
例えば、アーサー王伝説に欠かせない人物の一人が、アーサー王の助言者である魔術師マーリンである。スター・ウォーズにおけるこのマーリン的存在はオビ=ワン・ケノービそしてヨーダに相当することは明らかである。
なぜなら、アーサー王の父親であるユーサー・ペンドラゴンは敵対国の王の妃イグレインを奪い、結婚し子供アーサーを産むのだが、幼いアーサーはアントール卿という養父のもので、自身の出自を知らないまま育てられるのである。これは、ルークがオーウェンによって育てられたことと同じである。後の物語では、ユーサーの承知のもとで、マーリンがアーサーを引き取って育てたとも書かれている。
カイロ・レン=モルドレッド
アーサー王伝説に登場する重要人物の一人に、モルドレッドという男がいる。
ジェフリー・オブ・モンマスによる『ブリタニア列王史』にあるモルドレッドは、ロージアン王ロットとアーサーの妹アンの間に出来た二人の息子の一人とされる。すなわち、アーサー王の甥であるのだ。この関係は、そのままルークとカイロ・レンの関係に当てはまる。アーサーの妹アンナは、すなわちレイアと考えていい。 (モルドレッドの出自については後のトマス・マロニーによる物語では、アーサーと異父姉のモルゴースの間にできた不義の子であるとされる)
この関係は図にして比較すると一目瞭然である。
そして、ここが重要なところだが、このモルドレッドという男は円卓の騎士の一人なのだが、アーサー王に対して謀反を起こすのである。再び『ブリタニア列王史』を読み解く。
アーサー王は、ある時ローマ皇帝ルキウスを討つために出陣する。その間、甥のモードレッドと王妃グィネヴィアに国政を任せるのだ。 アーサー王はルキウスを倒すことに成功するのだが、甥モルドレッドが裏切り、自ら玉座を奪ってしまうのだ。さらに王妃グィネヴィアも夫を裏切ってモルドレッドの妻となったという。
ルークには妻はいないので、王妃グィネヴィアの話は当てはまらないが、甥が裏切るというプロットは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で語られた物語と一致する。甥モルドレッドの裏切りを知ったアーサー王は、ただちに引き返しモルドレッドと戦う(カムランの戦い)。
惑星アク=トゥー=アヴァロンの島
『フォースの覚醒』とアーサー王伝説の類似点はまだある。カムランの戦いでモルドレッドを倒したアーサー王だったが、彼自身も深手の傷を負ってしまう。そして傷を癒すためにアヴァロンの島へ行く。アーサー王伝説ではアーサー王はそこで生涯を閉じる。あるいはまた、アーサー王は復活の日のために眠っていると伝えられる。
『フォースの覚醒』では、ルークはカイロ・レンの裏切りにあい責任を感じて一人、惑星アク=トゥーの孤島に身を潜めていたのはご存知の通りである。 そして、レイが再び彼の元を訪ねるまで隠遁していた。これは、ルークが自身の復活の日を待っていたともいえる。
ルークは惑星アク=トゥーで隠遁生活を送っていた。アーサー王もモルドレッドとの戦いの後アヴァロンの島に渡った。
そして、アヴァロンは、キリストがアリマタヤのヨセフとブリテン島に最初に上陸した地で、後にイギリス最初のキリスト教会となったとも言われている。思い出して欲しい。最後のジェダイであるルークが隠遁した惑星アク=トゥーの孤島には何があったか?そう、最初のジェダイ寺院だ。
しかも、この惑星アク=トゥーのシーンは、アイルランドのスケリッグ・マイケルの孤島で撮影されている。このスケリッグ・マイケルの孤島は、アーサー王伝説の由来であるケルト人の歴史と深くかかわっている。なにせ、西暦588年(アーサー王が活躍した時代とほど同時代である)に島の山頂付近にケルト人により修道院が建てられたという言い伝えがあり、初期キリスト教の僧侶たちが崖の下に作った石小屋で暮らしていた。この石小屋は映画にも登場している。
しかも『最後のジェダイ』では、この最初のジェダイ寺院を守る”caretaker"(世話人)というエイリアン種族が登場することが分かっている。これはキリスト教の修道士のような恰好の衣装をまとっている。
古代ケルト人の王であったアーサー王の物語は、新三部作に色濃く反映されているのである。
アイルランドの世界遺産であるスケリッグ・マイケル。『フォースの覚醒』の最後のシーン、レイがルークと出会うシーンが撮影された。ケルト人の修道院の跡が残る。
カイロ・レンはどうなるのか?
アーサー王伝説では、カムランの戦いは、物語の最終章であり、モルドレッドはアーサー王に倒される。しかし、『スター・ウォーズ』新三部作では、カイロ・レンはまだ生きており、アーサー王伝説でいえば、『フォースの覚醒』はカムランの戦いが終わったところから始まるといっていい。では、カイロ・レンがモルドレッドに相当する人物だとすると、その後『最後のジェダイ』そしてエピソード9ではどうなるのか?
これについては、また長くなるため次回に譲ろうと思う。
※2017/10/6 追記:本件、カイロ・レンについて新しい記事を書きました。
新三部作にみる中世ヨーロッパ・デザイン
新三部作とアーサー王伝説の類似性は、その人間関係だけではない。新三部作の人物の衣装デザインも中世イングランド、アーサー王伝説の人物を模していると思われる。
アーサー王所縁の土地と伝承が伝えられているイングランドのティンタジェルという村にはアーサー王の銅像がある。崖の上にたたずむアーサー王の姿は、『フォースの覚醒』の最後のシーンに登場したルーク・スカイウォーカーを思わせる。
This photo of Tintagel Castle is courtesy of TripAdvisor
『フォースの覚醒』の最後、惑星アク=トゥーで隠遁していたルークは、アヴァロン島へ行ったアーサー王に重なる
モルドレッド卿とカイロ・レン
またモルドレッド卿は、アーサー王の敵として、他の円卓の騎士たちと異なり黒衣をまとった姿で描かれることが多い。劇中のカイロ・レンの姿は、ヘンリー・J・フォードの描いたモルドレッド卿によく似ている。そもそも、なぜカイロ・レンのライトセーバーは十字型をしているのだろうか?劇中では答えは示されていないが、私は、これには明確な意味があると考えている。
キャプテン・ファズマにいたっては、銀色の鎧兜といい中世の騎士そのままである。また『スター・ウォーズ』で戦士が持つ盾が登場したのは初めてであり、これも中世ヨーロッパ的である。
盾と剣に似た武器を持つストームトルーパーや、キャプテン・ファズマの銀色の鎧兜たマントは、中世ヨーロッパ的な世界観を持っている。
湖の乙女
もう一つ、『フォースの覚醒』で重要な舞台となったのがマズ・カナタの城である。緑の惑星タコダナの湖に面した美しい場所にある城、そしてそこに住んでいるマズ・カナタの存在。これもアーサー王伝説に関連する。アーサー王伝説には、湖の中の城に暮らす高貴な魔法使いが登場する。「湖の乙女」「湖の貴婦人」と呼ばれる人物である。
この「湖の乙女」なる人物は、アーサー王物語でいくつかの重要な役割を果たしている。アーサー王が甥のモルドレッドと戦って(カムランの戦い)瀕死の重傷を負った時、アーサー王が持っていた剣、エクスカリバーを回収するのがこの「湖の乙女」なのである。実は、アーサー王がペリノア王と戦って持っていた剣を折ってしまうのだ。そこでマーリンによって、「湖の乙女」に引き合わされ、そこで2番目の剣であるエクスカリバーを手に入れるのだが、これをカムランの戦いの後に「湖の乙女」に返すのである。『スター・ウォーズ』におけるマズ・カナタはルークのライトセーバーを持っていた。カイロ・レンが裏切り、おそらくルークとカイロ・レンが戦った後、ルークは自分が隠れる前に、それをマズに預けたのだ。
マズはジェダイではないがフォースを知っている者であり、湖の中の城に暮らす高貴な魔法使いという役割に合致する。そして、ルークのライトセーバーは、マズのもとで保管され、そしてレイに渡ることになる。
このマズ・カナタの城も中世ヨーロッパを思わせる。
湖畔にたつマズの城。マズ・カナタはアーサー王物語でエクスカリバーを回収した「湖の乙女」のようにルークのライトセーバーを回収していた。
ちなみに、旧三部作でも「湖の乙女」的な存在が存在した。それは、我らが偉大なるジェダイの長老であるヨーダである。ヨーダは沼の惑星ダゴバに住んでおり、ルークはオビワン・ケノービの導きによりヨーダのもとへ行く。アーサー王も、マーリンによって「湖の乙女」のもとへと導かれた。
マズ・カナタとヨーダは、湖の畔に住み、フォースに通じている。またその外見は人間に似るが背は低く、皮膚の色は異なり、妖精的だ。
旧三部作におけるヨーダも、アーサー王物語における「湖の乙女」の要素を持つ。
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レイの正体は誰か?
さて、モルドレッド=カイロ・レンだとすると、新三部作の主人公であるレイは誰に当たるのか?実は、レイの立場にふさわしい人物がアーサー王伝説に登場する。
それが、ランスロット卿とペレス王の娘エレインの子供であるガラハッド卿だ。ガラハッドは、「最も穢れ無き騎士」と云われるアーサー王伝説そして聖杯伝説に登場する円卓の騎士の一人である。聖杯探求の物語において、ガラハッドは二人の円卓の騎士たち(ボールスとパーシヴァル)と共に遂に聖杯を見つけることに成功し、最後は神に召されて昇天する。
では、そのガラハッドが何故レイなのか?
実はガラハッドの母エレインは、ガラハッドを生んだ後、ランスロット卿に捨てられ、ガラハッドはエレインのいた女子修道院に預けられ、そこで育つのである。ガラハッドの誕生は、魔術師マーリンにも予言されていて、ガラハッドは将来「聖杯を手にする者」であると予言されている。
そして、成長したガラハッドは父であるランスロット卿のもとに行くのだが、ここでアーサー王に引き合わされる。ガラハッドはアーサー王から数々の試練を受けるが、最終的に、ガラハッドを「最も偉大な騎士」だと称賛し、円卓の騎士として迎えられるのである。
円卓の騎士の席のうち、13番目のの席は空席になっていた。これは13番目がキリストを裏切ったユダの席であることから、魔術師マーリンが強力な呪いをかけており、座ったものは呪い殺されるとされていたのだ。だが、ガラハッドはこの席に堂々と座ってみせる。そして、川のほとりにあった「石に刺さった剣」(「最も優れた騎士だけがこの剣を抜ける」と銘文された剣)も、ガラハッドは見事に抜いて、この「選定の剣」を手にするのである。そして、アーサー王はガラハッドこそ、聖杯を見つけるのにふさわしいものであると確信し、彼に聖杯を探索するように命じるのである。
石に刺さった剣と地面に刺さったライトセーバー
あれ?石に刺さった剣を抜いた話って、アーサー王自身ではなかったのか?という人もいるだろう。その通り、この選ばれし者だけが抜ける剣という話は、アーサー王自身のエピソードにも登場する。ガラハッドが抜いた剣は、また別の剣なのだ。しかし、重要なのは、ガラハッドがこの選ばれし者だけが抜ける剣を抜いたという点である。
思い出して欲しいのは以下のシーン。
レイは雪に刺さったルークのライトセーバーを取る・・
スターキラー基地で、ルークのライトセーバーを引き抜いたのは、誰であったか?カイロ・レンはそれを抜こうとしたが、手にしたのはレイである。そして、旧三部作を思い出して欲しい。『帝国の逆襲』で雪に刺さったライトセーバーを引き抜いたのは、まぎれもなくルークである。しかも、レイが手にしたのはこの時と同じルークのライトセーバーなのである。
ルーク自身が雪に刺さったライトセーバーを引き抜いたように・・
『スター・ウォーズ』で地面に刺さったライトセーバーを抜いたのは、ルークそしてレイの二人だけである。 そして、アーサー王伝説で、石に刺さった剣を抜いたのはアーサー王とガラハッドだけである。
そして、もう一つ。アーサー王伝説ではこの石に刺さった剣を抜こうとして失敗した円卓の騎士がいるのである。それがアーサー王の甥、ガウェイン、モルドレッドの兄なのである。この記事の冒頭で、モルドレッドは、ロージアン王ロットとアーサーの妹アンの間に出来た二人の息子の一人と書いたが、その二人の息子のうち兄がガウェインだ。
『スター・ウォーズ』でルークのライトセーバーを抜こうとして抜けなかったカイロ・レン。ルークの甥にあたるこのカイロ・レンは、剣を抜けなかったガウェインと、先に説明したようにその弟であるモルドレッドを合わせた人物として考えると、この点も合致するのである。そして、剣を抜けなかったガウェインは、逆にその剣によって一撃されるだろうと予言までされるのである。そして、その予言は、聖杯探求の中で的中する。ガラハッドは予言通りに、その抜いた剣で一撃でガウェインを昏倒させるのである。
『フォースの覚醒』で、レイはルークのライトセーバーを抜き、それによってカイロ・レンに一撃するのである。
カイロ・レンはアーサー王の甥のガウェインがガラハッドから受けたように、自身が抜けなかった剣による一撃を受ける。
レイ=パーシヴァル+ガラハッドか?
以上のように、このことからも、レイはアーサー王伝説におけるガラハッド卿にあたる役割をになった人物として登場していることは間違いない。だが、レイのキャラクター設定にあたるアーサー王物語に登場するもう一人の騎士がいる。それがパーシヴァルという騎士である。
パーシヴァルは聖杯探求に登場する騎士の一人である。パーシヴァルはペリノア王の息子なのだが、幼い頃に父親は殺されてしまう。そこで、母親は一族が争いや裏切りに巻き込まれることを嫌い、幼いパーシヴァルを連れ人里離れたウェールズの森に引きこもり、そこでパーシヴァルを育てる。
そこでパーシヴァルは騎士道や武器、自分の出自についても知らないままに育つのである。しかし彼は唯一ひとつだけ、父親が残した武器「小さな美しいスコットランド風の槍」を持っていた。
だがパーシヴァルが15歳になるころ、森の中で5人の騎士に出会う。それによってパーシヴァルは母が望まなかった騎士になる道を選ぶのである。
パーシヴァルは聖杯探求でも重要な人物であり、ガラハッドと共に聖杯を見つける3人の騎士の一人なのであり、新三部作でのレイはこのパーシヴァルとガラハッドを合わせた人物として描かれていると思われる。
その理由は、まずパーシヴァルの名前の由来である。パーシヴァルとは「谷を駆ける者」(Percival ="pierce the valley")が語源と言われている。『フォースの覚醒』を思い出して欲しい。『フォースの覚醒』で、ジャクーでのレイはスピーダーバイクで砂漠を駆けていた。また、レイは、ジェダイやフォースを知らないまま、辺境の惑星で育つのである。パーシヴァルもまた、騎士道について教えられぬまま森の中で過ごした。
実は、旧三部作におけるルーク自身が同様の存在で、父親を殺され(たとルークは信じている)辺境の惑星で生きていた。また、アナキンも同様で、母と二人で暮らしておりクワイガン、オビワンと知り合ってジェダイに憧れるようになるのである。そもそも言うまでもなく、「スカイウォーカー(Skywalker)」という名前も「空を駆ける者」という意味だ。
レイの名前(Rey)だが、当初製作段階での名前はキラ(Kira)だった。Kiraは「光線」「一筋の光」などを意味するサンスクリット語が語源である。途中で名前はReyに変わったわけであるが、Reyはrayに通じてこれも「光」を表す言葉である。また、Reyはこれに加えてスペイン語で「王」の意味である。
ルークの名前(Luke)も「光るもの」「光」を意味する。ちなみに、ルークのラテン語形はルーカス(Lucas)であり、原作者のジョージ・ルーカス(George Lucas)は自身の名前を英語形にしてルークに与えている。
すなわち、ルークとレイはその名前の意味も同じなのだ。
砂漠を駆けるレイは、パーシヴァルの名前の由来に通じるものがある
パーシヴァルは父親が残した槍を唯一の武器として持っていた。『フォースの覚醒』でのレイが持っていたのが杖である。これは杖ではあるが槍のように杖を使いこなす点もパーシヴァルとレイに共通する点である。ひょっとしたら、この武器は、レイが両親から預かった唯一のものということが後々明らかになったりしないだろうかと想像する。
レイが唯一武器として使うのが杖。騎士になる前のパーシヴァルも槍を持っていた。
パーシヴァルは森の中で5人の騎士と出会い、アーサー王の元へ赴いて自分が騎士になることを決める。レイもジャクーにやってきた人物たちを通して、フォースを学ぶ道を歩むことになるのである。
以上のようにパーシヴァルはレイの生い立ちと共通点が多い。レイはガラハッドとパーシヴァル双方を合わせて作られた人物と考えられるのである。
実は、『スター・ウォーズ』におけるパーシヴァル的なキャラクターは誰かについて、もう一つ考察できることがあるのでは・・・と考えているが、それはレイの話題から外れるので次回に譲ろうと思う。
※2017/10/3 追記:本件、フィンとパーシヴァルについて新しい記事を書きました。
なぜレイはジャクーに捨てられたのか?
『フォースの覚醒』でわかったことは、レイが幼い頃、何者かによってジャクーに置いていかれたということである。
レイはジャクーに来たが、映像で見る限り、レイの身柄は、直接廃品回収業者の親玉アンカー・プラットに預けられている。その後もレイはアンカーの下で働いているのだが、これではほとんど売り飛ばされたに等しい。これは、ルークが一応親族であるオーウェン叔父、ベルー叔母に預けられ、オビワン・ケノービによって、将来のジェダイ候補として大切に見守れらながら生活していたのと訳が違うのである。ルークには、ビックスなどトシ・ステーションでつるんでた友達もいるが、レイは完全に天涯孤独の身なのだ。
では、なぜレイがこのような運命をたどらねばならなかったのだろうか。
再び、アーサー王物語に戻る。
アーサー王の甥であるモルドレッドは、最後にアーサー王を裏切り、謀反を起こすことは先に書いた。それにって、アーサー王はアヴァロンの島で生涯を閉じ、その治世を終えるのだが、実はモルドレッドの誕生にあたっては、以下のような物語があるのだ。
魔術師のマーリンは、将来モルドレッドが誕生することを予言しているのである。この予言は以下のようなものだった。
「5月1日に生まれた子供が、アーサーとその王国を滅ぼすだろう」
そのため、アーサー王は、国中に触れをだして、5月1日に領主と貴婦人の間に生まれた子供を集め、船に乗せて海に流してしまうのだ。この中には生後間もない赤ん坊などもいたと言われる。しかし、モルドレッドだけは奇跡的に岸に打ち上げられて生還するのだ。
カイロ・レンの暗黒面転向は予言されていた?
カイロ・レンのような男、すなわち暗黒面に転向して新共和国の脅威になる男が生まれることが予言されていたのではないだろうか。そして、次世代ジェダイの育成をしているある時、ルークはフォースを通じて、オビワンあるいはヨーダ(当然、霊体である)からそれを知るのではないか。ルークは新しいジェダイを育成する中で、オビワンやヨーダの助言を求めていたはずであり、少なからずオビワンやヨーダの助言を聞き入れながら、ルークの生涯の仕事である「次世代ジェダイ育成プロジェクト」を行っていたに違いない。
だが、ハンとレイアの間にカイロ・レンが生まれる。ルークはこの時、オビワンやヨーダが「この子は将来危ない」と警告したにも関わらず、カイロ・レンを訓練するのではないか。むしろ、そうであったからこそ、ルークは訓練によりカイロ・レンをジェダイにしようとしたのかもしれない。それは、レイアのこともあっただろうからだ。ひょっとしたら、ルークは、オビワンやヨーダから自分の甥であるカイロ・レンを殺せ、くらいなことを言われていたのではないか?
少し話が横にそれるが、ルークはオビワンやヨーダの言うことは、結構無視してやってきた男でもある。『新たなる希望』で、オビワンから「フォースを学ぶのだ、ルーク」と言われても「無茶云うなよ、俺に何ができるのさ!」といって拒否する。結局オーウェンとベルーが帝国軍に惨殺されたことで帰る場所もなくなり、ジェダイになると決める。さらに、『帝国の逆襲』では、「ハンとレイアがやばいんじゃ、助けに行くじゃ!」と言い、オビワンやヨーダが「ダメだ!修業が終わっとらん」と言っても聞かないし、最後の『ジェダイの帰還』でも、オビワンやヨーダは、「ヴェイダーと皇帝を倒せ!実の父をお前は殺さなきゃあかん」というのに、ルークは「父ちゃんを殺せるもんか、父ちゃんはまだいい奴なんじゃ、皇帝から父ちゃんを救うんじゃ!」といってヴェイダーと戦うことを拒否しているのだ。結果的にはルークは正しく、ヴェイダーは転向して皇帝を倒すことになる。
オビワンやヨーダは、フォースの光明面が絶対的善であり、暗黒卿を滅ぼさねばならない、と考えている。だからルークの父親に対する愛も関係なく、父を殺せ!と言っているのだ。これはルークにとっては、非情な命令だ。
ルークは基本優しい男であり、彼には父親は殺せなかった。さて、そんなルークが、オビワンやヨーダに、「カイロ・レンを殺せ!奴は危ない男だぞ!」と言われたらどうするか?「妹の息子を殺せるもんか!彼は俺が訓練する。彼の善の心を訓練し、立派なジェダイにしてみせます!」というだろう。
しかし、『ジェダイの帰還』の時とは違い、ルークはカイロ・レンの訓練に失敗する。カイロ・レンは次第に悪に転向するようになり、オビワンの予言が正しかったことを知る。これは、ルークにとって甥に裏切られたという思いとともに、彼にとっての大きな挫折を味わったに違いない。
そして、ルークはレイを置き去りにした・・
ルークは、その後どうしたのだろうか。カイロ・レンが悪に転向していくのを見て、オビワンやヨーダが正しかったことを知ったルークは、カイロ・レンのような者が再び出ないように、ある時点でジェダイ寺院で訓練しようとしていたフォース感応者である子供たちを解散し、辺境の惑星に置き去りにしたのではないだろうか。置き去りにした、というのは、彼には子供たちを殺すことはできなかったからだ。ルークなりにこれが正しいと思ったことをしたのだろう。
ひょっとしたら、子供たちを辺境に置いてこい!というのも、オビワンやヨーダの意見だったかもしれない。
アーサー王が、マーリンの予言にあるモルドレッドの誕生を怖がり、領主と貴婦人の間に生まれた子供を集め、船に乗せて海に流してしまったように、ルークも同じことしたのではないか。ちなみに、この時、アーサー王は、他の騎士からその責任を責められるのだが、すべてはマーリンがいけない、といって聞かないのである。
私は、以上のことから、レイも上述した理由でルークによって島流しにされた子供の一人なのではないか、と考えている。
ルークが当初からレイを将来の脅威に備えて、ジェダイとするために匿っていたとするなら、ジャクーに一人で置き去りにはしないだろうと思うのだ。レイは明らかに置き去りにされていて、ルークは彼女を一度見捨てている。
ただし、唯一、気になるところは、ロア・サン・テッカが、ジャクーにいた理由である。『フォースの覚醒』でロア・サン・テッカは、カイロ・レンのこと、そしてその出生のことを知っていた。さらに彼はジェダイの信奉者である。レイのことを見守るためにジャクーの村にいたことは十分に考えられる。もしかしたら、レイのことも予言されており、ルークは唯一レイにはロア・サン・テッカという保護者的存在をおいたということは考えられる。そもそも自分のところへ導くための「スカイウォーカーの地図」をロア・サン・テッカの預けたのはルーク本人で、ロア・サン・テッカはレイを連れて、ルークのもとに連れて行くという計画ではなかったのだろうか。
実は、アーサー王物語でガラハットをアーサー王へ連れて行くのは、とある老騎士なのだ。そして、アーサー王物語におけるガラハッドも、モルドレッドと同じようにマーリンによりその誕生を予言されていた。マーリンはガラハッドが「聖杯の探求に成功する者」であることを予言していたのである。同じように、オビワンはレイが生まれてくることを予言していたのかもしれない。そしてルークもやがてその時期が来ることを知っていたのかもしれない。
あるいは、ルーク自身は、オビワンからレイのような者の誕生を予言されていて知っていても、それが具体的に誰かは知らなかった。時が経ち、ロア・サン・テッカが「スカイウォーカーの地図」を手に入れたとき、それがレイであることを突き止めていた。だからロア・サン・テッカはジャクーにいた。と考えることもできるかもしれない。
レイはディズニー・プリンセスになった・・
ちなみに、私はレイの両親については、その父親との関係がとりわけ重要になると思っている。そして母親については、必要以上に特別に描かれることはないのでは考えている。
理由は、レイは製作側であるディズニーにより、ディズニー・プリンセス化されていると考えるからだ。ディズニー映画におけるプリンセスには、母親は存在しない。あるいは存在していても早期に死亡していたり目立つことはない。プリンセスが成長するのは、その父親との関係を通じてだ。
スターウォーズ新三部作が、今までのエピソードと決定的に違う点は、製作側がディズニーになったことである。だから、レイはもはや立派な「ディズニー・プリンセス」なのである。
このスター・ウォーズキャラクターのディズニープリンセス化は、既にスピンオフ映画作品である『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年・ ギャレス・エドワーズ監督)でも行われている。主人公ジン・アーソの母親は映画冒頭で敵に殺され、物語は父ゲイレン・アーソと娘の絆の物語として進行するのだ。
『フォースの覚醒』においても、レイが見つけ出したいと強く願っているのは母親でなく父親の方であると思われる。カイロ・レンに尋問されたときのレイは、「ハン・ソロを父親のように」思っていた。同様にカイロ・レンには「お前は父親を知らない」と言われている。このシーンだが、英語の台詞では「You feel like he's the father you never have」であり、レイは父親のことを全く知らない、あるいは父親はいない、と考えられる。
新三部作はレイの父親の探求なのだ。
ひょっとして、実は、レイは自分の母親については、それが誰かおぼろげなら知っている、わずかながら幼いころの記録があるということはないだろうか?
レイがジャクーに連れてこられた時、母親がレイと一緒だったのではないか?レイが5歳くらいの時に、ジャクーに来たのであれば、母親の記録はおぼろげながらあるだろう。アーサー王物語におけるガラハッドやパーシヴァルは母親により育てられている。
私がそう考える根拠になるかはわからないが、『フォースの覚醒』における以下のシーンは、それを暗示しているように見えなくもないと思うが、いかがだろうか。この時、レイは自分の母親を思い出していたのではないだろうか。
レイ三部作は聖杯探求の旅
先ほども少し書いたが、アーサー王伝説におけるガラハッドは聖杯探求の旅で活躍するのである。聖杯伝説で、ガラハッドは二人の円卓の騎士たち(ボールスとパーシヴァル)と共に遂に聖杯を見つけることに成功し、最後は神に召されて昇天する。
新三部作は最高指導者スノークとファースト・オーダーを倒し、フォースにバランスをもたらし、銀河に平和と秩序を回復するための物語である。そして、そのカギを握るのはガラハッドすなわちレイである。
キリスト教における「聖杯」とは、「最後の晩餐」において、キリストが弟子達に「私の血である」としてワインを注ぎ、振舞ったという杯である。『スター・ウォーズ』におけるキリストの血にあたるものは、すなわちフォースそれ自身だろう。では『スター・ウォーズ』における「聖杯」とは何か?それは、スカイウォーカーの血統である。
なぜなら、『スター・ウォーズ』におけるアナキン・スカイウォーカーはその生誕の物語から考えてもイエス・キリストのメタファーである。自ら暗黒面に落ちて、皇帝を倒し、銀河に平和をもたらしたという意味で、彼は人類の罪を背負って十字架にかけられたキリストになぞらえることができる。すなわち、『スター・ウォーズ』における聖杯とは、そのキリストの血を受けたもの=スカイウォーカーの血統であるからだ。キリスト教にも、聖杯伝説の解釈として「聖杯」=キリストの血統、キリストの子孫、という説はある(映画にもなった小説『ダ・ヴィンチ・コード』でも描かれていた)
『フォースの覚醒』は、銀河に平和をもたらす鍵であるルーク(最後のジェダイ、フォースの血を受ける入れ物、すなわちアナキン・スカイウォーカーの血統が流れる者)を探す物語であった。そして、最終的に、ルークに行きついたのはレイであった。
レイは、ガラハッドと同じく聖杯(すなわちスカイウォーカーの血統を継ぐもの)を見つけることに成功したのである。
では、続くエピソード8そしてエピソード9では何が描かれるのだろうか?
新三部作は、キリスト亡き後の教会の分裂を描く
フォースの意志により生まれた「選ばれし者」アナキン・スカイウォーカーは、自分が暗黒面に落ち、最後に転向したことで全人類を救済した。エピソード1から6は、アナキン・スカイウォーカーの物語であり、これはイエス・キリストの生涯なのだ。
そして、イエス・キリストの物語の最終章にあたる『ジェダイの帰還』で描かれたものが、アナキン・スカイウォーカーによるフォースの調和、贖罪、すなわち、イエス・キリストの死であったとすると、その後の物語である新三部作(エピソード7から9)は何を描くのだろう。
それは、キリスト亡き後の原始キリスト教の登場、患難時代、キリストの再臨、アルマゲドンと千年王国の誕生ではないだろうか。
実際に、『フォースの覚醒』の舞台では、ジェダイもシスもおらず、それぞれの側にその信奉者がいるだけだ。レン騎士団はシスではなく、崇拝者の集団であり、ダース・ヴェイダーを崇めるものたちであり、ロア・サン・テッカもマズ・カナタも、あくまでフォースを知っているもので、ジェダイの崇拝者という立場である。これは、イエス・キリスト亡き後の、キリスト信奉者と教会の分裂と同じである。
銀河に唯一あったフォースを司るジェダイ騎士団(=フォース教教会といってもいい)はなくなり、かつてはジェダイのみの信奉していた銀河の民衆も、暗黒時代の訪れとともに、信仰心はなくなり、暗黒面を崇拝するものも生まれた。
ファースト・オーダーが支配する『フォースの覚醒』から始まる新三部作の舞台は、まちがいなく患難時代である。そこにキリストが再臨し、第一の復活が訪れる。そして世界的独裁者との最終戦争を経て、第二の復活が訪れるのではないか。最終戦争は、世界的独裁者の同盟軍と、再来したキリストとの戦いである。
『スター・ウォーズ』における、再来したキリストとは、レイのことであり、世界的独裁者の同盟軍はファースト・オーダーに他ならない。最終戦争は、再来したキリスト側の勝利に終わり、その後に千年王国と呼ばれる至福の時代が訪れることになっている。
実は、この推論のヒントになる場面が『フォースの覚醒』の中にある。聖書でこの世界的独裁者の同盟軍は「獣」と呼ばれているのだが、『フォースの覚醒』でもファースト・オーダーの軍隊がまさしく「獣」と呼ばれている場面があるのである。それは、惑星タコダナのマズの城をレン率いるファースト・オーダーが襲撃する場面。ファースト・オーダーがやってきたことに気がついたマズはこう言うのである。「ケダモノどもがやってきた!」と。
私は、最初にこの映画を観たとき、この言葉に違和感を覚えた。なんでファースト・オーダーを、わざわざ獣と呼んだのだろうか、と。しかし、今はその答えが良くわかる。それは新三部作が上述したように「キリストの再来と最終戦争」を描くものだからである。
マズ・カナタはファースト・オーダーを「獣」と呼んでいた。これが意味することは?
まとめ
『スター・ウォーズ』の創作は今に伝わる数々の神話、伝説に基づいて作られている。だからこそ、『スター・ウォーズ』はこれほどまでに現在の神話として大ヒットし、多くの人の心を引き付ける要素を持っていると思う。だからこそ、実際の神話や伝説を紐解いてはじめて物語を深読みできる。
今回は、まずは第1回目として、新三部作とアーサー王物語の共通点とレイの謎についてまとめてみた。書いていて記事が長くなってしまったため、今回書けなかったレイの両親についての考察などは次回以降、複数回に分けて投稿しようと思う。
続編ではレイの両親、フィン、カイロ・レン、スノークの正体について考えてみたい。というわけで、皆様、フォースと共にあれ・・・
《スター・ウォーズ映画最新作『スター・ウォーズ / 最後のジェダイ』は2017年12月15日より全国ロードショー》
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