スター・ウォーズ映画最新作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が遂に6月29日に公開されました。スター・ウォーズ映画は、これまでも色々な映画からのインスピレーションをもとに作られてきましたが、今回の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』でも同じ様に様々な映画からの要素を取り込んでいるように思いましたので、今回はそれを紹介したいと思います。
《映画『ハン・ソロ』に関するネタバレを含む》
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『宝島』
「宝島」は1883年にロバート・スティーヴンソンのが発表した』海洋冒険小説だ。今回のスター・ウォーズ映画最新作『ハン・ソロ』で描かれた、主人公ハンと彼の師匠的存在であるベケットは、小説「宝島」に登場する主人公ジム・ホーキンズと悪役ジョン・シルバーの関係からヒントを得ている。
実際に、ローレンス・カスダンとジョン・カスダンが本作の脚本を書くにあたって、もう一度『宝島』を読み直したとエンターテイメント・ウィークリー紙のインタビューで語っている(Star Wars: Woody Harrelson, Thandie Newton, Paul Bettany character details | EW.com)。
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この小説に登場するジョン・シルバーは、今の海賊のイメージを作ったと言われ、片足義足に肩にオウムを乗せた海賊の船長のイメージはここが始まりとされる。
ジョン・シルバーは、物語序盤で、その素性を隠して、フリント船長とその海賊団が埋めた財宝をめぐって宝島にむけた航海に同行する。ジョン・シルバーは、自分が生き残ることが第一であり、状況が変われば仲間でも裏切る悪党なのだが、物語序盤では正体を隠し、その中で主人公ジムとは互いに信頼関係を深めていく。だが、彼は密かに仲間を集めて裏切って反乱を計画し、財宝の強奪をたくらむ。
『ハン・ソロ』の中でも、ベケットはハンに、誰も信用するなと忠告したり、その関係はシルバーとジムを思い出させる。最終局面では、その言葉通りに、自分がハンや、ドライデン・ヴォスさえも裏切るが、これも、ジョン・シルバーと同じだ。
『宝島』の中で、ジョン・シルバーには黒人の妻がいて、フリント船長の財宝を手に入れた後は、海賊稼業をやめて堅気の生活をしようと思っていることを語る。ベケットもまた妻ではないが、ヴァルという古い付き合いのパートナーがおり、借金を返したら、グリー・アンセルムへ戻り、ヴァラコードを弾いて暮らすという夢を語っていた。このあたりの設定も、ベケットがそもそもジョン・シルバーをモデルに作られたキャラクターであると考えるとわかりやすいだろう。
『突撃』
名匠スタンリー・キューブリック監督の初期のころの名作である『突撃(Paths of Glory)』は1957年の戦争映画だ。第一次世界大戦のフランスを舞台に、塹壕戦を戦う前線部隊の中の人間模様を描いた映画である。
『ハン・ソロ』では、ハンが惑星ミンバンの戦地で、ベケットらに出会うが、このミンバンのシーンには『突撃』を思い出させる部分がある。
映画『突撃』では冒頭のシーンで、フランス軍の対ドイツ軍との戦いの前線で、ダックス大佐が塹壕を兵士に声をかけてながら歩くシーンがある。歩く大佐の視点と、画面中央に二人を捉えながら塹壕に沿って引きで撮るこの一連のシーンは非常に特徴的である。惑星ミンバンで、ハンとベケットらが突撃を決行した後に、ハンとベケットが言葉を交わしながら塹壕を歩くシーンがあるが、この部分はこの『突撃』に重なる。
こちらの記事で、今回の『ハン・ソロ』は、銀河内乱の只中を描いたオリジナル三部作から10年前を描いているが、オリジナル三部作の多くの戦争描写は第二次世界大戦を描いた戦争映画をもとにしていることは従来から言われている通りで、このブログでも取り上げているが『空軍/エア・フォース』『暁の出撃』などがそうだ。
今回、オリジナル三部作から10年前を描くにあたり、その戦争描写は、第一次世界大戦をもとにしていると思われ、それにあたって塹壕戦を描いた名作『突撃』を元にしたのかもしれない。
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『戦場にかける橋』
1957年公開の『戦場にかける橋(The Bridge on The River Kwai)』は、第30回アカデミー賞作品賞を受賞したデヴィッド・リーン監督の手掛けたクラシック映画の名作だ。スター・ウォーズ・ファンにはお馴染みの名優であるアレック・ギネスをはじめ、ウィリアム・ホールデン、そして早川雪洲というキャストで描かれた戦争映画の名作だ。
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』で、ベケットがヴァル、ハン、リオ、そしてチューバッカらと列車(コンベイエックス・トランスポート)を強奪をするが、この最後に爆破した橋から列車が谷に向かって落ちていくシーンは、この『戦場にかける橋』のラストシーンを意識しているのではないか?と思うのだ。
今回、映画を見ていて、何かに似ているなと思ったら、アレック・ギネスつながりで思い出した。
『戦場にかける橋』は、第二次大戦中の日本占領下のビルマにおいて、捕虜になったイギリス人兵士がタイとミャンマーを結ぶ泰緬鉄道の建設に従事されられている中で、アレック・ギネス演じるニコルソン大佐が、イギリス人の尊厳と誇りのためにタイのクウェー川にかかる橋(The Bridge on The River Kwai)を完成させようとする話だ。
『戦場にかける橋』のラストで、この橋は爆破されてしまうが、『ハン・ソロ』の中で、ヴァルが橋を爆破し、谷間におちていくコンベイエックス・トランスポートは、この『戦場にかける橋』で橋を渡る瞬間に爆破されて落ちていく列車を意識した画になっているように思う。
そもそも、『戦場にかける橋』という映画自体が、ジョージ・ルーカスと彼のオリジナルの『スター・ウォーズ』にかなり影響を与えているのだが、これは、調べてみたら、スター・ウォーズの公式サイトにも紹介されていた(The Cinema Behind Star Wars: The Bridge on the River Kwai | StarWars.com)。
アレック・ギネスが双方の映画に登場するのはもちろんだが、この映画で、ウィリアム・ホールデンが演じるアメリカ人のシアーズ中佐はハン・ソロのように一匹狼のアウトローであって、またその役回りも似ている。さらに、『戦場にかける橋』だけでなく、デヴィッド・リーン監督の他の作品(『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』)も『スター・ウォーズ』に影響しているので、今回の『ハン・ソロ』でも、このラストシーンを参考にした可能性はあるだろう。
ちなみに、この橋から落ちる列車は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART III』のラストシーンにも登場していた。こちらは完全に西部劇で列車強奪を描いている。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はロバート・ゼメキス監督だが、製作総指揮はスティーブン・スピルバーグとキャスリーン・ケネディ。後段に紹介するインディ・ジョーンズもそいだが、過去にキャスリーン・ケネディが関わった作品への細かな類似点が意外に多い本作だったりする。
『三匹の侍』
以前、予告編考察をしたこちらの記事(『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』・TV予告編第2弾「Risk」が登場!【ネタバレ・考察】 - StarWalker’s diary)でも紹介したが、もう一度ここにも書いておきたいのが、1964年の五社英雄監督の『三匹の侍』に登場するある殺陣について。
ケッセルにおいて、ハンたちは͡精製前のコアクシウムを奪取すべく、スパイス鉱山を仕切るシンジゲートらと対決する。そこで登場するシーンの一部に、ランドがハンに向かって銃を放り投げて、ハンが空中で銃を受けて振り向いて銃を撃つというシーンが登場している。
これは、『三匹の侍』の中で、丹波哲郎演じる柴左近と、平幹二朗演じる桔梗鋭之介が、同じような戦い方を見せるシーンがある。この映画のクライマックスシーンでは、平幹二朗演じる桔梗鋭之介が刀を放り、その刀を空中でキャッチした丹波哲郎演じる柴左近が反転して戦う殺陣を見せる。
この部分は、非常に特徴的で、おそらく『ハン・ソロ』で意識して同じことをやっているのではないかと思う。というのも、『三匹の侍』はライアン・ジョンソン監督が『最後のジェダイ』でカイロ・レンとレイの戦い方のシーンで、影響を受けたとはっきり語っているからだ(Star Wars: The Last Jedi Is Inspired By Three Specific Films, According To Rian Johnson)。
もちろん『ハン・ソロ』はライアンが作ったわけではないし、アクション関連のスタッフは『フォースの覚醒』『ローグ・ワン』『最後のジェダイ』の3作と『ハン・ソロ』でほぼ別々の顔ぶれになっており、因果関係は不明だが、おそらく『三匹の侍』をルーカスフィルムの製作スタッフが見ているならば参考にした部分があるのではと推測する。
西部劇
『ハン・ソロ』は宇宙を舞台にした西部劇である。したがって、当然、西部劇的なショットが散見される。その中でもそれを特に印象付けるのが、ハンがランドと初めて対面するときのショットで、ハンの股下両脚の間から中央にテーブルの向こうのランドを写すショットだ。これは、例えば、セルジオ・リオーネ監督の1968年の西部劇『ウエスタン(Once Upon A Time in West)』で、股下から中央に主演のチャールズ・ブロンソンを捉えるショットの例がある。この股下からのショットは、手前の人物を大きく背中側から正体を見せないように演出することで、主人公が立ち向かう困難な挑戦を表す描写で、西部劇で多用されるショットだ。また、ハンがエンフィス・ネストと対峙する場面で、ハンのホルスター越しに相手を写すショットがあるが、これも、典型的な西部劇で用いられるショットだ。
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『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』
スター・ウォーズの生みの親、ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグが組んだ大ヒット映画シリーズ『インディ・ジョーンズ』シリーズの二作目が1984年に公開された『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』である。
『 スター・ウォーズ』でハン・ソロを演じたハリソン・フォードが主演していることは説明不要だが、それ以外にも、今回の映画に通じる部分がある。今回『ハン・ソロ』を観て感じたのが、細かい部分でこの『魔宮の伝説』と類似点が不思議と多い点だ。
カードゲームのイカサマ
『ハン・ソロ』の中で、ドナルド・グローヴァー演じるランド・カルリジアンはサバックでイカサマをして勝ち続けているのだが、最後の最後でミレニアム・ファルコン号を賭けた勝負で、ハンはランドのズルを見抜き、ファルコン号を手に入れる。
この時、ランドは自分の右手の袖下にカードを隠し持っていてすり替えるという手口を使う。これは、『魔宮の伝説』の中で、インディ・ジョーンズが、この映画で人気を博したキー・ホイ・クァンが演じる中国人の戦災孤児の少年ショートと焚き火を囲んでポーカーをする場面で登場している。
ショート少年は、インディにズルをしたと言うのだが、実は袖の下にカードを隠し持っていて、インディに逆に見抜かれてしまうというユーモラスなシーンがある。
今回、ランドがイカサマをするのは、ロバート・レッドフォードとポール・ニューマンが主演した名作映画『スティング』などを参考にしてくるかもと密かに思っていたが、ランドのイカサマを考えるにあたり、袖口にカードを隠すという初歩的だが子供にもわかりやすい形にしたのは、案外このあたりをヒントにしたかもしれない。
冒頭のカーチェイス
冒頭にカーチェイスがあるのも2つの映画に類似している点だ。『魔宮の伝説』で中国マフィアに命を狙われたインディはケイト・キャプショー演じるウィリーと高級中華料理屋の窓から脱出、ショート少年が乗る車に拾われ逃亡する。しかし、マフィアの手下も車で追撃してきて、カー・チェイスが展開するのだ。
しかも、劇中、インディらが目指すのが港湾施設の入出国管理場で、そこから小型のプロペラ機にのり脱出しようとする。
この流れは、『ハン・ソロ』の冒頭のスピーダーチェイスから始まる展開と全く同じ。その後、ハンがキーラと別れて離れ離れになるなどの話は別物だが、話の導入部の構成は似通っている。
ちなみに、『魔宮の伝説』では、この冒頭のカーチェイスシーンに至る前で、インディが相手に毒を飲まされて、その解毒剤が入ったカプセルを巡って高級中華料理屋で大アクションがある。実はここに登場する解毒剤のカプセルが、青い透明な液体の入ったチューブで、何となく『ハン・ソロ』の冒頭に登場したキーラとハンが脱出に使おうとする携帯型のコアクシアムのチューブに似てる気がするのだが…これはさすがにただの偶然だろう笑。
雪山
まだある。中国マフィアの追撃を逃れるためインディらは小型プロペラ機を使う。ところがプロペラ機は、エンジンが不調で空中で徐々に高度を落としていく。事態に気がついたインディらはプロペラ機から脱出するのだが、この一連のシーンはヒマラヤなのだ。この雪山の情景でが広がる中で、インディらが脱出したプロペラ機は、高度を上げられず、そのまま雪山の尾根にぶつかってしまう。
『ハン・ソロ』では、惑星ヴァンドアの雪山の情景が登場し、コンベイエックス強奪に失敗して、そのまま積荷を切り離し、引き離された貨車がそのまま落下し山の尾根で爆発するが、雪山でのシーンがあるのも2つの映画に共通している。
採掘場での戦い
『ハン・ソロ』では、ハンらは惑星ケッセルのスパイス鉱山の地下にある精製前のコアクシアムを手に入れようとする。そして、パイク・シンジケートにより鉱山の採掘場で強制労働に従事していた人々そしてドロイドを解放する。
『魔宮の伝説』では後半のクライマックスにおいて、悪役の司祭モラ・ラム(アムリーシュ・プリーが演じる)という邪神カーリーを崇拝する司祭が登場し、秘石サンカラ・ストーンを掘り出すために、村の子供を奴隷として地下の炭鉱で働かせている描写が登場する。インディらは、サンカラ・ストーンを司祭モラ・ラムに渡すまいと戦い、地下で働く子供たちを解放するのだ。最後で、インディらがトロッコで脱出するシーンと吊り橋でのアクションはこの映画のクライマックスとして有名だろう。
地下の採掘場が物語の舞台になる点は、今回の『ハン・ソロ』におけるケッセルでの物語と似ていて、共通点をみることができる。
インディ・ジョーンズ・シリーズは、ルーカスフィルム製作の映画であるし、第1作の『レイダース/失われた聖櫃』の脚本はローレンス・カスダンが手掛けている。『魔宮の伝説』は、ウィラード・ハイクとグロリア・カッツの夫婦で手掛けており、何『アメリカン・グラフィティー』からのルーカス映画の右腕脚本家の二人だ。
その経緯を考えると、冒険活劇の物語の展開や構成を『ハン・ソロ』のローレンス・カスダン、ジョナサン・カスダンの二人が参考にした可能性もある。
さらに、こちらの記事(『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』・TV予告編第5弾「Ride」が登場!【ネタバレ・考察】 - StarWalker’s diary)で紹介したように、ドライデン・ヴォスのコレクションには『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』に登場した水晶髑髏(クリスタル・スカル)があったりするので、インディ・ジョーンズへの隠れオマージュはまだあるかもしれない。
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まとめ
ディズニーによるスター・ウォーズ、スピンオフ映画の第二弾 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は劇場公開から早くも1か月となりました。昨年末の『最後のジェダイ』から半年あまりしか経っていないこともあり、『最後のジェダイ』の公開後の興奮が収まらないまま『ハン・ソロ』の公開を迎えた感がありますが、次のエピソード9は来年12月で、この先はしばらく間が空くことになります。なので、エピソード9の情報や考察が中心になりそうですが、他のスター・ウォーズ映画作品についても当然取り上げていきますので、引き続き当ブログを宜しくお願い致します。