StarWalker’s diary

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『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の謎解き 〜なぜレジスタンスは惑星クレイトを目指すのか?〜 【ネタバレ・考察】

    スター・ウォーズ映画最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が12/15に公開され、只今絶賛公開中です。これまでも『フォースの覚醒』にもとづいて色々な考察をしてきましたが、これからは『最後のジェダイ』で語られた内容も含めて、引き続き同じように考察をしていきたいと思います。

   今回は、惑星クレイトの戦いから映画の最後に至る、レジスタンスの戦いの物語の中に秘められたキリスト教的隠喩についてです。

 《!以後、『最後のジェダイ』のネタバレ含む。未鑑賞の方は読まないでくださいね》

 

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 はじめに

    ファースト・オーダーを迎え撃つレジスタンス。地上部隊が塹壕に戦列を組み戦闘態勢になる。そこで将校が歩いた足跡に赤い鉱物が見えるが、地表面の白粉を指ですくって舐めた兵士が「塩だ・・」という。

 『ローグ・ワン』のギャレス・エドワーズ監督もカメオ出演しているこの場面、私が初見で気になったのは、なぜわざわざこの惑星の地表が塩であることを説明するワンカットを入れたのか?ということだった。なぜなら、スター・ウォーズ』はその惑星の設定や背景について、劇中で直接語られたり、説明されたりすることは少なく、惑星の名前すら登場しない場合もあったりするからだ。

 わざわざ地表が塩であることを示す台詞は、これまでのスター・ウォーズ映画からすると、登場しないほうが自然で、映画本編中ではなく他の書籍・メディアなどで説明がされるほうが自然なのである。

 なぜ、観客に地表が塩であることをわざわざ説明したのだろうか?そして、なぜクレイトは塩の惑星で、レジスタンスは惑星クレイトを目指したのだろうか?

    当然、物語上はちゃんと説明がある。ファースト・オーダーに追い詰められたレジスタンスは、惑星クレイトを目指す。設定では、惑星クレイトは鉱物資源が豊富で、旧反乱軍の破棄された基地があり、銀河にレジスタンスのメッセージを送れる施設があることになっている。

    だが、実は、この地が塩に覆われた惑星でレジスタンスが戦うことは、ある重要なメッセージがある。それは、スター・ウォーズが多かれ少なかれ聖書の話とは無関係でいられないことに関連している。そして、わざわざそれを観客に認識させるヒントとして「塩だ・・」という台詞を入れたのではと考えている。

スター・ウォーズと聖書の関係

    スター・ウォーズは聖書の物語と重なる事が多い。正確に言えば、旧三部作の時はそうでもなかったのだが、前日譚三部作でエピソード1から6までが、アナキン・スカイウォーカーの誕生から死までの物語として描かれた時に、アナキンが預言による選ばれし者となり、処女懐妊によって生まれ、自らが暗黒面に落ちながら最後に転向して死んだジェダイ、フォースに調和をもたらした者となり、イエス・キリストの生涯として描かれたのである。

    以前に記事でも書いたが、『フォースの覚醒』はレイによるルーク・スカイウォーカー探索の旅であり、アナキン・スカイウォーカーの血を継ぐ者であるルークはキリストの血を入れた器である聖杯になぞらえる事ができ、レイによる聖杯探求の物語だった。(参考:スター・ウォーズの謎解き~1~:『フォースの覚醒』新三部作はアーサー王物語だ!類似性から読み解くレイの正体 - StarWalker’s diary

    そして、スター・ウォーズが聖書による物語だとしたら、レイ新三部作はどのような物語になるのか?について、レイ新三部作は、キリストの再臨と最終戦争を描くのではと以前書いた。

   実は、『最後のジェダイ』のうち特にこの映画の後半は、非常に聖書色が強くなっているのだ。

『最後のジェダイ』に見る聖書的要素

    ルークがレイに歴史ジェダイの歴史を語るが、この時、ルークはベン・ソロを含めて12人の弟子と新しい時代育成のためのジェダイ寺院を作ったことを話している。この12人の弟子と言うのは明らかにキリストの十二使徒を表す。

 すなわち、ここでのルーク・スカイウォーカーイエス・キリストそのものとなっているのだ。そして、ベン・ソロはその弟子の一人であったが、ルークを裏切る。すなわち、彼は同じようにキリストを裏切ったユダだと言えるのは明白だろう。

    そして、この場合のルークがイエスと考えると、惑星クレイトでの戦いの見方が変わってくる。

「地の塩、世の光」

    惑星クレイトは地表が塩に覆われた惑星だ。実は、聖書における塩は特別な意味を持つ。塩は、旧約新約聖書において、社会の腐敗を正し清める人々の象徴であり比喩なのだ。これは、ユダヤ教における塩が清めの役割を果たす重要なものだからで、旧約聖書にもちゃんと書いてある。

    そして、新約聖書にはイエスが山の上で弟子たちと群集に語った山上の説教という教えがあり、これはマタイ福音書をはじめ複数の福音書に記述があるが、この中に「地の塩、世の光」という話があるのだ。

 そして、まさしく、これがレジスタンスの惑星クレイトでの戦いを読み解く鍵になる。この部分を聖書、マタイによる福音書から引用してみよう。

 

あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。(マタイ 5:13)

 

あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。(マタイ 5:14)

 

また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。(マタイ 5:15)

 

そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。(マタイ 5:16)

 

   これが「地の塩、世の光」という話である。もう、お判りだろう。レジスタンスはまさしくこの塩に覆われた惑星で戦うのだ。なぜなら彼らは、まさしく共和国再建のそしてファースト・オーダー打倒のための「地の塩」だからなのだ。

    また、この教えは、同じくキリストに従う者が「世の光」であるとも説いている。だから地の塩は世の光でもあり、すなわち『最後のジェダイ』におけるレジスタンスそのものなのである。

    以前、こちらの記事(スター・ウォーズの謎解き~1~:『フォースの覚醒』新三部作はアーサー王物語だ!類似性から読み解くレイの正体 - StarWalker’s diary)にも書いた通りだが、レイの名前(Rey)はrayに通じて「光」を表す言葉である。また、ルークの名前(Luke)も「光るもの」「光」を意味するのだ。すなわち、ルークとレイはその名前の意味も同じで、まさに「世の光」なのだ。

 

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基地内に現れる十字架の意味

    初見では私も気がつかなかったのだが、惑星クレイトの基地内のシーンでは、明らかに十字架の形に輝く光が沢山出てくる

    これは実際には縦長のライトの左右に丸いスポットライトがついたものだと思うのだが、これが光を放っている形は、十字架にしか見えない。しかも、これは基地内の場面で常に登場しており、今見返すとなぜ初見で気が付かなかったのかというくらいだ。

    この一連の場面で、ルーク・スカイウォーカーイエス・キリストであり、レジスタンスはイエスに従った十二使徒なのだ。基地に現れたルーク・スカイウォーカーはこの中で一人、ファースト・オーダー相手に立ち向かっていくのである。

 そうみると、ファースト・オーダーの攻撃にさらされたルークが戦って、無償で生き残るという場面を基地内から驚いた様子で眺めるレジスタンスのメンバーは、キリストの奇跡を見る弟子たちの姿のようにも見える。

レジスタンスに残った生存者は何人?

    『最後のジェダイ』の最後に残ったレジスタンス。最後のシーンで両手で数えることができるくらいの人数まで減ってしまったレジスタンスの兵士達。では、実際にミレニアム・ファルコン号に残ったメンバーは何人なのか?

   レイ、レイア、フィン、ポー、ローズ、チューバッカ。ここまで主要キャラクターの6人。そして、レジスタンス司令部の士官では、今回出番が増えたキャリー・フィッシャーの娘のビリー・ラード演じるコニックス中尉、アマンダ・ローレンス演じるラーマ・ダシー中佐の2人、スキースピーダー中隊のパイロットの生存者では、アベドネド人のカイ・スレナリ、コヴァ・ネール、パミッチ・ネロ・グードの3名に、名称不明の男性兵士が1人(チェス台でコニックスと会話している男)の計4人。そして、C-3PО、R2D2、BB-8のドロイド3体。

 つまり、実は、ドロイドを除いてきっかり12人なのである!これはイエス・キリストの弟子と全く同じ数なのだ。(あくまでもドロイドは勘定に入らないっていうドロイドの扱いはどうなの?と思ってしまうけど笑・・彼らがいなかったら反乱軍もレジスタンスもとうの昔に壊滅してただろ!称えてやれよ!と思うのだが・・余談)

   ルークがジェダイ復活のために集めた12人はもういない。そのうち一人であるベン・ソロはルークを裏切りカイロ・レンとなってしまった。だが、そのかわりにレイを弟子として得たのだ。そして、そのレイを含むレジスタンスの十二使徒が、新たなる光であり希望なのである。

 

【2018/1/5 追記】

   記事投稿後、複数回鑑賞したところ、最後に残ったレジスタンスは12人以上いるだろうことがわかりました。

    最後にファルコン号に残ったメンバーがワンフレームに映りますがこれが全員で12人だと思ったのですが、その前後のシーンを見てもあれで全員ではなくどうやら私の記憶違いだったようです。

    今のところ前述した内容はそのままにして、この追記をしておりますが、詳細を再確認でき次第、再度記事を更新する予定でおります。

    記事投稿時は、きちんと確認できた内容で記事を書いているよう心掛けていましたが、大変失礼致しました。

 

ポーとボルドーの言う火花の意味

    こうしてみていくと、実はポー・ダメロンとボルドーが言っていた言葉も意味がより深い隠喩を含んでいたことに気がつく。

 

俺たちは火花だ。ファースト・オーダーを燃やす炎に火をつけるための。

私たちは火花なのです。共和国再建のための炎に火をつけるための。 

 

    鍵は再び聖書である。今度はマルコによる福音書9章48節、49節をみて見る。ここも「地の塩、世の光」についての福音を記述したものだ。

 

地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。(マルコ 9:48)

人はすべて火で塩づけられねばならない。(マルコ 9:49)

 

   火で塩づけるという部分はクリスチャンの方でも解釈が難しい箇所かと思うが、塩と同じように火で焼くことは清めであり、塩と火は同じ意味と考えていいだろう。

    すなわち、ポーやボルドーが言っている火、火花はまさしくこのようにレジスタンスが共和国再建のために生き延びなければならない人々であることの新約聖書的な隠喩であり、彼らが「地の塩、世の光」であることを言っていることと同じことを指す言葉なのである。

ローズが言葉とルークの目的

    ローズがフィンに語る言葉も、このようにみていくと聖書の教えに他ならないことに気がつく。ローズはこう言った「敵を憎むのではなく、愛する者を救う、それが勝利への道」と。これも聖書の教えにある「汝の敵を愛せよ」という言葉に他ならない。

    そして、帰還したジェダイであるルークはまさしくこれをしたのである。

    ルークは、レイアに「彼と対決するために来た」と告げ、もうカイロ・レンを「救うことはできない」と言う。しかし、その一方で「息子は闇に落ちてしまった」というレイアに対し「完全にではない」とも言う。

    すなわち、ルークはカイロ・レンにまだ救済できる希望を捨ててはいない。だが、これはルークの手によってはなし得ることが出来ないということだ。そして、それが可能なのは、レイなのではないか?

 ルークは『ジェダイの帰還』で父を救うことに成功した。しかし、息子が暗黒面に落ちた父を救済した旧三部作とは異なり、父ハン・ソロは息子ベン・ソロを助けることができなかった。そして、父を救済できたルークも、今回は自分の甥を救済できなかった。新三部作において救済の手を差し伸べられるのは、もはや家族ではないのではないだろうか? 

    だから、ルークはカイロ・レンを倒すことはしなかった。その代わりに、壊滅寸前まで追い詰められたレジスタンス、彼の母親でレジスタンス再建の母となるべきであるレイア、そしてカイロ・レンを救済できる希望を持った新しいジェダイ、救世主たるレイを生き残こらせるため、カイロ・レンとファースト・オーダーの前に立ったのである。

   ルークは、すなわちカイロ・レンという敵、しかし一方で自分の甥でもある愛する者であるベン・ソロに対して「敵を憎むのでなく、愛する者を救う」ことを示したのである。   

   レイが語るルークの死には目的のあるものだった、という意味はまさしくこの世の光を絶やさないという目的を果たした、という意味なのだ。

 

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救世主としてのレイ

    惑星クレイトの戦いで、辛うじて生き残ったレジスタンスのメンバーは、基地内を奥へと進んむ。クリスタル・フォクスの導きに従い奥へといくと出口を見つける。しかし、落盤による石崩れで出口が塞がっていた。

    同時に、ミレニアム・ファルコン号にのり、出口の反対側に着いたレイ。石崩れで塞がっている出口の石をフォースで浮かせて出口を開け、レジスタンスを救出する。

    このレイの姿は、まさしくレジスタンスの救世主に相応しい。レイが現れたことによって、もはやルークは最後のジェダイではなく、レイは新たなるジェダイであり銀河の救世主なのである。 

    実は、旧三部作から新三部作にいたる流れは、聖書に描かれたユダヤの民の歴史と非常に類似している。バビロン帝国によるパレスチナの侵略によるエルサレムの滅亡、バビロン捕囚から始まり、ユダヤ人の帰還、神殿再建、再度の征服と神殿の荒廃と破壊、キリストの出現。

 そしてキリストが十字架にかかってから、再臨までの歴史も、同様だ。すなわち、ローマ帝国によるエルサレムの滅亡から始まり、聖書では、いずれユダヤ人の帰還、神殿の再建、神殿の破壊という歴史が繰り返し、イエス・キリストが再臨することが預言されているからだ。そして、実世界史では、今のところ預言通りに、ユダヤ人の帰還が成されて、イスラエルという国が建国されたのはご存知の通りである。

 「スター・ウォーズ」で描かれる銀河の歴史もこれに似ている。シス、帝国、ファースト・オーダーと形を変えて存在してきた暗黒面の力との闘いを描く物語だが、銀河帝国の勃興により、かつてのジェダイは滅亡してしまった(『ファントム・メナス』から『シスの復讐』まで)。しかし、ルーク・スカイウォーカーが登場し、ダース・ヴェイダーが転向してジェダイが帰還する(『ジェダイの帰還』)。ルークはジェダイ寺院を再建するのだが、裏切りにあい、寺院は破壊されてしまった(『ジェダイの帰還』から『フォースの覚醒』の間)。

 ここまでは、見事に旧約聖書で描かれていた物語と一緒なのである。そしてイエス・キリストの初臨の先に預言されている歴史とも同じである。

 では、次に起こることは何か?

 それは、すなわち、救世主の出現であり、イエス・キリストの再臨だ。だからアナキン・スカイウォーカーイエス・キリストの物語であったとするならば、新三部作における救世主であるレイは、キリストの再臨なのである。 

獣と呼ばれるファースト・オーダーの意味

    そして、レイがキリストの再臨であることのヒントはすでに新三部作の中で描かれている。以前の記事でも書いたが、新三部作が描くファースト・オーダーの支配は、聖書にある大艱難時代である。それを示すように、『フォースの覚醒』の中でマズ・カナタはファースト・オーダーの軍勢を指して「獣がやってきた!」と言うのである。 

   これは何を意味するのだろうか?実は、まさしく聖書の中で、大艱難時代そして終末の時代に現れる世界的独裁者による反キリストの軍隊は、獣の呼ばれている。ヨハネの黙示録からその一部を例に挙げる。

 

この獣には、また、大言を吐き汚しごとを語る口が与えられ、四十二か月のあいだ活動する権威が与えられた。(ヨハネ黙示録 13:5)

そこで、彼は口を開いて神を汚し、神の御名と、その幕屋、すなわち、天に住む者たちとを汚した。(ヨハネ黙示録 13:6)

  

    その意味で、レイはまさしくファースト・オーダーに対する唯一の希望、反キリストに対する再臨するキリストそのものの象徴であり、救世主たる新たなるジェダイなのである。

    映画の最後には、ファジアーの世話をする少年が登場する。彼はルーク・スカイウォーカーの伝説と宇宙に思いを馳せるフォースの使い手として登場するが、この少年は、まさしく馬小屋で生まれたとされるイエス・キリストに重なる。

    このように救世主の出現というモチーフは、『最後のジェダイ』の中の至るところに表れているのだ。

まとめ

  以上、『最後のジェダイ』散りばめられた新約聖書的要素を取り上げてみました。前回の記事では、『最後のジェダイ』の前半、レイとカイロ・レンの結びつきに至る物語は、ゴシック・ロマンスであることを書きました。

 しかし、物語の後半、レイとカイロが別れて以降、ファースト・オーダーからの追撃を逃れ、惑星クレイトの戦いを迎え、ルークが現れ、レイがレジスタンスを助ける下りは、まるで迫害され世界の隅に追いやられるユダヤの民や、大艱難時代に迫害されるキリスト教徒と救世主の出現を描いている聖書の物語そのものなのです。

 今回の映画は、なんとも露骨にゴシック・ロマンスの世界と、聖書的世界を一緒にしているので、このあたりがこれまでの「スター・ウォーズ」の世界観と若干違うな、という印象を持つ理由かもしれません。

 さて、今回の投稿は今年2017年最後の記事となりそうです。『最後のジェダイ』は公開され、引き続きしばらくは関連の話題で考察記事を投稿していこうと思っています。ということで、皆様来年もよろしくお願いいたします。