StarWalker’s diary

映画スター・ウォーズに関する独自の考察、謎解き、分析、最新作のストーリー予想、最新情報を発信するブログ

『スター・ウォーズ/ザ・マンダロリアン』~ジョージ・ルーカスがジョン・ファヴローのセットを訪問した背景~

 ディズニーによる『スター・ウォーズ』は新三部作のエピソード9が撮影中ですが、その一方で、シリーズ初の実写テレビドラマ『ザ・マンダロリアン(The Mandalorian)』も製作が着実に進行中です。これまで新三部作、スピンオフ映画を中心に取り上げてきた当ブログですが、今後は『ザ・マンダロリアン』についても少しずつ取り上げていこうと思います。

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ルーカスが撮影現場を訪問した理由は?

 ジョン・ファヴローは自身のインスタグラムの中で、10月19日の誕生日に、ジョージ・ルーカス氏が『ザ・マンダロリアン(The Mandalorian)』の撮影セットを訪問したことを明らかにし、二人のツーショット写真を公開している。これだけでは、単なる情報だけなので、他のメディアでも取り上げられているとおりである。だが、今回私が気になったのは、以下の点だ。

 『スター・ウォーズ』原作者であるジョージ・ルーカスが、ディズニーのスター・ウォーズの撮影セットを訪問するのは珍しい。彼が撮影現場を訪問したのは『ハン・ソロ』の時だけであり、エピソード7、8、あるいはまた現在撮影が進むエピソード9の新三部作では全く聞かないのだ。では何故ジョージ・ルーカスは、今回(および『ハン・ソロ』の)撮影現場を訪問したのか、疑問にならないだろうか?

 

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幻のテレビドラマ『アンダーワールド

   以前の記事の中で、私は『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』に次いで企画されながらもなかなか公表されないスピンオフ3作品目(候補は『オビ=ワン』か『ボバ・フェット』だった)について、以下のように書いた。

これはあくまでも私の推測に過ぎないが、こういった検討の中で、当初スピンオフで劇場公開型の映画として考えられていたものも、スピンオフ映画が単発の映画として劇場で儲からないのであれば映画は三部作だけにすることや、ディズニーが目指したいインターネットなどの映像配信の方で、実写映画としてスピンオフをやるという案も出ているのではないか?と予想する。あるいは、スピンオフにしても単発物ではなく、ハン・ソロのようなあるキャラクターのスピンオフ作品を連続シリーズで製作する形も考えられるだろう。

 そして、予想通りに、当初おそらくスピンオフ作品として考えられていただろう「ボバ・フェット」に関しては、形を変えながらもマンダロリアンを主人公としたジョン・ファヴローのTVドラマという形で映像化され、ディズニーによるインターネット配信サービスで公開されることになった。

 私は、ディズニーによる初のスター・ウォーズ実写テレビシリーズが『ザ・マンダロリアン(The Mandalorian)』となったのは、かなりの確率でジョージ・ルーカスのかつての夢を実現させたいキャスリーン・ケネディの意向が働いたのだと思っている。

 ボバ・フェットというキャラクターを最初に生み出したのは他ならぬジョージ・ルーカスなわけだが、ルーカスは、このキャラクターにかなり強い思い入れを持っているからだ。

 というのも、ボバ・フェットがスピンオフの主人公として注目されたのは、実は今回が初めてではない。ジョージ・ルーカスは以前から、ボバ・フェットや賞金稼ぎに関するテレビドラマを製作したがっていたという事実がある。

  ジョージ・ルーカスが、ルーカスフィルムを売却する前、ルーカスはシスの復讐』と『新たなる希望』の間の時代を背景にした、テレビドラマシリーズを考えていた。途中で製作費の捻出が難しくなって製作が中断してしまったこのテレビドラマシリーズはスター・ウォーズアンダーワールドと呼ばれていた。これはご存知の方も多いかもしれない。 

 構想は2005年に発表され、ABCと放映権を交渉していたこの幻のテレビドラマシリーズは、その名前の通り、『シスの復讐』と『新たなる希望』の間の20年間の帝国の勃興時代、惑星コルサントを中心にした、銀河世界のアンダーワールド、暗黒街、地下世界、犯罪世界を舞台に、賞金稼ぎ、ギャング、密輸業者などの様々なキャラクターが登場する物語である。

 さらに、このテレビドラマ企画と連動して『スター・ウォーズ1313』というコンピュータ・ゲームの企画と開発も進められており、こちらのゲームは、プレイヤーが賞金稼ぎになって、コルサントの犯罪世界をプレイするロール・プレイング・ゲームだった。このゲームには、キャラクターとしてボバ・フェットが登場するプロットなどが考えられていた。

 

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引き継がれた構想

 つまり、ディズニーが今回製作を決定し、進めているジョン・ファヴローのテレビドラマ『ザ・マンダロリアン』だが、こうしてみると、実は、もともとは『シスの復讐』の後にルーカスがやりたかった新しいスター・ウォーズ・シリーズの事業展開としてのテレビドラマの構想を、ディズニーは引き継いで形にしているに過ぎないといえるのである。

 また、『シスの復讐』と『新たなる希望』の間を舞台に、賞金稼ぎ、ギャング、密輸業者が登場する犯罪世界を描くというルーカスの夢は、また別の形になっている。言うまでもない。ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリーがそれである。 

   もともと『スター・ウォーズアンダーワールド』で、ルーカスは、ハンとチューバッカとの出会い、そしてランド・カルリジアンがミレニアム・ファルコン号を失った経緯や、ボバ・フェットによるアクション・シーンを描きたいと考えていたのだ。また、コルサントの地下世界ではないが、惑星コレリアのそれは『ハン・ソロ』で描かれており、ルーカスが『スター・ウォーズアンダーワールド』で描きたかったことは実現しているといえる。

 だから、ルーカスは『ハン・ソロ』の撮影現場には足を運んだのである。つまり、彼は自分がもともと興味があった物語の映像化の現場には興味を示すのだ。さらに、『ハン・ソロ』の場合は、ルーカス自身、監督のロン・ハワードに自らアドバイスもしているくらいだ。当然ながら、ルーカスとロン・ハワードは『アメリカン・グラフィティ』以来の中であり、ハワードにとってルーカスは特別な存在であることも理由にあると思う。

 

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ハン・ソロ』の撮影現場を訪れたルーカス

   話が少しそれるが、『スター・ウォーズアンダーワールド』という未完成構想があったからこそ、スピンオフ作品は、ハン・ソロとボバ・フェットが最有力候補であったわけであり、ローグ・ワンは当初全く考えられてなかった。これは別の記事で以前書いた通りである(『スター・ウォーズ』はどこへ向かう?スピンオフ第3弾の製作休止の噂 - StarWalker’s diary)。

 これらのうち、ハン・ソロに関する物語は、スピンオフ映画として実現したわけだが、ボバ・フェットについてはスピンオフ映画でなく、『ザ・マンダロリアン』という形でテレビドラマとなったわけだ。

    この経緯については様々な理由が考えられるが、スピンオフ映画の興行収入が振るわなかったことで再検討した結果、ルーカスフィルム、つまりキャスリーン・ケネディが、もともとルーカスが構想していたテレビドラマという形で実現することにこだわり、さらにそこに親会社のディズニーがインターネット配信でスター・ウォーズをやりたいという両方の利害が一致した結果だろう。

 ちなみに、この結果、ディズニー/ルーカスフィルムにはおそらくボバ・フェットのスピンオフ映画の構想はすでにないだろう。興行収入的には『ハン・ソロ』で振るわなかった以上、ソロ以上に知名度の低い(ファンの人気度は別だが)ボバ・フェットの単体映画を製作して良い興行収入は見込めないのは明らかだ。

 ちょうどタイミングよく、キャスリーン・ケネディが「ボバ・フェット」映画の考えはなく「ザ・マンダロリアン」に注力するとの情報も入ってきたので紹介しておく(𝗘𝗪𝗲𝗯 on Twitter: "Kathleen Kennedy just confirmed to me Boba Fett movie is 100% dead, 100% focusing on THE MANDALORIAN #StarWars")。

 

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なぜ『ザ・マンダロリアン』なのか?

 では、なぜTVシリーズは『ボバ・フェット』でなく『ザ・マンダロリアン』なのか?ここまで読んできた人には疑問がわいたはずだ。つまり。ルーカスが思い入れが深いのは、あくまで「ボバ・フェット」であって、TVドラマはあくまで「ザ・マンダロリアンである。更に言えば、ジャンゴおよびボバ・フェットの親子は、マンダロリアンではない。彼らはマンダロリアン装甲を身につけた賞金稼ぎに過ぎないのだ。

 だが、これは説明がつく。『スター・ウォーズアンダーワールド』は『シスの復讐』と『新たなる希望』の間が舞台である。だが、エピソード7から9の新三部作を製作したディズニー/ルーカスフィルムは、アニメーションと実写ドラマの連続シリーズ物の2コンテンツはやりたいが、時代設定は過去の『シスの復讐』と『新たなる希望』の間ではなく、『ジェダイの帰還』から『フォースの覚醒』の間にしたかったのだろう。

 なぜなら、その方が新三部作のキャラクターを活かせるし、新しいキャラクターを生み出す余地もあるし、自由に話を展開できるからだ。何よりシリーズは視聴率だけでなく、キャラクターグッズの販売利益も重要だ。そのためにも時代背景の設定は新三部作につながるものにする方が都合が良い。

 したがって、ディズニー/ルーカスフィルムは、テレビドラマシリーズをやるのは良いが、時代背景を『ジェダイの帰還』から『フォースの覚醒』までと設定して、ジャンゴ・フェット、ボバ・フェットに次ぐ次世代のキャラクターを新しく生み出し、彼らの次の世代の物語としてテレビドラマを進めたいのである。

    これは『クローン・ウォーズ』を中止したが、アニメーションを製作することはルーカスの構想から引き継ぎたいために、新たに『スター・ウォーズレジスタンス』を作ったこと同じだ。ただし、結局、ディズニーは『クローン・ウォーズ』を再開して新シリーズを製作することにしたわけなのだが。

 さて、公表されているジョン・ファヴローによる『ザ・マンダロリアン』の梗概は以下だ。

After the stories of Jango and Boba Fett, another warrior emerges in the Star Wars universe. The Mandalorian is set after the fall of the Empire and before the emergence of the First Order. We follow the travails of a lone gunfighter in the outer reaches of the galaxy far from the authority of the New Republic.

ジャンゴ、ボバ・フェットの物語の後、スター・ウォーズ世界において新しい戦士が現れた。『ザ・マンダロリアン』の舞台は、帝国の崩壊とファースト・オーダーの勃興の間の時代。新共和国の支配の及ばない銀河の端で生きる一人の孤独なガンマンの苦難を描く。

 ルーカスの思い入れのあるキャラクター、かつファンの人気も高いボバ・フェットは『ジェダイの帰還』でサルラックに丸呑みされてしまっている。つまり、時代設定を『ジェダイの帰還』以降にするなら、ディズニー/ルーカスフィルムとしては、ボバ・フェットを生き返らせた物語を作るしかない。

   であれば、あくまで、ボバ・フェット人気や、ルーカスの意向を組んだ形で、ボバ・フェットに次ぐ次世代の物語として似たような新しいキャラクターを主人公にし『ジェダイの帰還』から『フォースの覚醒』の間を描くテレビドラマを製作するのが最も互いにとって良い形と考えたのだろう。 

 だが、この中には、ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズアンダーワールド』『スター・ウォーズ1313』で構想し実現できなかった要素が含まれている。これを読む限り、『ザ・マンダロリアン』は、ボバ・フェットを中心としたエピソードは考えられてはないようだが、一方で、ボバ・フェットの物語も一部あるような噂(Jon Favreau’s live-action Star Wars show will be called The Mandalorian - The Verge)もあり、それこそ、ルーカスがもともとやりたかったことにある程度近いことが実現するのがこのテレビドラマシリーズになるのだ。 

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『ザ・マンダロリアン』の撮影現場を訪れたジョージ・ルーカス

 

まとめ

 以上のように、原作者であるジョージ・ルーカスからすると、ボバ・フェットというキャラクター、さらに実写テレビドラマに対しては、エピソード7から9の新三部作の映画以上に思い入れが強いことは容易に想像がつく。ルーカスがこれまで全くと言っていいほど興味を示さずに、新三部作の撮影現場にも姿を見せなかった彼だが、ジョン・ファヴローのテレビドラマの撮影現場には訪問したという理由はここにあると思うのである。

   さて、ここからは私の想像だが、ルーカスは『ハン・ソロ』では撮影現場に足を運んだだけでなく、ロン・ハワードにノリノリで助言すらした。

    私は、今回はルーカスは現場には行ったものの、撮影やストーリーにはさほどアドバイスなどはしなかったのではと想像する。ひょっとすると「よくやってるね。素晴らしいセットだね」くらいのコメントをしたくらいなのではと思う。

    というのも、たしかに『ザ・マンダロリアン』は彼の描きたかったものに近いものが描かれるかもしれないが、『ハン・ソロ』はそれこそ先に書いたようにルーカスがもともと描きたかったものそのものだったのに対して、『ザ・マンダロリアン』はそれに近いというだけだ。『ザ・マンダロリアン』製作陣は、ルーカスに対して、「どうです?あなたがやりたかったことを一生懸命やってますよ!」とアピールしたかもしれないが、ルーカスは『ハン・ソロ』とは彼の中に温度差があるように思うのだ。

    今回、ジョン・ファヴローがアップした写真を見ても、わざわざ現場にまで足を運んだルーカスなのに、彼の顔から笑みが見られないのは、ひょっとしたら、そんな複雑な心境だからかもしれないと勝手に彼の心中を想像してしまった次第である。