StarWalker’s diary

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『スター・ウォーズ』はどこへ向かう?コリン・トレヴォロウ監督の解任のなぜを振り返る

   スター・ウォーズ新三部作は、エピソード9の撮影が今月から開始しました。さて、ご存知の通り、エピソード9は、当初コリン・トレヴォロウが監督することになっていましたが、昨年夏の解任によりJ・J・エイブラムスが監督し、彼とクリス・テリオが脚本を書くことになりました。トレヴォロウ解任の経緯などは、断片的な情報がインターネットでも散在していると思いますが、時系列にまとめたものがなかったので、今更ながらですが、今一度コリン・トレヴォロウ監督の解任にいたるまでの流れを整理しました。

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監督に就任

     エピソード9の脚本は、J・J・エイブラムス監督により2018年2月頃にようやく完成を見たが、かなり紆余曲折があった。今回、ようやく最終稿となったエイブラムスの脚本は4度目の書き直しのものだ。

    エピソード9については、2015年8月に監督の発表があり、コリン・トレヴォロウと、彼の脚本のパートナーであるデレク・コノリーは、それ以降、物語の構想を考えていた。これは2015年末に『フォースの覚醒』が公開された時にも、まだ具体的な物語は固まっておらず、2016年初めの監督のコメントで「私が語りたい物語について考えた書き物やメモがたくさんある」と言っていることから伺えるように、2015年末では、まだまだ物語の最後はまだ決まってなかった。

    この時期には、キャスリーン・ケネディも、まだエピソード9については何も決まっていないことを言っている。当然ながら、この時点ではエピソード8の物語も決まっておらず、エピソード9も当然まだ物語の展開は決まっていなかったはずだ。 だが、このように『フォースの覚醒』がまだまだ製作中だったこの2015年の後半に、すでに両監督は、エピソード8、そしてエピソード9の物語を考えていた。

コリンの考えたエピソード9

ルークとレイアを描きたかったトレヴォロウ

  さて、コリンが持っていたアイデアの一部は彼のコメントから伺いすることが出来る。エピソード9については、2016年1月、まさしくライアン・ジョンソン監督の『最後のジェダイ』の脚本の執筆の最終段階が進んでいるころ、コリン・トレヴォロウ監督はレイの両親についてこう語っていた。これはレイの両親に関するインタビューで、16年1月7日にエンターテイメント・トゥナイトの取材に彼が語ったことである(EXCLUSIVE: 'Star Wars: Episode IX' Director Promises 'Deeply and Profoundly Satisfying' Answer to Rey and Luke | Entertainment Tonight)。

We’re going to make sure that that answer is deeply and profoundly satisfying. Rey is a character that is important in this universe, not just in the context of The Force Awakens but in the entire galaxy, and she deserves it.

答えは深く大いに満足するものにするよ。レイは重要なキャラクターだ。フォースの覚醒の中だけではなく、この世界、全銀河にとってね。そして、レイはそれに相応しい人だ。

So we’ll make sure that that answer is something that feels like it was—it’s something that happened a long time ago [in a galaxy] far, far away, we’re just telling you what happened.

 我々はその答えがまさしく答えだと感じられるように確かにすること。これは遠い昔、遥か彼方に起きたことなんだ。我々は何が起きたかを伝えるだけだ。

What's interesting is I'm not creating a host of new characters.I have a lot of characters that people really love that we're going to make sure are all honored. No one's going to be left behind.

私はたくさんの新しいキャラクターを作ったりはしない。人々が愛して止まないキャラクターは沢山いるし、皆んな誇られる者たちだ。誰かが重要でないということはないよ。

  また、エンターテイメント・トゥナイトの記者も書いているように、コリン・トレヴォロウ監督は、彼の映画(エピソード9)ではマーク・ハミルそして、キャリー・フィッシャーの役割をもっと大きいものにしたいと考えていたことが伺える(EXCLUSIVE: 'Star Wars: Episode IX' Director Promises 'Deeply and Profoundly Satisfying' Answer to Rey and Luke | Entertainment Tonight)。

They are icons, but they're also people that have suffered tremendous loss and challenge over the course of all these films

彼らは象徴的な人達だ、だけど、彼らはまた同時に三作にわたって途轍もなく大きな損失と挑戦に苦しむ人達でもある。

 このコメントを素直に聞くと、まだまだこの時点(2016年1月)において、コリンはルークやレイアに関してはエピソード9でも活躍させることを前提に物語を考えていたように感じる。  

コリンが描きたかったルーク

   コリンのエピソード9構想を読み解くもう一つの手がかりは、ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルのインタビューコメントだ。

   ちなみに、コリン・トレヴォロウは、自身のエピソード9の物語を、ジョージ・ルーカスマーク・ハミルに話をしたことを明らかにしているので、少なくともこの二人はコリンのエピソード9を知っていたはずだ。

 マーク・ハミルがコリン・トレヴォロウと話しをしたときのインタビューを聞くと、彼らはルークの扱いについて双方同じ認識を共有していたことがわかる。この発言は、『最後のジェダイ』におけるルークの死に納得がいかないファンの間でとくに注目され、ライアン・ジョンソン監督の力量不足とビジョンの欠如を指摘する材料に使われた感があるが、ここではそのことは置いておいて、この発言について分析してみたい。

I had discussions with Colin. I was very excited because we were on the same page in terms of where we wanted to go and how we wanted to see Luke in a way that we never seen him. Even in this current version. But I don't know what went on. I don't want to know because there is no upside to that story.

コリンと話をして、僕は非常にワクワクしていました。なぜなら、僕たちは我々が向かおうとしている方向性が、これまで見たことのないルークを見たいという点で同じ意見を持っていたからです。でも、何が起きたのかはわかりません。

 内容からして、コリン・トレヴォロウは、エピソード9でルークとレイアを、ライアンとは違った形で描くことを考えていたことは間違いない。 

 2016年1月はじめの時点では、コリン・トレヴォロウはまだマーク・ハミルキャリー・フィッシャーと話をしていなかったEXCLUSIVE: 'Star Wars: Episode IX' Director Promises 'Deeply and Profoundly Satisfying' Answer to Rey and Luke | Entertainment Tonight)ようだが、マーク・ハミルは『最後のジェダイ』の撮影のため、16年3月中旬はクロアチア、5月はアイルランドにいて撮影に入っており、その一方でコリン・トレヴォロウは2016年夏頃までは『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』のポストプロダクションや『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のために脚本を完成させるため仕事をしていたはずなので、彼は『スター・ウォーズ』よりも優先すべき仕事があり、エピソード9の脚本に取り組めたのは2016年の後半だろうと思われる。

   おそらく、コリンとマークは2016年の後半あるいは年末に近い時期に直接会う機会があり、エピソード9について彼らなりの考えを交えたのだろう。

   そして、この時、マーク・ハミルは、ライアン・ジョンソン監督のルークの描き方について異を唱えたはずで、おそらくコリン・トレヴォロウもこれに同調したに違いない。彼らは同じ考えを持っていたとマーク・ハミルが言っているのだから。

 2016年8月30日にマーク・ハミルは、自身のツイッターで、ルークがエピソード9で戻ってくるようなことを仄めかすツイートをしていた。これも当時、ファンの間でルークはエピソード8で死なずエピソード9にも登場することを期待する声があがったが、マーク・ハミル自身はエピソード8でルークの死が描かれることを知っていたわけだから、このツイートは、ルークが生きてエピソード9で登場することを示唆したものではない。

   いずれにせよ、コリン・トレヴォロウが、ジョージ・ルーカスマーク・ハミルにわざわざ自身の物語について話をしたという以上、彼はエピソード9でもルーク・スカイウォーカーが何かしらの形で活躍する物語を考えていたことは間違いない。

 詳細は不明だが、二人が話したのが2016年1月以降で、『最後のジェダイ』の脚本が完成していて、すでにルークの死が物語上確定している以上、マークとコリンが共有していたという考えの中身が「ルークが生きたままエピソード9で活躍する」ことではない可能性もある。もしかしたら、ルーク・スカイウォーカーはエピソード8で死を迎えるが、その先にまだルークが何かしら「我々が見たことのない」形で活躍することに関してコリンは彼なりの考えを持っていた可能性もある。

 

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脚本の完成とキャリーの死

脚本の完成

 この2016年の8月までは少なくとも、コリンはコリンで2016年の1月時点で持っていた当初のアイデアを膨らましながらエピソード9の脚本を練っていたに違いない。 さらに、『最後のジェダイ』を撮影中だった2016年2月から7月中旬の間では、ライアン・ジョンソン監督に依頼して、エピソード9のためのショットを撮影してもらっていたりする(Star Wars 9: Johnson Shot Part For Trevorrow | ScreenRant)。

 そして、キャスリーン・ケネディは、コリン・トレヴォロウ監督が、2016年12月に脚本を提出していることを、ヴァニティ・フェアのデヴィット・カンプとのインタビューで明らかにしている(Confirmed: Lucasfilm to Make Final Decision on the 2020 Star Wars Standalone Movie in June - Star Wars News Net | Star Wars News Net)。したがって、少なくともこの時までは、コリン・トレヴォロウ監督が解任される要素はなく、すべては順調に進んでいたように思える。

キャリー・フィッシャーの死

    だが、悲しいことにキャリー・フィッシャーが2016年末に亡くなり、エピソード9は脚本の変更を余儀なくされたトレヴォロウ監督は当初、エピソード9をレイアが中心の話にしようとしていたことは色々なコメントからわかる。

 そして、まさしくこの時から、コリン・トレヴォロウ監督とキャスリーン・ケネディの間に、様々な意見の相違が出てきたと思われるのだ。

 キャスリーン・ケネディは、ちょうど『ローグ・ワン』の公開を直前に控えたこの時期、新三部作以降のスター・ウォーズ構想について社内で協議が進んでいることを話している。この時は、三部作映画をエピソード9で止めて、単発のスピンオフ映画のみを作っていくことも当然考えられるとして話をしていた。

 そして、より具体的な話を2017年1月に進めるとして、ここでは三部作の監督たち、脚本家たちをまじえて話をする可能性をほのめかしていたStar Wars: Secret plans for new movies discussed after Rogue One | EW.com)。

 この1月の御前会議は、スピンオフ第3弾をどうするかというのが中心的な話題になるはずだったと思われるが、キャリー・フィッシャーの死によって、すでに公開を控えていたエピソード8と、エピソード9の物語をどうするのか、というのが最優先の議題になってしまったはずだ。

 すでに昨年12月にコリン・トレヴォロウは脚本を提出していたのにも関わらず、これにより、ほとんど物語を変更する必要が生じたことは言うまでもないだろう。

    ちなみに、これにより当初この1月に決定するはずだったスプンオフ第3弾の内容は、レイアどうする問題の解決に目処がつく4月まで検討保留となってしまったことは以前こちら(『スター・ウォーズ』はどこへ向かう?スピンオフ第3弾の行方と製作休止の噂~ - StarWalker’s diary)に書いた通りである。

脚本の書き直し

   実際に、1月10日の週に、コリン・トレヴォロウはロサンジェルスに飛んでキャスリーン・ケネディと打ち合わせを持つ予定だとハリウッド・レポーターが報じていた。

    そして、トレヴォロウは2017年の1月から4月にかけて脚本の書き直しをして、この間にキャスリーン・ケネディとレイアについてどのようにするかを議論したのだと思われるというのはその後の流れをみれば明かだ。

 まず、2017年1月に、レイアについてはCGで復活させることが考えられたことがわかるが、結果的にこの案は没となった(Lucasfilm: Carrie Fisher won't be digitally recreated - BBC News)。そして、次にキャスリーン・ケネディは、2017年4月14日に「キャリー・フィッシャーはエピソード9に出ない」ことをABCのグッドモーニング・アメリカの中のインタビューで明かしている(https://www.usatoday.com/story/life/movies/2017/04/14/kathleen-kennedy-confirms-carrie-fisher-not-in-star-wars-episode-ix/100486934/)し、エンターテイメント・ウィークリーのインタビューにも「ほとんど最初から書き直し」と言っていた(Star Wars: Carrie Fisher won't appear in Episode IX after her death | EW.com)。

 この後、4月から8月にかけては、トレヴォロウはおそらくレイアに焦点をあてた物語を考えなおしエピソード9の脚本をほぼいちから書き直していたに違いない。

 6月になり、トレヴォロウ監督は、同月に公開を控えた『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』(コリン・トレヴォロウ監督/2017年6月公開)のプロモーションのインタビューで以下のように語っていて、この時はまだ書き直した物語に意欲を見せていた。

The process of Star Wars began way back in August of 2015 when I looked at what J.J. and Rian had done and I’m very fortunate that I’m surrounded by some really, really brilliant producers and brilliant creative minds - Kiri Hart and the Lucasfilm story group and my producer [Michelle] Rejwan and Kathy Kennedy and also J.J. and Rian, Larry Kasdan. I mean, these are the best minds available and everybody’s engaged in making sure this is the most satisfying and emotionally resonant conclusion that we can possibly deliver.

スター・ウォーズは2015年の8月にJ・Jとライアンの仕事を見せてもらったときから始まったよ。とても有能なプロデューサーそして創造的な頭脳に囲まれてとても幸運なことさ。キリ・ハート、そしてルーカスフィルム・ストーリー・グループ、レワン、キャシー・ケネディ、そしてJ・J、ライアン、ラリー・カスダン・・彼らは最高の人たちだし、みんな僕たちが提供できる限り最高に満足のいく心に響くものにしようとしている人たちだよ。

 

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解任へ

 キャスリーン・ケネディとの対立?

 新三部作の製作にあたっては、前のエピソードの監督と続編のエピソードの監督は一緒に仕事をしていくスタイルをとり、物語のスムーズな移行を目指そうとしていたのがルーカスフィルムのプロデューサーであるキャスリーン・ケネディの構想だった。

 これは、キャサリーン・ケネディ自身がそう言っている。そして、見落としてならないのは、ライアンとトレヴォロウの引き継ぎも同じスタイルでやろうとしていた点だ。

 当初の予定では、エピソード9の原案はライアンが書く構想だったのである。これはライアン・ジョンソンがエピソード8の監督に決定し発表された2014年の7月に、同時にエピソード9の原案を書くことも同時に発表されている('Star Wars: Episode VIII' Sets Director | Hollywood Reporter)。

  『フォースの覚醒』公開直前の2015年12月7日には、キャサリーン・ケネディはこの三部作を作るにあたって、前の監督は自分の作品を作って、次作への橋渡しを次エピソードの原案を作る形で行い、次監督は前の監督と相談しながら物語を作るスタイルとして、エピソード8と9も同様な形になることを語っている(Star Wars: Finn, Rey’s Backstory Will Stay Secret Until Episode 8 or 9 – Variety)。

  だが、先も述べたように2017年4月にライアン・ジョンソン監督が自らのツイッターで「エピソード9の脚本には関わったことはない」ことを明らかにしており、この時点で、キャスリーン・ケネディが語っていたスタイル、つまり監督は自分の作品を作って、次作への橋渡しを次エピソードの原案を作る形で行い、次監督は前の監督と相談しながら物語を作るスタイルは、成立していないように見える。

 つまり、2017年4月時点まで、コリン・トレヴォロウとデレク・コノリーは自分たちだけでエピソード9の脚本を書き進めていたと思われ、少なくとも、J・Jとライアン・ジョンソンの時のような緊密なやり取りは、ライアンとコリンの間には見られないように思える。

 さらに言えば、これはルーカスフィルム側(キャスリーン・ケネディ)とコリンとの間の関係についてもそうだ。J・Jやライアン・ジョンソンキャスリーン・ケネディと良好な関係を維持しながら、映画製作を進めていけたのとはだいぶ様子が異なるように見える。

 どうやら、コリン・トレヴォロウの自信家な部分が、キャスリーン・ケネディと衝突した原因になったようで、これは関係者筋の話としてヴァルチャー紙が伝えていることが詳しい(Why was Colin Trevorrow Fired from Star Wars?)。

“During the making of Jurassic World, he focused a great deal of his creative energies on asserting his opinion,” the executive explains. “But because he had been personally hired by Spielberg, nobody could say, ‘You’re fired.’ Once that film went through the roof and he chose to do Henry, [Trevorrow] was unbearable. He had an egotistical point of view— and he was always asserting that.”

ジュラシック・ワールド』の製作中、彼は自分の意見を通すことに相当なエネルギーを使っていた。でも、彼はスピルバーグに個人的に雇われていたから、誰も「首だ!」とは言えなかった。(『ジュラシック・ワールド』が)大成功して『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』をやることになったときは、耐えられないほどだった。彼は傲慢な意見を持っていて、それを常に主張するんだ。  

    先の6月のコリンのコメントを見ると、一見、ルーカスフィルム内部で互いに協調するような動きに対して、コリンが意欲を見せているように見れるが、逆に考えると、もはやコリン・トレヴォロウ一人だけではエピソード9は万事うまくいく状況ではなく、おそらくコリン・トレヴォロウは、ルーカスフィルム・ストーリー・グループやキャスリーン・ケネディの意向を伺いながら、なんとか自分の描きたかったエピソード9を脚本としてまとめようとしていたに違いない。ただし、すでにこの頃、ルーカスフィルム側とコリン・トレヴォロウ側で、はっきりと両者の関係が修復できないものになっていった可能性が高いようだ。 

『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』の失敗

 それでも7月までにコリン・トレヴォロウはエピソード9の脚本の書き直しを何とか進めた。だが、どうやら彼の書き直した脚本の結果は、あまりキャスリーン・ケネディは好まない出来だったようだ。

 2017年8月には、ヴァラエティー紙で、イギリスの脚本家のジャック・スローンが、エピソード9の脚本の書き直しを始めたことが報じられており、少なくとも8月中旬あたりからは、すでに解任の方針が決まりつつあったということだろう。9月中旬には、結局、J・J・エイブラムスとクリス・テリオが脚本を書くことが決定し、ジャック・スローンは降ろされてしまった。  

 だが、それでもコリン・トレヴォロウは、もう一度、自身で脚本を書き直しを希望し、キャスリーン・ケネディにお願いしたようだ(More Details on Colin Trevorrow Star Wars Episode 9 Firing)が、叶わず、結果、2017年9月5日にトレヴォロウ解任が発表される。トレヴォロウの解任の理由は「目指す方向性の違い」ということだ。

 だが、ルーカスフィルム側はジャック・スローンに脚本を依頼した時点で、すでにコリン・トレヴォロウを解任させる方向を考えていたと思われる。というのも、6月にはコリン・トレヴォロウ監督の手掛けた『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』が公開され、その評価の芳しくなかったことが、キャスリーン・ケネディがコリン解任を決めた決定打になったようだ(Why was Colin Trevorrow Fired from Star Wars?)。

When the reviews for Book of Henry came out, there was immediately conjecture that Kathy was going to dump him because they weren’t thrilled with working with him anyway.

『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』の批評が出たとき、すぐにキャシー(キャスリーン・ケネディ)が彼を見限るのではないかという憶測がでました。ルーカスフィルム側は、どちみち彼と一緒に仕事を進めることになんの興奮も抱いていなかったですから。 

    私は、この『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』の不出来は、ルーカスフィルム側にコリン・トレヴォロウを解任するにあたり表向きの理由を与える材料として使われてしまったように感じる。もともと両者の関係がうまくいっていなかった状況に、ルーカスフィルム側が何か理由をつけてもっともらしく彼を解任するのには、彼の作品に対する評価を持ち出すのが解雇する側としては容易だからだ。

 

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まとめ

 コリン・トレヴォロウ監督はスター・ウォーズ/エピソード9を監督すること叶わず去ることになった。ライアン・ジョンソンが『最後のジェダイ』で、キャスリーン・ケネディの信頼を得て、ついには新しい三部作を手掛けることになったのと比較すると、天国と地獄の差が出来てしまった。『最後のジェダイ』はもはや評価は定まってしまったが、映画の成功不成功はどこ吹く風とばかり、ライアン・ジョンソンのキャリアを決めた意味では彼にとって大成功作と言える。

 そもそも、なぜエピソード9がコリン・トレヴォロウなのか?といえば、『ジュラシック・ワールド』の実績を買われたというのが一番の理由だ。エピソード9の監督がトレヴォロウとなることは2015年8月に発表されたが、その年の6月に公開された『ジュラシック・ワールド』の成功が多分に影響しているのは間違いない。

 興行的な成功もそうだが、『ジュラシック・ワールド』は、1993年のオリジナルの『ジュラシック・パーク』で描かれた家族と大人の成長物語という原作のテーマを見事に引き継いだ作品であり、コリン・トレヴォロウは巨匠スピルバーグに個人的に雇われて、この映画を成功させた。

    キャスリーン・ケネディは、まさしくこの点を『スター・ウォーズ』の物語を完結させるために必要なものと感じていたからこそ、長編監督作がその前にわずか2本というこの監督を大抜擢して、期待したのだろう。  

 エピソード7は新三部作始動の最初のきわめて重要な作品であり、フランチャイズを成功させるためにも失敗は許されない作品だった。そこでベテランでありスティーブン・スピルバーグ監督のお墨付きもあるJ・J・エイブラムス監督を抜擢したのだ。

 それに対して、エピソード8、9ではこれまのでスター・ウォーズではなく、J・J・エイブラムスが敷いた路線、キャラクターを引き継ぎながら、新しい作品を期待して、若く大作の経験の少ないが独特の作品づくりをするライアン・ジョンソン監督をエピソード8に、そして完結編であるエピソード9には経験は少ないものの、『ジュラシック・ワールド』というジュラシック・シリーズのリブート大作を成功させた経験のあるコリン・トレヴォロウを思い切って抜擢した。

 コリン・トレヴォロウは2016年末に脚本を一度はまとめ上げており、キャリー・フィッシャーの死が無ければ、それが実現した可能性は十分に高かっただけに、彼にとって非常に不運な結果になってしまった。

 コリン・トレヴォロウはルークとレイアに焦点を当てた物語を考えていたが、『最後のジェダイ』によってルークの運命は決定され、さらにキャリー・フィッシャーの死とその後の物語の書き直しの中で、彼が最初にやりたかったビジョンが描けなくなってしまったに違いない。

   彼が描いた物語は見ることが叶わなくなってしまったが、エピソード9が無事公開された暁には、コリンの描いた物語に関しても情報が明らかになることを期待したいと思う。