StarWalker’s diary

映画スター・ウォーズに関する独自の考察、謎解き、分析、最新作のストーリー予想、最新情報を発信するブログ

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の謎解き 〜なぜスノークは左目を見せて死んでいくのか?〜【ネタバレ・考察】

  スター・ウォーズ映画最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が遂に12/15に公開されました。これまでも『フォースの覚醒』にもとづいて色々な考察をしてきましたが、これからは『最後のジェダイ』で語られた内容も含めて、引き続き同じように考察をしていきたいと思います。

 今回は、映画『最後のジェダイ』に登場した色々なキャラクターの最期について、あるはっきりとした特徴があるのですが、それについて考えてみました。

《!以後、『最後のジェダイ』のネタバレ含む。未鑑賞の方は読まないでくださいね》

 

f:id:StarWalker:20171011185555p:plain

 

 

キャラクターの最期に関するある共通点

    この映画の冒頭、レジスタンスは惑星ディカーから撤退を開始する。そして、ポー率いる爆撃部隊は敵ドレッドノートの爆撃作戦を展開する。

 この爆撃機の砲手で、ローズの姉、ペイジは残り一機になった爆撃機から爆弾を投下することに間一髪で成功し、レジスタンスは脱出に成功する。だが、ペイジは爆弾投下後の、爆撃機の爆発に飲み込まれ爆撃機ともども犠牲になる。

    この中で、砲手のペイジは、爆撃手が死亡したため、代わりに爆弾を投下しようとする。しかし、投下しようとしたタイミングで機が被弾し、爆弾倉の中に振り落とされるペイジ。床にぶつかった衝撃で一瞬の間、気を失う。

    この時、一時的に意識を失ったペイジが起きるシーンが印象的だ。

 ここで、画面の左半分にペイジは顔の左半分だけをアップに映して左目だけを見せ、その左目がぱっと見開く。そして、爆弾投下に成功し、爆撃機がいよいよ爆発炎上してペイジが死んでいくシーンでは、画面左寄りにペイジの顔全体が映り、両目を静かに閉じて死んでいくのである。

 これと対照的なのが、ファースト・オーダー側のキャラクターの死の描き方だ。

 『最後のジェダイ』では、3人の主要なファースト・オーダー側のキャラクターの死が描かれるのだが、これらの3人にはある特徴がある。その3人とは、エリート・プレトリアン・ガード、キャプテン・ファズマ、そしてスノーク最高指導者である。

  映画中盤、スノークを倒したレイとカイロ。二人に対して襲い掛かってくる、スノークの護衛、赤甲冑の近衛兵(エリート・プレトリアン・ガード)と戦う。二人を囲むエリート・プレトリアン・ガードとのアクションは、非常に映像的にも美しく『最後のジェダイ』の見せ場の一つだが、この戦いの最後の場面、カイロ・レンは最後の敵に後ろから羽交い絞めにされる。

 そして、絶体絶命のところを、レイが投げたライトセーバーを左手で受け取り、そのままライトセーバーを起動して、敵の左目を突いて倒すのだ。右目は仮面の下に塞がれたまま、左目部分だけが開いたまま後ろに倒れていく

    続いて、キャプテン・ファズマと戦うフィン。フィンは、ファズマの頭を強打してファズマを倒すが、この時、ファズマのヘルメットの左側、左目の周りが破壊されて、右目は仮面の下に塞がれたまま、ファズマの左目だけが見開く。この時も、エリート・プレトリアン・ガードと同じ様にクローズアップされるのは、ファズマの左目であり、右目は影になっているのだ。

   最期に、カイロ・レンによって不意をつかれて倒されたスノーク最高指導者。

 レイがその場を去ったあと、倒されたスノークの顔が、わざわざアップになるのだが、この時、スノークは右目は完全に潰れていて、左目を開けて倒れているスノークは、直前まで普通に右目も左目も開いていて隻眼の設定ではないのに、倒れた後は、なぜか右目を失った隻眼になっているのだ。

  左目を突かれて倒される近衛兵、左目を残して死んだファズマ、そしてスノークというように、キャラクターの死において、必ず右目が陰になり、左目が見開いくという描き方は、これまでの「スター・ウォーズ」にはなかった『最後のジェダイ』のみに共通した特徴である。  

神話、聖書にみる右目、左目が表すもの

 目というものは、昔から神話性や宗教的シンボルとしての意味を持っていた。

 目が持つ見るという機能は、神が世を見通す、光の外界との出入り口であり、ということに通じる。そのため、例えば、エジプト神話では、もっとも偉大とされる「太陽神ホルスの目」というシンボルがあり、古代エジプトの象徴とされる。

 エジプト神話では、右目は太陽神ラーの目で太陽の象徴であり、左目はウジャトの目であり月の象徴とされる。太陽は能動的、未来を見る目であり、月は受動性、過去を見る目であり、また同時に月の満ち欠けの周期性と紐づけられて、修復、再生のシンボルとされる。

    この太陽神、月神の関係は、不思議なことに古代エジプトと日本では逆になっている。日本神話『古事記』においては、伊邪那岐命イザナギ)が黄泉の穢れを払うため左目を洗ったときに化生したのが天照大神アマテラスオオミカミ)で、このとき右目から生まれたのが月読命ツクヨミだからだ。 

 余談だが、もしかしたら、日本では基本的に左上位なのだが、海外西洋では右上位というのもこのあたりの神話や後述するキリスト教的な理由があるのだろう。

 また、この左目、ウジャトの目はホルス神が父オシリス神の仇であるセト神を討つ時に失われた際に、エジプト全土を旅して戻ったことから、「全てを見通す知恵」のシンボルとされる。

 これは、そのままユダヤキリスト教文化圏にも影響を与えたとされ、左目は「神の全能の目」であり、プロビデンスの目と言われる。 特にフリーメイソンが使うシンボルとして有名なので、ご存知の方も多いだろうと思う。

 さらに、ユダヤキリスト教文化圏では、目はより明確なかつより深い意味を持つ。例えば、旧約聖書の最初にある創世記にあるが、アダムとイブは、知恵の実を食べてしまい善悪を知る、すなわち知恵を得たことを「目が開けた」と表現している。

それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです。(創世記 3:5)

  つまり、目が見えることとは、善悪を知るということであり、知恵を持つことを意味するのだ。そして、潰された右目と左目の隻眼というのは、反キリストの象徴になる。

 これは、旧約聖書にあるゼカリヤ書に以下のようにあるからだ。

その羊の群れを捨てる愚かな牧者はわざわいだ。どうか、つるぎがその腕を撃ち、その右の目を撃つように。その腕は全く衰え、その右の目は全く見えなくなるように。(ゼカリヤ書 11:17)

 ここにおける愚かな牧者というのは、悪へと導く反キリストの者のことを指す。右目は知恵を表し、すなわち愚かな牧者の右目というのは、神への背信、偽りへと導く悪魔の目となるが、これをつるぎが撃ち潰すように、と言っているわけだ。

 世の中によくみられるような悪魔崇拝のシンボルが、左片目であることはこれに由来するのだ。つまり右目が潰された愚かなる牧者ということである。

 このように、キリスト教文化圏の西洋では、右は英語で right というように神、正しさ、善を表すのに対して、左は悪魔、偽り、悪という意味を持つ。

 また右手、右目に関する説話は、有名な山上の垂訓の中にもある。

もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたにとって益である。(マタイ 5:29)

もしあなたの右の手が罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に落ち込まない方が、あなたにとって益である。(マタイ 5:30)

  基本的に聖書に出てくる言葉は、他の言葉と同様に比喩であって、こういう時は、大抵の場合、直接右手や右目を必ずしも表すものではなく、この場合は、一般的には右目が知恵であり、右の手は力を意味するとされるらしいが、本来は正しい知恵に従い、正しい行いをするべき右目、右手が罪を犯す、すなわち神を裏切るならば、という意味だ。   

 

スポンサーリンク

 

 

敵の左目は悪魔の目か?

 左目を開いて覚醒するペイジ。このシーンで描かれる閉じていたペイジの左目が再び見開くのは、彼女の再生を表すとともに、映画の最後で描かれる「レジスタンスそして反乱軍の再生」のメタファーだ。左目は、まさしく修復、再生を意味するからだ。

 この映画が描くものは、ルーク・スカイウォーカーの「レジスタンスは今日生まれ変わるのだ」という最後の言葉にもあるように、レジスタンスの再生だ。

 映画冒頭で描かれたペイジの左目は、それを象徴している。

    だが、ペイジが爆撃機の爆発にのまれて静かに亡くなるシーンでは、両目を静かに瞑って死んでいく。

 ペイジ、ルーク、あと死亡してはいないが、最期の戦いで昏睡してしまうローズなどのレジスタンス側のキャラクターは、普通に両目を閉じるのに対して、ファースト・オーダー側は、その最期で、右目が陰となり、左目が露出されているのがわかる。

 先日、こちらの記事(『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』・名作映画へのオマージュの数々まとめ(含ネタバレ) - StarWalker’s diary)にも書いたが、劇中で描かれるエリート・プレトリアン・ガードがライトセーバーで左目を突きさされて倒されるシーンは、1979年のドン・コスカレリ監督のホラー映画『ファンタズム』のオマージュになっている。

    この『ファンタズマ』にはアンガス・スクリムが演じる謎の背の高い謎の男が登場するが、この男は左眉を釣り上げて、左目を見開いた顔が特徴になっているのだが、右目を瞑り、左目を見開いていることは何を意味するかといえば、まぎれもなく前述したユダヤキリスト教文化圏における悪魔の目=左目に由来するのだ。

 

   

 キャプテン・ファズマの名前の由来も、同映画のタイトルからきていることを同作のファンで『フォースの覚醒』の監督であるJ.J.エイブラムス監督が明かしている。

    右目が塞がれたまま、左目=悪魔の目見開いたまま炎の中へと落ちていったファズマは、地獄の業火の中へと落ちていくがことく、崩れ落ちる床とともにその身の最期を迎えるのである。 

    そして、スノーク最高指導者も同様に、右目を瞑り、反キリストの象徴である左目を開き倒れていたのだ。これもすなわち、劇中におけるスノークが、光に対する闇であり、まぎれもなく反キリストの象徴としての描かれているからに他ならない。

カイロ・レンの右目の傷の意味とは? 

 また、スノークやファズマだけでなく、実はカイロ・レンも例外ではない。映画を通して見ると、冒頭に示した予告編時の画のようにカイロ・レンに関しても、その右目を陰として、その左目を強調させる描き方がされているように見える。

 また、ご存知の通り、『最後のジェダイ』でカイロ・レンは右目の上からライトセーバーによる傷を負っている

    実は、前作『フォースの覚醒』で、カイロ・レンが受けた傷は、額から眉間の中央を通って右の頬に向かっていて、右目の上から下へ貫いた形では決してなかったのだが、ライアン・ジョンソン監督は、『最後のジェダイ』を製作するにあたって、わざわざカイロ・レンの額の傷を目の上に直しているのだ。

 

f:id:StarWalker:20171010123455p:plain

カイロ・レンの右目の傷は何を示すのか?

 

 これは、聖書的な意味を考えると意味が明白になる。

 先に引用した旧約聖書のゼカリヤ書にあるように、右目に傷を負うということは、すなわち、彼が反キリスト的存在であることを示すことになるからである。 

 また、ヨハネの黙示録を見てみると、その意味はよりはっきりしてくる。ヨハネの黙示録の13章には、最終戦争に至るまでに世界に現れるとされる反キリストの象徴である獣についても記述があるが、この海から現れる一匹の獣は、つるぎの傷を受けることが書かれている。

 右目に受けたライトセーバーの傷の象徴するものは、新三部作の中で、カイロ・レンが光(ray:レイ)に対する闇、キリストに対する反キリスト的な存在として描かれていることを示すものだ。

その頭の一つが、死ぬほどの傷を受けたが、その致命的な傷もなおってしまった。そこで、全地の人々は驚きおそれて、その獣に従い、(ヨハネの黙示録 13:3)

さらに、先の獣の前で行うのを許されたしるしで、地に住む人々を惑わし、かつ、つるぎの傷を受けてもなお生きている先の獣の像を造ることを、地に住む人々に命じた。(ヨハネの黙示録 13:14)

  ライアン・ジョンソン監督は、カイロ・レンの傷の場所を変えたことに対して、はっきりとした理由は述べておらずツイッターの中で「(元の位置では)間抜けに見えたので少し変えた」とだけ回答している('Last Jedi' director moves scar on Kylo Ren's face, chaos ensues)のみだ。

    これが彼の本音かはわからないが、私は監督は右目左目の描き方には、間違いなく何かしら理由とこだわりがあったものと思えるのだ。

 また、この右目の傷に関しては先例がある。前日譚三部作におけるアナキン・スカイウォーカーがそうだった。説明が冗長になるため省略するが、これもまた、同様に暗黒面へ落ちたアナキン・スカイウォーカーを反キリストとして描写することで示しているのだ。そして、カイロ・レンは、その意味で祖父であるダース・ヴェイダーの亡き影を背負ってしまっている。

 そして、実は主人公であるレイの描き方にも一つ特徴がある。

 

スポンサーリンク

 

 

レイの涙とカイロの傷

    レイはルークにフォースが何かについて学ぶ。だが、彼女の闇を見たルークは、恐れてしまい、二人の間はスムーズには展開しない。

    この後、レイはファルコン号で一人、カイロ・レンとニ度目の接触をもつ。

 注目すべきはそのあと。レイは一人でライトセーバーの稽古をするのだが、このカットバックでレイの表情がアップになる時に、彼女の左目が強調されるのだ。右目はほとんど影になっている。

 

f:id:StarWalker:20171205020838p:plain

レイの強調された右目の影と左目が意味するものは?

 

 注目すべきは、このシーンは、レイが徐々にルークを離れてカイロに接近する一番最初の段階にいることである。

    そして、その後、カイロ・レンと3回目の接触をもつレイだが、この時レイはカイロ・レンの前で初めて涙を流す。ここで、レイは右目から涙を溢れさせるが、この右目から流れる涙は、まるでカイロ・レンの右目右頰にある傷に似た形をみせる。劇中、レイは決して左目、左頬には涙の流れる跡は見せないのである。

    レイは、自分の両親への疑問を確かめるべく、島の地下洞窟に行く。その結果、惑星オクトーで強い孤独を感じたレイは、カイロ・レンに惹かれる。石小屋でまたカイロ・レンと接触するレイ。

 このシーンで、レイの流す涙はまたも右目から頬をつたって流れて、これがちょうどカイロ・レンの右目の傷の位置と同じ様子となっていく。そして、レイの右目の涙とその痕がはっきりと写り、まるでカイロ・レンの傷が複写されたようにも見えるのだ。

 レイがカイロ・レンに惹かれていく様子は、レイの暗黒面への接近である。これは、左目の強調描写から始まり、右目に涙を浮かべ、最後には右目に流れる涙の軌跡がはっきり浮かびあがる変化が象徴するように、レイの右目に流れる涙は、カイロ・レンの右目のつるぎの傷を模していくのである。

    これは、カイロ・レンに惹かれるレイが、カイロ・レンと同じ轍を踏みつつあることの暗示のようである。

右腕と右目が負う傷に共通すること

 実は、このような描写は、何も新三部作で新しく始まったことではない。

 思い出してほしいのは『帝国の逆襲』におけるダース・ヴェイダーとルークのあの有名なワンシーンだ。ルークはダース・ヴェイダーに右腕を切断され、絶体絶命の瀬戸際に追い詰められる。

 そしてヴェイダーはルークを暗黒面に誘う。

 アナキン・スカイウォーカーは、『クローンの攻撃』の中で、デューク伯爵とのライトセーバー戦いで右腕を失っている。このクラウド・シティでの戦いにおいて、ルークは、父アナキン・スカイウォーカーの同じ轍を踏む一歩手前まで追い詰められた。ルークが右腕を切断されて背負ったものは、そのまま父アナキンが負った傷と同じだ。

 『ジェダイの帰還』で、ルークがまさしく父と同じ轍を踏んでいることに気が付くのは、切り落としたヴェイダーの右腕が義手であることを見たときだった。

 

f:id:StarWalker:20180109195636p:plain

『帝国の逆襲』でルークは右手を切断され、『ジェダイの帰還』で父アナキン・スカイウォーカーと同じ轍を踏みつつあることを悟ったルークは暗黒面への転向を拒む

 

 さて、この右腕の描写を思い出して、先に引用したゼカリヤ書の11章17節をもう一度読んで頂ければ、言わんとしようとすることはもう明らかだろう。

 旧三部作で右腕を切断されるということと同じ意味を、新三部作では右目に傷を負わせることで与えているのだ。 

まとめ

  以上、この『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』におけるキャラクターの最後の描き方に共通する特徴をまとめました。この左目を強調する演出は、映画の中で何度も繰り返されて描かれていて、これまでの「スター・ウォーズ」における右腕切りと同じように意図的にやっているのがわかります。

 逆に、新三部作においては、これまでのような右腕切断という描写は今のところなく、その代わりに右目に対する傷というものが、代替的な描写として使われているように思います。

 実は、勘のいい人は気が付いたかもしれませんが、スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の時も公開されたポスターも、みなそれぞれライトセーバーやブラスターで右目を隠して左目を出すというデザインでした。

 似たような映画ポスターは沢山ありますが、こうして『最後のジェダイ』を見ても、新三部作では、これまで以上にこの目の描き方については意図的な隠喩を持たせているように思えます。  

 

《関連記事》『最後のジェダイ』に関するキリスト教的隠喩についての考察は他にも。

 

レジスタンスが惑星クレイトという「塩」の惑星で戦う意味について。

www.lakestarwalker.com