StarWalker’s diary

映画スター・ウォーズに関する独自の考察、謎解き、分析、最新作のストーリー予想、最新情報を発信するブログ

『スター・ウォーズ』はどこへ向かう?ルーカスが明かしたフォースの正体と新三部作構想

 スター・ウォーズの生みの親であるジョージ・ルーカス氏がアメリカ、AMCの番組『James Cameron's Story of Science Fiction』の中で、彼の持っていたエピソード7から9の新三部作構想と、スター・ウォーズ世界に関する彼のオリジナルのアイデアについて語りました。今回はこのルーカスのコメントと、ルーカスがフォースという概念を考えた起源についてこの機会にまとめました。

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ミディ・クロリアンの秘密

 『スター・ウォーズ』の原作者であるジョージ・ルーカススター・ウォーズ/エピソード1 ファントム・メナス』でフォースの意思を媒介する生命体として、ミディ=クロリアンというものを登場させた。彼はAMCの番組『James Cameron's Story of Science Fiction』(James Cameron's Story of Science Fiction Season, Episode and Cast Information - AMC)でジェームズ・キャメロン監督とのインタビューの中でこのミディ=クロリアンを通じて描きたかった一つの宇宙を支配する生態系とフォースの概念について語っている。 

Lucas: Everyone hated it when we started talking about midi-chlorians in The Phantom Menace. A whole aspect to that movie that is about symbiotic relationships. To make you look and see that we aren't the boss. There's an ecosystem there.

ルーカス:ファントム・メナスでミディ=クロリアンを登場させた時、みんな嫌がったよね。この映画の全ては象徴的に示される物事の関係性にあるんだ。つまり我々が支配主ではないことを認知することさ。そこには生態系があるんだ。

Cameron: There’s a whole ecosystem called microbiome inside that they're just learning about now.

キャメロン:我々の中にいわゆる微生物叢、マイクロバイオウムと呼ばれる生態系があることが分かってきてますね。

 たしかに『ファントム・メナス』を見るとわかるのだが、ルーカスの描きたかった生態系というものは、この映画の中でかなり色濃く表現されている。クワイ=ゴン・ジンと、オビ=ワン・ケノービが惑星ナブーに到着し、ジャージャーの助けを借りてボンゴで惑星の核を通って王宮に向かう。この場面で登場する巨大な魚たちの食う食われるの関係性と、それを見たクワイ=ゴンの台詞「上には上がいる」は特にこの生態系についてよく語っている描写だろう。 

 ルーカスは、さらにこのミディ=クロリアンがフォースの支配者であるホイルスとの仲介を担う生命体であり、ホイルスこそがフォースであり、我々はそのホイルスの器に過ぎない存在であるという宇宙観を語っている。そして、彼は新三部作の中で、これらの概念を描くつもりであったことを語った。 

Lucas: [The next three Star Wars films] were going to get into a microbiotic world. But there’s this world of creatures that operate differently than we do. I call them the Whills. And the Whills are the ones who actually control the universe. They feed off the Force.

ルーカス:次の三つのスター・ウォーズは微生物叢の世界を掘り下げるものにするつもりだったよ。我々とは違う振る舞いをする生き物の世界だよ。私はそれをホイルスと呼んだんだ。ホイルスこそが宇宙を支配しているものなんだよ。彼らはフォースを使うんだ

Lucas: Back in the day, I used to say what this means is we’re just cars, vehicles for the Whills to travel around in. We are vessels for them. And the conduit is the midi-chlorians. The midi-chlorians are the ones who communicate with the Whills. The Whills, in the general sense, they are the Force.

 ルーカス:以前、私はこれは我々は車に過ぎないということだと言っていたよ。ホイルスが一緒に旅をする乗り物だとね。我々はホイルスの器なんだ。そして繋がりを媒介するのがミディ=クロリアンなんだ。ミディクロリアンはホイルスと意思疎通をする、ホイルスつまりはフォースのことだよ。

 ルーカスが、フォースについて語るのはもちろんこれが初めてではない。だが、新三部作の中で、彼のフォースによる宇宙観を描こうと考えていたことはおそらくこれが初めてだろうと思われる。

 

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フォースの起源

   ルーカスはこのフォースの正体やミディ=クロリアンやホイルスの概念と関係について『スター・ウォーズ』公開当初から考えていたことだと説明している。

Lucas: All the way back to - with the Force and jedi and everything, the whole concept of how things happen was laid out completely from [the beginning] to the end. But i never got to finish. I never tell people about it.

ルーカス:私はフォースや、ジェダイの概念を最初から考えていたよ。でも終わらせて人々に語る機会がなかっただけさ。

  あまり知られていないことであるが、フォースと言う言葉自体が、初めて登場したのはルーカスのデビュー作である『THX1138』の脚本第1稿なのだ。 『THX1138』の脚本第1稿で、主人公のTHX1138は、既存の神は偽物でありすべての宗教の真実を探ろうとし、その宗教にも属していないもの、それが「フォース」だと述べる台詞があったのだ。これは1968年のことであり、『スター・ウォーズ』がこの世に登場する10年近く前のことなのである。

 だが彼はフォースについてはいつか描きたいという夢を持ちながら『THX1138』撮影時には脚本からこのフォースの言葉を削除している。

 そして、さらに遡るとルーカスはこのフォースと言う言葉を、アーサー・リプセットの短編映画『21-87』21-87 (Arthur Lipsett, 1964) - YouTube出てきた台詞からヒントを得ている。『21-87』は1964年の映画で、ルーカスが19歳の時だ。

    つまり、彼の頭にはフォースというものが常にあった。フォースはスター・ウォーズのために考え出された概念ではないのだ。このフォースの概念こそルーカスがずっと描きたかったことであり、それを同じく彼が昔から描きたかった宇宙を舞台にしたアドベンチャー映画を撮りたいと思い、スター・ウォーズを作ろうとしたときに組み込んだのである。 

 ミディ=クロリアンについては、ご存知の通り『スター・ウォーズ/エピソード1 ファントム・メナス』まで映画の中で語られることはなかったが、実は1977年当時にすでにルーカスの頭の中にはこの生命体についての考えがあったSo What the Heck Are Midi-Chlorians? | StarWars.com)。 

"It is said that certain creatures are born with a higher awareness of the Force than humans. Their brains are different; they have more midi-chlorians in their cells."

"生物によっては人間よりも高いフォース感受性を持っている。彼らの脳は違うんだ。彼らは細胞の中にもっと多くのミディ=クロリアンを持っているんだ."

 

The Making of Star Wars (TM): The Definitive Story Behind the Original Film

The Making of Star Wars (TM): The Definitive Story Behind the Original Film

 

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ホイルスの起源

 では、ホイルスについてはどうだろう?そして、ルーカスがホイルスという言葉を最初に使った時、つまり1973年に『ザ・スター・ウォーズ』という物語の概略を書き始めた時、ホイルスというのは銀河の守護者である古代組織の名前として登場するに過ぎない。そして、このスター・ウォーズの物語は、ホイルス銀河史というホイルスによる年代記から語られる物語なのだ。

 ルーカスは、当初、ホイルスを我々のような有限な命をもつ生命体でなく、不死の生命体のようなものを考えていた。そしてそのホイルスが銀河の出来事を観測していて、その歴史を綴ったものが「ホイルス銀河史」であるという設定を考えていた。だが、ルーカスはこのアイディアを捨てた(The Journey of the Whills: From Concept to Canon to Rogue One – The Star Wars Report)。

"Originally, I was trying to have the story be told by somebody else (an immortal being known as a Whill); there was somebody watching this whole story and recording it, somebody probably wiser than the mortal players in the actual events. I eventually dropped this idea, and the concepts behind the Whills turned into the Force. But the Whills became part of this massive amount of notes, quotes, background information that I used for the scripts; the stories were actually taken from the Journal of the Whills."

もともとは誰か(ホイルスという不死の存在)によって語られた形の物語を考えていた。誰かよりもがすべてを見ていて記録しているんだ。だけど最終的にこの考えは捨てることにしたよ、そしてホイルスの裏にある概念はフォースになった。だけど、ホイルスは脚本を書くうえで使ったの多くのメモ、引用、背景の一部になった。これらの物語は「ホイルス銀河史」の一部なんだ。

  実は、1973年にルーカスが最初に書いた一番最初のスター・ウォーズ』の概略第1稿に登場した「ホイルス銀河史」という言葉は、その後、概略の第2稿、そして脚本の第1稿には登場しなくなる。そして、脚本の第1稿に代わりに登場したのが「フォース」という言葉なのだ。

 1974年、前年の7月に20世紀フォックスと『ザ・スター・ウォーズ』の企画の契約を結ぶことに成功したルーカスは、脚本の第1稿を執筆し始める。そして、この第1稿に、後に全世界で真似されるようになる有名な「フォースとともにあれ」「フォースを感じる」と言う台詞の原形がすでに登場する。この時はフォースは、フォース・オブ・アザーズと呼ばれ「フォース・オブ・アザーズとともにあれ」という台詞として登場するが、わずかにこれらの台詞に登場したただけで説明は全くない。

 ルーカスは概略では登場していた「ホイルス」は一旦捨てられ、脚本になる際に「フォース」を登場させたのことがはっきりとわかる。この部分が、おそらくルーカスが言っている、ホイルスによって語られる物語のアイデアを捨てて、代わりにフォースを登場させたという部分に該当するのだろう。

 そして、フォースについてさらに言及されたのが脚本の第2稿だ。この第2稿で、ようやくフォースの光明面と暗黒面につながる良い面と悪い面という2つの側面が紹介される、もっとも良い面はアシュラ、悪い面はボーガンというやや陳腐な形の哲学的な名称がつけられている。 

 この脚本の第2稿で「ホイルス」という言葉が復活する。ここで脚本の冒頭に、聖書風の引用が登場し、『スター・ウォーズ』が「ホイルス銀河史」から引用された物語である設定になるのだ。これはルーカスの発言をはっきりと裏付けている。

ルーカスが『最後のジェダイ』を絶賛した理由

    ちなみに、このジョージ・ルーカスのフォースの概念は、ライアン・ジョンソン監督の『最後のジェダイ』にも引き継がれていると思われる。『最後のジェダイ』の中では、惑星オクトーでルークからレッスンを受けるレイが、フォースについて教わる場面が描かれた。これは純に科学的とは言えないものの、これまで非常に哲学的な信仰対象としてしか描かれていなかったフォースの概念を一段掘り下げた場面といえる。

 ライアン・ジョンソン監督は、エピソード8でジョージ・ルーカスのアドバイスを受けたことを言っているが、おそらくフォースについて二人は話をしたのだろうと思う。新三部についても『フォースの覚醒』には喜ばなかったジョージ・ルーカスも『最後のジェダイ』 は絶賛していたのはこの辺りに理由があるのだろう。 

 ルーカスがここで語ったホイルスという超絶的な存在というものは、SFでは典型的なモチーフである。有名なものは1968年の『2001年宇宙の旅』がそうだろう。もはや余計な説明は不要だと思うが、『2001年宇宙の旅』はアーサー・C・クラークのSF小説の原作を、スタンリー・キューブリックが映画化した映画史にのこる金字塔だ。同じ年に公開された『猿の惑星』と並んで、まさしくSF宇宙映画がここから始まったといっていいエポック・メーキングな作品である。 

2001年宇宙の旅 (字幕版)

2001年宇宙の旅 (字幕版)

 

  ちなみに20世紀フォックスが1976年に『スター・ウォーズ』の映画に正式に出資することを決定したのは、1975年から再公開されていた『2001年宇宙の旅』が興行的に成功したからという背景があり、その意味でもまさしく『2001年宇宙の旅』が無かったら『スター・ウォーズ』は無かったと言える。

 『2001年宇宙の旅』は、簡単に要点だけ言うと、いわゆる宇宙人、異星人、われわれの想像を超える存在がいて、それが人類を進歩させてきたという話だ。そして人類社会から選ばれた1人のボーマン船長という宇宙飛行士が最後に、「スター・チャイルド」と呼ばれる人類を超越した存在に進化するというシーンで終わる。

 スター・ウォーズ』の世界には神が存在しない。しかし、その代わりにフォースが存在する。『フォースとともにあれ(May the Force be with you)』という台詞は『神のご加護がありますように(May the God be with you)』というフレーズの神がフォースに置き換わったフレーズであることは有名な話である。

    話がそれるが『最後のジェダイ』では、ローラ・ダーン演じるボルドー中将が、惑星クレイトに向かうレジスタンスの小型輸送船の艦列に「反乱者に幸あれ(Godspeed, rebels)と呟くGodspeedは道中の安全を祈る言葉だが、Godという言葉がスター・ウォーズに登場したのはこれが初である。

   そして、この言葉をスター・ウォーズに登場させてしまったことは良くないと思った。これは私が知る限りあまり誰も指摘していないと思うのだが、スター・ウォーズの世界に神(God)という言葉を登場させてしまったために、スター・ウォーズが持つ独特の世界観がこの一語で崩れてしまっているのだ。『最後のジェダイ』の違和感はこういった部分から少なからず作られていて、私はライアン・ジョンソン監督は本当にスター・ウォーズを作っているつもりでいたのか疑ってしまうのだ。でなければ確実に意図的にやってると思う。

 ルーカスは、先に紹介したように、『THX1138』の脚本第1稿で、主人公のTHX1138の台詞に言わせたように、既存の神に代わるすべての宗教の真実としてフォースというものがあり、それはホイルスという超絶的な生命体のものであって、銀河の出来事を観測していて、あらゆる生命体はフォースを通じてこのホイルスの意思を感じることができるという独自の宗教観を作り出した。

 ルーカスがフォースと言う言葉を知って、これを彼独自の概念にしていったのは1964年から1968年にかけてのころであり、この過程で『2001年宇宙の旅』に影響を受けてホイルスのような存在をこのフォースの背後に存在するものとして考えたのではないだろうかと思う。

 さて、時代は下って2017年に公開された『最後のジェダイ』だが、この中でライアン・ジョンソン監督が当初描こうとしていたシーンで、最終的に没になったというアイデアの中に、この『2001年宇宙の旅』を彷彿させるものがあったことがライアン・ジョンソン監督のインタビューからわかっている。

 それは、惑星オクトーで自分の両親を知りたいと願うレイが暗い洞窟の中に落ちていき、鏡に映った無数の自分の姿を見るというシーンだ。実は、ライアン・ジョンソン監督はここで、レイが見るレイ自身の姿が一人一人徐々に徐々に少しづつ若くなっていき、最後に『2001年宇宙の旅』に登場したスター・チャイルドのような赤ん坊のレイを母親のような人が抱きかかえている姿が現れ、さらにその母親がレイ自身で、レイが赤ん坊の自分自身を抱いているアイデアを考えた'Star Wars: The Last Jedi': Rian Johnson Reveals the Surprising Line That Was Totally Improvised)。

 これは、ライアン・ジョンソン監督がそこまで語ってはいないので、私の推測であるが、レイの両親が存在しない、ということを視覚的に表すもの、かつレイがフォースの意思そのものによって、ルーカスが言うホイルスそのものが生み出した存在だということを象徴的に描くようなシーンになっていただろう。そしてこれが実現していたら間違いなくファンは猛反発したな違いない。

 この辺りも、ジョージ・ルーカスの考えに近いことをやろうとしていた部分が彼にあったのだろうと思う。これがルーカスからもらったアイデアなのか、ルーカスから聞いた話をライアン・ジョンソンが独自のアイデアにしたのかは分からないが、ルーカスはライアン・ジョンソン監督のそのあたりの描き方も少なからず気に入ったのだろうと思う。

ルーカスの悲劇と後悔

 さて、そんなルーカスであるが『スター・ウォーズ』公開当時、ルーカスは彼が脳内で考えていたフォースの正体を最初から明かそうとはしなかった。ルーカスは、この当時フォースについて「語り過ぎないこと」がこの映画には重要だということを理解していた。そして、比較宗教学を学んでいた彼のよき相談相手であったゲイリー・カーツのアドバイアスもあったと思われる。そして、ルーカスは脚本を書き直し、洗練させていく過程で、フォースについての説明をかなり省略し必要最低限まで削除している。結果的に残ったものが、老ベンが自分の小屋でルークに語るあの台詞になるわけだ。

"An energy field created by all living things. It surrounds us, penetrates us, and binds the galaxy together."

(フォースとは)ありとあらゆる生き物が作り出すエネルギーのことさ。我々を常に取り巻き、銀河を一つに結び付けている。

   皮肉なこととに、多くのファンたちは、当時のルーカスの言葉の通り、こういった科学的説明は『スター・ウォーズ』には不必要なものと思っている。実際に『スター・ウォーズ』がこれだけカルト的魅力を持った映画になった背景には、ルーカス自身が語っているように、この映画が説明しすぎない映画であったからだ。そして、そこに多くのファンがその背景物語を自由に想像できる余地が非常に多くあったからだ。

 この最初の『スター・ウォーズ』とそれに続く『帝国の逆襲』でのヨーダの台詞により、むしろこういっ科学的説明を要するようないわゆるSFSF的な要素は、『スター・ウォーズ』には似つかわしくないものとファンには認知され、それが『スター・ウォーズ』をこれまでの宇宙映画と一線を画した理由になっていたのだ。 

  

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    だが、これはルーカスにとっての悲劇の始まりだったと言える。つまり、ルーカスが自分の本来描きたかった科学的要素でスター・ウォーズの世界を説明しようとすればするほどファンの反発を招く結果になったからだ。

 ルーカスと言う人は、もともと非常にSFSFした映画を作りたかったと思っていた人でもある。ルーカスは『スター・ウォーズ』の成功で、エンターテイメント性の高い映画を撮る監督だと思われがちだか、彼の原点はもともとジョージ・オーウェルの『1984』的な絶対的管理社会に対するカウンターカルチャーに惹かれて育った人間というとこにある。また、彼自身の人生がそういう人生なのだ。そういった要素と彼の独特の未来観やSF的要素が『THX-1138』になったわけだ。『スター・ウォーズ』の帝国軍や圧倒的多数ながら同質無機的なストームトルーパー、そもそも彼らはクローンである、帝国に対する反乱軍の戦い、エンドアの戦いはベトナム戦争が強く影響しているように、『スター・ウォーズ』の原点もまたここにある。

 ルーカスは少なからず『スター・ウォーズ』にも彼のそういった科学的説明に裏付けられた哲学、宗教観を持ち込みたかったのだろう。だから、三部作を新しく撮るにあたって、そういった彼のビジョンを映像化したかったに違いない。

 ちなみに私は、ルーカスが語ったフォースとホイルスの正体についてはリチャード・ドーキンスの利己的遺伝子論が影響を与えていると考えているが、それについてはこちらの記事に書いたので、興味がある方は是非(スター・ウォーズの謎解き~フォース、ミディ=クロリアン、そしてホイルスの正体と利己的遺伝子を考察する~ - StarWalker’s diary)。

 だが、残念ながらルーカスが『スター・ウォーズ』の時に「語り過ぎないこと」が重要と言っていたまさしくその理由によって、逆にルーカスは自分が描きたいものが自由に描けなくなってしまった。

Lucas: If I’d held on to the company, I could have done it, and then it would have been done. Of course a lot of fans would have hated it, just like they did Phantom Menace and everything, but at least the whole story from beginning to end would have been told.

もし私がルーカスフィルムを手放さなかったらあるいは終らせることができたかもしれないよ。おそらく多くのファンは反対しただろうけどね。ファントム・メナスを嫌ったように。だけど少なくとも全ての話を最初から最後まで語ることができたはずだよ。

 今回のこのインタビューを見ると、彼はルーカスフィルムを売却したことに僅かな後悔を感じているように見える。ルーカスはこれによって自分の好きな『スター・ウォーズ』を描くことが永遠に叶わなくなってしまった。

   ルーカスはファンの言うことを聞かずに、自分の好き勝手にスター・ウォーズを作ることも出来た。だが、ルーカスはそんな創造主でありながら、これまでも比較的ファンの言い分を聞いてきた人だ。というより聞かざるを得ない状況になってしまった。

   そんなルーカスは自分が作っても非難しかされない状況を見てルーカスフィルムを売却したわけだが、その裏には自分が絡まずにスター・ウォーズが愛される作品になってくれたら良いという思いはもちろんあるだろう。だが、新三部作はディズニーの手で新しくスタートしたもののファンの目は厳しい。

   そんな状況にあって、今回のルーカスの言葉には、誰が作っても非難されるなら、やはり自分の好きな通りに新しいスター・ウォーズと作っていたかったという思いも感じるのだ。    

 フォースとミディ=クロリアンとホイルスによる彼の考えは面白いと思うが、微生物世界を描くスター・ウォーズ新三部作が見たいか?と問われれば、正直う~ん・・・というところが多数派のファンの本音なのではないだろうか?

 私もスター・ウォーズ無しの人生はもはや考えられない人間でり、初めてフォースについて知った時の衝撃は忘れない。だからこそ、あれこれ書いているが、こういうルーカスの発言を聞くと、スター・ウォーズがこれだけのものになったのはルーカスにとっては良かったのかと複雑な気持ちにもなるのである。もはや『スター・ウォーズ』そのものがルーカスの言葉通りホイルスの物になってしまったと言えるだろう。