スター・ウォーズ映画最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』はもうそろそろ劇場公開も終わりに近く、『ハン・ソロ』の話題に混じってちらほらとエピソード9の製作側からの話が出回ってきました。前回から引き続き、新三部作の完結編となるエピソード9の物語のあらすじを考えてみます。
今回は、スカイウォーカーの物語の最終章としてのエピソード9というものに注目して、スカイウォーカー、カイロ・レン、そしてレイの誕生の目的について考えます。
《!以後、『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』のネタバレを含みます》
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はじめに
本記事は、『スター・ウォーズ新三部作の謎解き~1~:なぜ新三部作は「光と闇」の話に生まれ変わったのか?』から続くシリーズ記事になります。直接この記事にやってきた方は、こちらの記事をお読み頂いてから読み進めていただくのが良いです。
《新三部作の謎解き~1~を未読の方はこちらから》
スカイウォーカー物語としての新三部作
スカイウォーカー物語の完結編
新三部作はエピソード1から8をすべて結び付ける完結編になると言われている。
そして、これらの3つの三部作はすべて「スカイウォーカー家の物語」なのだ。すなわち、エピソード9では、このスカイウォーカー家という血統がなぜ生まれ、その目的が終に明かされるのではないか?
以前の記事で述べたように、『スター・ウォーズ』における登場するシスとジェダイの対極の立場、概念というものはヒンドゥー教などの影響を受けている。これは、そもそもプロデューサーであったゲイリー・カーツが、もともと比較宗教学を学んでおり、東欧思想に精通していたからであり、今の『スター・ウォーズ』におけるフォースの宗教的な概念というものは、ジョージ・ルーカスが考えたフォースの概念にカーツがさらに深みを与えて完成したものである。
そして、少なくとも『スター・ウォーズ』のエピソード1から6までにおいては、このシスとジェダイの対立は、そのままシス(もっと言えば、1から6ではダース・シディアスそのものを指していると同義だ)とスカイウォーカー親子の対立として描かれている。
したがって、私はエピソード7から9も、表面上はこれまでとの連続性がないように見えても、やはりシスとスカイウォーカーの対立の物語を継続しているのではないかと思うのだ。
だから、スノークというキャラクターに関しても、ダース・プレイガスの復活体という可能性があり得ると思っているし、そうなると、新三部作もシスとスカイウォーカーの対立という話は、スノーク対カイロ・レンという話の中で継続していることになる。
こう見ていくと、つまるところエピソード1からエピソード9は、ダース・プレイガス、ダース・シディアス、そしてダース・ベイダーという3代のシス卿の台頭の物語と、アナキン・スカイウォーカー、ルーク・スカイウォーカー、そしてベン・ソロというスカイウォーカー家3代にまたがる物語となるのだ。
したがって、その完結編においては、なぜスカイウォーカー家は何故存在したのか?という問いへの答えが明かされることは十分可能性が高いエンディングではないだろうか?と思う。
そして、それこそが、エピソード9が「これまでの三部作を一つに結び付ける物語」となる所以なのではないだろうか。
スカイウォーカー家の存在の目的とは?
スカイウォーカー家とは奇妙な血統である。
強力なジェダイを生んだ血統でありながら、またフォースの暗黒面の強力な使い手として、銀河に闇の時代をもたらした張本人を生んだ血統でもある。
『スター・ウォーズ』新三部作は光と闇の物語だ。前回の記事(スター・ウォーズ新三部作の謎解き~3~:エピソード9で描かれるのか?スノークの正体とその死の謎 - StarWalker’s diary)で、スノークがダース・プレイガスであり、暗黒面のフォースが肉体として具現化した存在なのではという仮説を書いた。
スノークは、自分自身をカイロ・レンに殺させたことで、より強大な存在になろうとし、それは成就したと考えたとしたら、一つ解かなければならない問題が残る。
それは、スノークことダース・プレイガスがフォースによる肉体化という奥義を会得した存在だとしたら、ジェダイがこれまでのシスを倒すように、彼の肉体を物理的に倒す、消滅させるということはもはや無意味になってしまう。
では、どうするべきだろうか?
それこそが、まさしく「光と闇」の再合致によるものなのではないだろうか?すなわち暗黒面のフォースそのものを、光明面のフォースによって中和することで、その存在を無きものするということだ。
そして、それほどの強い光明面のフォースを持つ存在とは何だろう?
それこそ、スカイウォーカー家が生まれてきた目的ではないのだろうか?つまり、スカイウォーカー家は、つまるところどの時代にあってもフォースにバランスをもたらすためにフォースがこの世に生み出した存在したと考えられる。
「名も無き人たち」だったスカイウォーカー家
スカイウォーカー家は、アナキン・スカイウォーカーから始まった血統である・・・というのは間違いだ。スカイウォーカーという姓を名乗る血は存在していた。もちろん、アナキンには母親、シミ・スカイウォーカーがいるからだ。
『最後のジェダイ』でレイの両親に関して非常に話題になったが、そもそもな話、エピソード1を見ればわかるとおり、スカイウォーカーという一族は最初から高貴なジェダイの家系だったわけではない。
どうしても時系列的に、新三部作はオリジナル三部作の続編であるので、比較的忘れられがちな事実であるのだが、思い出してほしいのは、シミの代までのスカイウォーカー家は特別な家系ではなく、シミとアナキンは、奴隷だったのだ。だから、スカイウォーカー家もアナキンが生まれるまでは「名も無き人々」の家柄なのである。
もし、クワイガンとオビワンがタトゥイーンに立ち寄らなかったら、アナキンはアナキンで奴隷としての一生を過ごし死んでいたはずであり、スカイウォーカー家も特別な家系にはならずに、銀河の端に存在した「名も無き多数の人々」の親子で終わっていたはずなのだ。
アナキンは、たまたまそのスカイウォーカー家の女性であったシミの子供、強いフォースを持った子供として生まれてきただけである。
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カイロ・レンとレイの謎
レイの誕生はフォースの意思か?
だから、アナキン・スカイウォーカーとレイは同じ境遇にいる二人である。
エピソード9ではスカイウォーカー家が生まれてきた目的が明かされるのではないか?と私は書いたが、これは同時に、レイが生まれてきた目的も明かされることに繋がると考えている。
アナキン・スカイウォーカーは「選ばれし者」だった。そして、レイもまた「選ばれし者」である。
スカイウォーカー家は、エピソード1からエピソード6までの時代にあってフォースにバランスをもたらすために、フォースがこの世に生み出した存在したと考えられるだろう。新時代において、その役割はアナキン・スカイウォーカーとルークではなく、レイに与えられたのではないだろうか。
二人とも両親は「名も無き人たち」であるが、強いフォースの持ち主として生まれてきた。だから、フォースの意思そのものが生み出した存在といえる。
つまり、いつの時代もフォースの意思は自らそのバランスを保つために一人の「選ばれし者」を生み出してきたのではないだろうか?だから、スカイウォーカー家の存在も、レイの存在も、その目的と理由は同じなのではないか?
だから、レイはスカイウォーカーでもなくシスでもない。
もはや、スカイウォーカー家はその存在目的を果たし、「フォースの調和者」としての役割はレイに引き継がれ、レイがスカイウォーカーに代わったのだ。
これはフォースの意思が、かつてアナキン・スカイウォーカーを生んだことと同じだ。そして、アナキンの誕生から60年近く後になり、フォースは再び選ばれし者を産み落としたのだ。
『最後のジェダイ』で最後にファジアーを世話していた少年が登場していた。彼の正体や過去は不明ながら、フォースを扱える存在であり、イエス・キリストの誕生を連想させる馬小屋で暮らしている彼もまた、この先の時代における「選ばれし者」かもしれない。
フォースにバランスをもたらすものは、フォースの意思によって、いつの時代でも生まれ変わってこの世に生を受けるものなのではないか?
カイロ・レンの偉業
では、スカイウォーカー家の物語はどう終わるのだろうか?物語上、スカイウォーカーの血を継ぐものはベン・ソロことカイロ・レンしかいない。
シス対ジェダイという構図において、カイロ・レンそしてレイは、実は互いにどちらにも属さない特別な関係にいる。これは、前の記事(スター・ウォーズ新三部作の謎解き~2~:エピソード9のワーキングタイトルが意味する「光と闇」の物語の結末とは? - StarWalker’s diary)でも書いた通り『ダーククリスタル』におけるゲルフリン族のジェンとキーラのようである。
カイロ・レンは、スカイウォーカーの者というより、あくまでソロの息子であって、スカイウォーカーの姓を名乗っていない。
しかし、その一方で、カイロ・レンという名前には、彼がまぎれもなくスカイウォーカーの血統であることを示すヒントが隠れている。これは、こちらの記事(スター・ウォーズの謎解き~3~:ヒンドゥー教の三神一体とアーサー王物語から読み解くカイロ・レンの正体 - StarWalker’s diary)で書いたので重複するから詳細は割愛するが、カイロ(Kylo)とはまぎれもなく、スカイウォーカーの子孫(Sons of Skywalker)の意味だ。
だから、彼はシス対スカイウォーカーという軸で考えると、シスではなくスカイウォーカー側の人間である。
そして、カイロ・レンがスカイウォーカー家の人間として考えると、実はこれまでのスカイウォーカーの者が成し遂げられなかったある一つの偉業を既に成し遂げているのである。
よく考えてみればわかるのだが、意外なことに、シス対スカイウォーカーの宿命の対決において、スカイウォーカーの者は常にシス側につけば、その下のナンバーツーでしかない存在であり、逆にシスと争えば、相手に完全勝利したことはないのだ。
アナキン・スカイウォーカーは、ダース・シディアスの誘惑に負け、転じてダース・ヴェイダーとなった。しかし彼は、皇帝ダース・シディアスの手先でしかなく、その弟子であり、ナンバーツーでしかなかった。もちろん、その最期において皇帝を倒す。だがそれは自分自身を犠牲にした勝利であって、これは相打ちだ。
じゃあ、ルークは?となると、実はルーク自身はダース・シディアスに勝利をしていない。彼はあくまでもダース・ヴェイダーをアナキン・スカイウォーカーに転向したに過ぎない。
つまり、フォースの支配者頂上決戦(?)において、シスvsスカイウォーカーの対戦成績は、エピソード8直前までに、2勝1分でシス側が勝ち越している。そして、カイロ・レンもまたスノークの僕であり、ファースト・オーダーにおいては、シスの下でありナンバーツーに過ぎなかった。
だが、そのカイロ・レンは『最後のジェダイ』でスノークを倒しているのだ。(※スノークの死については、スノークが復活する可能性を以前の記事<スター・ウォーズ新三部作の謎解き~3~:エピソード9で描かれるのか?スノークの正体とその死の謎 - StarWalker’s diary>に書いた通りであるが、ここについては別途まとめるとしてここでは再度触れない。)
カイロ・レンは、これまでのスカイウォーカーが成し遂げていない偉業を達成している。スノークを倒したカイロ・レン。
これはスカイウォーカー家とシスの対立において、祖父アナキンもその息子ルークも成し遂げていない、スカイウォーカーがシスに対して初めて完全勝利した瞬間といえるのである。しかも、これはレイの力を借りておらず、カイロ・レン一人で成し遂げたことなのである。
そう考えると、スカイウォーカー家の物語は、シス対スカイウォーカーという対立の物語としては、表面的にみると一旦終わっていることになる。
だが、それでは、レイが「選ばれし者」として生まれてきた目的が果たされていない。また、カイロ・レンが生まれてきた目的もこれですべてだったのかという疑問がまだ残っている。
レイが新時代における「選ばれし者」であるのであれば、彼女はフォースにバランスをもたらす役割を背負っている。一方、エピソード9では、ルークはすでに亡くなっており、レイアもキャリー・フィッシャーが他界しており、エピソード9では戻ってこないと言われている以上、カイロ・レンは、銀河に残ったスカイウォーカー家の最後の一人なのだ。
確かに、カイロ・レンは、最後のスカイウォーカーとして「選ばれし者」ダース・ヴェイダーの血を受け継いでいる。しかし、親が名も無き者であるというその出自については、レイが「選ばれし者」アナキン・スカイウォーカーの役割を受け継いでいるのだ。
ダース・ヴェイダーとアナキン・スカイウォーカーは、一つの人物の表と裏であり、光と影である。つまり、彼の人格は、新三部作においてカイロ・レンとレイに分かれて別個に存在していると言えるのである。
すなわち、破壊者としてのカイロ・レンと創造者としてのレイである。
まとめ
新三部作で注目すべきベン・ソロことカイロ・レンとレイの存在。銀河に残された唯一のフォースの使い手、カイロ・レンとレイ。エピソード9はカイロ・レンとレイが完結させるシスとスカイウォーカーの物語の最終章になるはずだ。
最後のスカイウォーカーとしてカイロ・レンは残った。ファースト・オーダーもまた残った。エピソード9では、「選ばれし者」である創造者のレイこそが新秩序を銀河にもたらすはずだ。そして、旧「選ばれし者」から続いたスカイウォーカー王朝はその役割を終えるに違いない。
つまり、エピソード9で描かれるのは、スカイウォーカー家の物語の終焉、そして、新しくレイがもたらす新秩序の誕生を描くスカイウォーカー王朝からレイ王朝への「選ばれし者」の役割の継承ではないだろうか?
このブログでも何度も取り上げているが、レイ(Rey)の名前は「光」を意味する。だが、スペイン語においては、これに加えて「王」の意味になるのだ。
偶然か必然か、エピソード9が7月末から撮影がおこわなれるにあたって徐々にリークしてきた情報によると、撮影ロケ地には、スペインの各地とペルーのマチュピチュがはいっているという話だ。
そして、これらの国は、スペイン語圏であることは説明する必要もあるまい。だが、それ以上に、ロケ地にマチュピチュが含まれていることは、実はある意味で非常に興味深いのだが、この考察は次回に譲ろうと思う。
《本記事の続き:新三部作の謎解き~5~はこちらから》