StarWalker’s diary

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飛べ!フェニックス(1965年・アメリカ)

 1965年のアメリカ映画「飛べ!フェニックス」です。主演はジェームズ・スチュアートリチャード・アッテンボローロバート・アルドリッチ監督の代表作です。砂漠に不時着して壊れた飛行機を、改造して脱出を図ろうとする航空映画好きは必見の航空冒険映画です。

 

あらすじ

  サハラ砂漠を飛行中の双発機。飛行機の操縦士はベテランのタウンズ機長(ジェームズ・ステュアート)、航海士は相棒のモラン(リチャード・アッテンボロー)。だが突如発生した砂嵐によって砂漠への不時着を余儀なくされてしまう。通常航路から外れた砂漠の真ん中で、残りの水も僅か、救援も期待できない中、乗員乗客のサバイバルが始まる。乗り合わせていたドイツ人の航空設計者のドーフマン(ハーディ・クリューガー)は、残った機体を改造した飛行機を作ることで、砂漠から脱出するという案をタウンズ機長に持ちかける・・・

 

見どころ解説

傑作航空冒険小説のロバート・アルドリッチ監督による映画化

  本作品は原作があります。エルストン・トレヴァーの書いた同名の冒険小説です。エルストン・トレヴァーは、アダム・ホール名義でスパイ小説「英国情報部員クィラー」シリーズを書いた人物です。1960年代の中頃というのはスパイものが大ブームした時代で、有名なイアン・フレミングの007シリーズも、1962年に第一作の「007は殺しの番号(007 ドクター・ノオ」が公開されています。クィラーシリーズは、007のような異国情緒に溢れた華やかで派手な冒険活劇ものと異なって、どちらかというと主人公が敵との緊張感のある駆け引きをしながら窮地を脱していくというシリアスな知的なスパイものです。ちなみにこのクィラーシリーズで、一番有名なものは1965年に書かれた『不死鳥を倒せ』で、これは、あのジョージ・シーガルアレック・ギネスが主演、マイケル・アンダーソン監督で1966年に『さらばベルリンの灯』という映画にもなっています。

  本作の監督は、あの名匠ロバート・アルドリッチ監督です。この人は1960年代、1970年代を代表する監督の一人で、『ベラクルス』『ソドムとゴモラ『何がジェーンに起ったか?』『北国の帝王』『合衆国最後の日』といった、常に男と男の戦い、どんな状況でも最後まであきらめずに戦う、そういう男臭い映画を作っていた監督がロバート・アルドリッチ監督です。この『飛べ!フェニックス』も、そういう意味で実にロバート・アルドリッチ監督らしい作品です。 

無様な男たちの生死をかけたサバイバル 

 この映画が面白いところは、なんといっても乗客が、癖の強いかヘタレなおっさんばっかりなんですね。完璧なヒーローのような存在はいない。同じパニック映画でも、後の『ポセイドン・アドベンチャー』のスコット牧師のような人物は一人もいないです。主演こそジェームズ・ステュアートですが、さすがに1965年当時で57歳の彼も、ベテラン機長と言えどもそのピークを過ぎた感じは否めません。

  リチャード・アッテンボローもイギリスを代表する名優ですが、近年では『ジュラシック』でのリチャード・ハモンド博士を思い出す人も多いと思います。あとは、やはり『大脱走』で脱走計画を指揮していたイギリス人将校の捕虜役の印象が強い役者さんです。あとは、監督としても1982年の『ガンジー』ではアカデミー監督賞を受賞するなどしています。あと50年代、60年代は、何故か機関士パイロット、この映画のような航海士だったり、そういう脇役が多い人だったりします。 彼も二枚目というよりは、この映画の中では後頭部も少し寂しくなって少し残念な感じもしてしまう航海士といった印象です。

 有能だが癖が強くプライドの高いドイツ人の航空設計技師ドーフマン(ハーディ・クリューガー)。ハーディ・クリューガーは、戦争映画ではナチス将校なんかを多く演じていた人です。本作以外には『遠すぎた橋』『脱走4万キロ』『バリー・リンドン』などに出演しています。

 遭難した乗客の残りは、典型的な軍人のハリス大尉(ピーター・フィンチ)とその部下であるワトソン軍曹(ロナルド・フレイザー)。ハリス大尉は決して悪人ではなく、純粋な軍人であり規律と命令で生きるタイプの人間です。そのため部下のワトソン軍曹は自分に従って当然といった態度でいます。だが、ワトソン軍曹は上官に対する敬愛や信頼などはなく小心者、しかもアラブで知り合った踊り子にうつつを抜かしている。そして、レノー医師(クリスチャン・マルカン)、石油会社の会計士であるスタンディッシュ(ダン・デュリエ)、その石油会社の従業員たち:精神を病んでしまっているコッブ(アーネスト・ボーグナイン)、意地の悪く何かにつけて周りの人間を小馬鹿にするスコット人のクロウ(イアン・バネン)、ガブリエル(ガブリエル・ティンティ)、ペットの猿を連れているカルロス(アレックス・モントーヤ)、ベラミー(ジョージ・ケネディー)。

 これらの乗客が砂漠で立往生してしまうのですが、冒頭から不時着の衝撃で二人が死亡一人が負傷してしまうという厳しい状況から始まります。タウンズ機長は被害者を出したことでショックを受け自責の念にかられます。タウンズ機長はベテランであるがゆえに、事故を招いた自分が許せない。さらに彼のベテランとしての経験がドーフマンのアイデアをなかなか受け付けないでいます。そして彼の機長としてプライドが、ドーフマンの独善的なやり方を許せないでいます。一方、ドーフマンは自分の設計技師としての腕と、改造計画の成功に自信を持っています。ドーフマンのアイデアに賛成しているモランは、なんとか二人の間が壊滅的にならないように、タウンズ機長を支えます。

 アメリカ人のタウンズ機長、イギリス人であるモラン航海士、そしてドイツ人のドーフマンを中心に、仲間たちが何かあればばらばらになりそうな緊迫した人間関係の中、ドーフマンのしめした飛行機改造計画を徐々に進めていきます。

  しかも、物語が進んでいくにつれ、いい奴は不幸に巻き込まれて亡くなっていきます。その中でもともまく最後まで生き抜くために男たちが汗を流すというのが、この映画です。 脱出用の飛行機が完成し、いよいよエンジンをテストする・・エンジンが無事に始動し、生き残った者たちが歓喜の声をあげて喜び合う。汗と砂漠の砂、油と誇りにまみれた男たちの喜ぶ姿はじつに無様ですが、美しいとても感動的なシーンです。 

まとめ

 ロバート・アルドリッチ監督の代表作、1965年の『飛べ!フェニックス』は、映画もそうですがその原作小説も傑作との評価が高く、2004年にはジョン・ムーア監督によりリメイク映画『フライト・オブ・フェニックス』が製作されています。乗客の面々は今の時代を反映して変わっていますが、ストーリーの大筋は原作、オリジナル通りです。とういうわけで、生死をかけた男のサバイバル映画、ロバート・アルドリッチ監督の代表作『飛べ!フェニックス』おススメです。

 

基本情報:『飛べ!フェニックス

[作品データ]
原題: The Flight of the Phoenix
製作年:1965年
製作国:アメリカ
配給: 20世紀フォックス映画
上映時間:142分

[スタッフ]
監督:ロバート・アルドリッチ
脚本:ルーカス・ヘラー
製作:ロバート・アルドリッチ

[キャスト]
ジェームズ・ステュアート
リチャード・アッテンボロー
ハーディ・クリューガー
アーネスト・ボーグナイン
ピーター・フィンチ
イアン・バネン
クリスチャン・マルカン
ガブリエル・ティンティ
ダン・デュリエ
ロナルド・フレイザー
ジョージ・ケネディ
アレックス・モントーヤ

 

 

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