StarWalker’s diary

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の構成を時間分析で考察する

 1977年に公開され映画史上に輝くシリーズの記念すべき第一作『スター・ウォーズ/新たなる希望』。前回の記事(『スター・ウォーズ/新たなる希望』の構成を時間分析で考察する - StarWalker’s diary)でこの映画の時間分析から、旧三部作を通して語られる主人公の目的と葛藤、そして解決が理路整然と整理されていた、その意味で非常にクラシック(古典的で本格的)な三部作構成であったことを書きました。では、新三部作はどうなっているのだろうか?という視点で、類似の考察を新三部作『フォースの覚醒』で行なってみます。

《『フォースの覚醒』のネタバレ含む。未鑑賞の方は読まないでくださいね》  

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はじめに

 1977年に公開された『スター・ウォーズ』は、アカデミー賞編集賞を受賞した作品だが、前回の記事でスター・ウォーズ』の時間分析として、その物語の時間構成を分析、考察してみた。 

   旧三部作では、『新たなる希望』で示された、主人公ルークの「亡き父のようなジェダイになる」という行動の目的に対する対立と解決がセオリー通りに描かれた三幕構成に仕上がっている。

 すなわち、『新たなる希望』で「亡き父のようなジェダイになる」と宣言したルークは、『帝国の逆襲』の中で、その父がジェダイを殺した悪のシス卿であったという主人公の目的に対する最大の障壁にぶち当たる。最終幕である『ジェダイの帰還』で、ルークは、パルパティーン皇帝に父のように悪に転向するよう誘惑されるわけだが「僕はジェダイだ。かつて父がそうであったように」と宣言し、ルークの物語は完結する。

    これは少し余談だが、実は『ジェダイの帰還』におけるルークの話はここで終わっている。エピソード6の残りは彼の父であるアナキンの話であって、ルークの話ではない。これがまたスター・ウォーズが面白いところなわけだが、ここでは話題がそれるので先に進む。

 新三部作における主人公レイについてどのように考えればよいだろうか? 

『フォースの覚醒』の時間分析

  『フォースの覚醒』の時間分析をしてみる。『フォースの覚醒』は135分の上映時間だが、この135分のうち『フォースの覚醒』はエンドクレジットが比較的長く10分あるため、実際に物語が進行する127分を以前こちら(『スター・ウォーズ/新たなる希望』の構成を時間分析で考察する - StarWalker’s diary)でやってように四部構成で区切って考えると以下のようになる。

起(~開始30分まで)

 ジャクーでゴミ漁りをしていたレイとフィンが出会う。レジスタンスのメンバだと名乗るフィンに興味を示すレイだが、重要なのは、ここで初めてレイがルーク・スカイウォーカーの名前を聞くことだ。レイが伝説だと信じていたルークの存在を実在する人物として認識させられる場面だが、ここがちょうど開始30分となる。つまり、レイとルーク・スカイウォーカーという人物の出会いが描かれるここまでが四部構成の「起」にあたる。

    さらにこの中は3つの物語から成立している。まず最初の10分ではカイロ・レンとファースト・オーダーのジャクーへの襲撃が描かれる(~00:09:30)。次の10分では、レイの登場、ポーの尋問、レイとBB-8の出会いまでが描かれる(~00:19:18)。そして、最後の10分で、フィンがポーを救出、ジャクーに着地したフィンとレイの出会い(~00:29:46)となる。

承(~開始60分まで)

 これ以降が「承」となる。フィンとBBー8と出会ったレイは、ファースト・オーダーの戦いに巻き込まれていく。この起承の切り替わりが見事で、物語開始30分後に、レイがフィンからルークの地図の話を聞いた直後に、異変を告げるBBー8の音声が入り、ファースト・オーダーの兵士を見つける。

 そこから映画で最初に盛り上がる部分、すなわち、レイがミレニアム・ファルコン号を操縦してジャクーから飛び立ち、ファースト・オーダーのTIE戦闘機とのチェイスが展開する。この一連の流れで一気に物語が動き出し、観客を引き込む展開が素晴らしい。

   ジャクーから飛び出し、宇宙空間に出てレイとフィンが互いに自己紹介する。ここでジャクーに戻るというレイとフィンが口論するが、その後、ハンとチューバッカが登場。ハンとチューバッカがファルコン号に乗り込み、ハンの台詞(「チューイ、我が家だぞ」)が登場するのが開始40分後(00:40:26)という構成の見事さがわかる。

 次の10分でハン達とグアヴィアン・デスギャング、カンジクラブらやラスター騒動があろ、ハンとレイが離れ技でみごとにラスターを振り切って超空間へ離脱する。画面が切り替わり、スノークがカイロ・レンに、フォースが覚醒したことを告げ、ドロイドがハンと一緒にいることを告げ、観客にカイロ・レンの正体がわかるが、これはハンの登場から10分後にあたる(00:50:48)。

 承の最後の10分では、ハンからルーク・スカイウォーカーの話とフォースか実在することを知るレイ、これがルークとの邂逅の2回目になり、起の流れをついで話が発展する。そして、惑星タコダナのマズの城へやってくるレイたち。

 一方で、カイロ・レンは祖父であるダース・ヴェイダーに救いを求める。ヴェイダーの朽ちた仮面が登場するのが物語開始およそ1時間後(00:59:35)。画面が切り替わり、スカイウォーカーの地図の存在に驚くマズの場面に切り替わる。   

転(~開始95分まで)

 これ以降が、物語の後半「転」の展開にはいっていく。フィンがレジスタンスでなく、逃亡を考えていることを知ったレイ、フィンと別れることになる。孤独だったレイにようやくできた友人フィンだったが、友人を突如失うことになるという物語の転換が描かれる。

 そして、その直後、レイはルークのライトセーバーに出会う場面が、開始ちょうど63分。全体の映画の上映時間127分を考えると、ここがちょうど真ん中の折り返しになる。レイが触ったライトセーバーによるフォース・ビジョンを見るが、これは、ルーク・スカイウォーカーとの3回目の邂逅といえる。ここで、マズ・カナタから「セイバーをとりなさい」と言われたレイが「あれには二度と触らない」と言ってマズの城から出て、森に逃げ出す。

 その後、画面がワイプで切り替わり、スターキラー基地でのハックス将軍の演説シーンと武器の発射シーンとなる。共和国の星系が破壊されるのが開始70分後(~01:10:35)となっていて、レイの友人との別れからレジスタンスが一転して危機に陥るという物語の転換がこの映画開始1時間から1時間10分の間につまっているという構成も教科書通り見事といえる。

 ファースト・オーダーが惑星タコダナに襲来し、マズがライトセーバーをフィンに渡す、ファースト・オーダーがマズの城を攻撃、そこにレジスタンスが救援にかけつける。惑星タコダナでの戦闘、レイとカイロ・レンとの対決、カイロ・レンがレイを連れ去ると目の離せない展開が続く。そして、レジスタンスの将軍、レイアが登場するのが物語開始80分後でハンと再会する(~1:19:45)。ここの戦闘シーンもほぼ10分で区切られている見事さ。ちなみにレジスタンスが救援にくるのがさらにちょうどその真ん中(1:15:26)である。

 スターキラー基地でのカイロのレイへの尋問があり、惑星ディカーの秘密基地ではレジスタンスのメンバーがスターキラー基地への攻撃を議論する。カイロ・レンはレイに対してマインド・リードで地図を手に入れようとするが、レイの抵抗にあう。レイの話を聞いたスノークが「レイを連れてこい」と命じる(01:29:54)まで、ここまでが「転」と考えてよいだろう。  

結(~ラスト)

 結はスターキラー基地での最終決戦になる。レイがフォースを覚醒させて、ストームトルーパーにフォースを使い、拘束具を外させる。レイが尋問部屋を脱出するのが開始90分後から91分後のところにあたる(01:29:55~)。

 映画上映時間の3/4、開始95分後の時点が、ちょうどスターキラー基地攻撃に向かうハンとレイアの別れのシーンにあたり(01:34:54)、続いてスターキラー基地にファルコン号でシールドを突破し、ハン、チューバッカ、フィンによるシールドの解除が描かれる(~01:39:23)。

 レイと基地内で再会したハンらは基地の破壊工作に向かう。カイロ・レンの後ろ姿を見たハン。親子の対面が描かれるが、悲しい結末をむかえることになり、ハンの死とそれを感じたレイアの哀しみにくれた表情が写る(~01:49:35)。

 次の10分間では、フィンがカイロ・レン倒され、レイがライトセーバーを掴み、カイロ・レンに立ち向かい、最初はカイロ・レンの圧倒されていたレイがフォースを覚醒させる(01:56:32)。そして、スターキラー基地の破壊と爆発がちょうど映画開始から2時間後(01:59:30~02:00:00)で、ハンの死から10分後となる。

 つまり、シールド解除まで10分、そのあとハンの死まで10分、そこからスターキラー基地の破壊まで10分という構成となり、ほぼ10分毎に物語が進むテンポの良さがわかる。

 また、レイが惑星オクトーへ出発して、ルーク・スカイウォーカーが登場するのが、ハンとレイアの別れのシーンからちょうど30分後(02:05:45)、レイアの登場から45分後で、レイがルークにライトセーバーを渡すエンディングは、レイがフォースを覚醒させて、カイロ・レンに反撃したポイントから10分後にあたる(02:06:30)。

   こう見ると、四部構成の節に必ず盛り上がるポイントがあって、さらにそれぞれの中も10分毎に物語が展開していくのでリズムが非常によい映画なのがわかる。ちなみに、ハン登場が物語開始40分後、レイア登場が80分後、ルーク登場が125分後で全体を3分割したほぼ40分間隔で旧キャラクターが登場していることもわかる。

 

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主人公レイの目的

設定・レイの望みは家族との再会

 2015年に公開された新三部作の第一作『フォースの覚醒』。エピソード7とされたスター・ウォーズの物語だ。この物語の主人公はデイジー・リドリー演じるレイとされ、惑星ジャクーでゴミ漁りをして生きている少女とされた。

 レイが新三部作の主人公であるならば、エピソード7から9の中で彼女の物語が展開されるわけだが、この三部作構成を物語の三幕構成と考えると、「設定」「対立」「解決」というものが描かれているのが典型となる。

 では『フォースの覚醒』の中で示されたレイの行動の目的とは何だろう?レイは惑星ジャクーでゴミ漁りをして生きていたが、彼女は自分の家族を待っていた。そして、それが彼女が生きる唯一の希望であり目的だった。このことははっきりと描かれているので異論はないだろう。

待っているの、家族を。戻ってくるわ、いつかね。

ジャクーに戻らなきゃ。家族を待っているの。

 これは、はっきりしていて、レイはこのことに対してかなり強い意志を持っている。ミレニアム・ファルコン号でジャクーを脱出しても、レイはジャクーに戻ろうとしていたのだ。起承転結の起承にあたる物語の折り返しまで、レイは常にこの行動目的にそって行動している。

 対立・マズを拒否するレイ

 惑星タコダナで、かつてルークの持っていたライトセーバーに出会い、フォース・ビジョンを見たレイ。フォースを覚醒させたレイは、そして、マズ・カナタから次のように言われる。

あなたは気が付いているはず。ジャクーで待っているものはもう戻ってこれない。でも、戻ってこれる人もいる。

ルーク・・・

 マズのこの言葉によって、レイの行動目的が再定義されるのだ。ここで、「ジャクーで家族を待つ」というレイの行動目的に一つの答えがすでに示されることになる。レイが探している人物は過去にいない、未来にいると、マズに教わったレイ。

   これはレイが両親が帰ってくると信じていたことに対し、すでに両親は戻ってこれないという事実を認めなければならないという最大の障壁である。つまり、主人公に設定された目的に対する対立が描かれる。

 そして、ここで「ジャクーで家族を待つ=ルーク・スカイウォーカーを探す」という形で置き換えられる。つまり、探しているものは未来にあり、何を言われようとジャクーに戻ると言っていたレイは、それを捨てむしろ未来に向かいルークを探すことを受け入れ立ち向かうことが試練となる。だが、それでも、レイは一度これを拒絶する。

 ちなみに、実は『新たなる希望』におけるルークと同じだ。以前の記事(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』をもう一度楽しむ:ルークとレイの共通点徹底比較 - StarWalker’s diary)でも類似点だけは取り上げたが、今回はより踏み込んでそれが意味するものを書きたい。

 『新たなる希望』において、ルークは、オビ=ワン・ケノービにより「一緒にオルデランに来るのだ」「フォースを学ぶのだ」といわれが、ルークは明確にこれを一度否定する。

無茶なことを言わないでください。帝国のやっていることは許せないけど、僕に何ができるのですか。

 この後、ルークは、最終的に育ての両親であったオーウェン夫妻を失い、すべてを失ってしまう。この時、彼は自らの意思で「亡き父のようなジェダイになる」ことを誓うことになる。

 ここで、ルークは行動の目的を自らの意思で決定する。つまり、ルークがジェダイになると誓ったのは、オビ=ワンに言われたからでなく、自らの意思によるものである。そのために、オビ=ワンから言われた言葉を一度拒否し、再び新たに自分の口から宣言することで、はっきりと主人公の目的として定義されるわけだ。

 レイは、マズ・カナタの言葉により、自分は「ルーク・スカイウォーカー」を必要としていることに気が付く。しかし、「そのセーバーをとりなさい」と言われたレイは、一度これを拒否する「あのセイバーには二度と触れない」と。

 『新たなる希望』のおけるオビ=ワンの役割は、ここではマズ・カナタが負っている。ルークがオビ=ワンの「フォースを学べ」という誘いを拒否するように、レイは、「ライトセーバーをとりなさい」というマズ・カナタの誘いを拒否するのである。

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 そして、ルークが次に自らの意思で「亡き父のようなジェダイとなる」と宣言するように、レイもまた自らの意思で「伝説のジェダイルーク・スカイウォーカーに会いに行く」ことを決意する。つまりレイの行動は最大の障壁を越えて解決に向かう。 

解決・レイの決意

 このレイの行動の目的に対する解決は、二段階で示される。マズはレイに「ライトセーバーを取り、探すべき人物はルーク」だと言っている。

   カイロ・レンと対峙したレイが、フォースによってライトセーバーを自らの手に収めるあの場面は、この解決が示された第一の場面になる。「ライトセーバーをとりなさい」というマズ・カナタの誘いを一度は拒否したレイだったが、ここで、レイは初めて「自らの意思で」ライトセーバーを手にする。

 つまり、ここでレイは、マズ・カナタに言われた「待っている人は未来にいる。その人こそルークであり、セーバーをとってルークの元に行くのだ」という言葉を、自身の行動の目的として自ら宣言するのである。ルークの場合と異なり、レイの場合は、行動でそれを示している。

 だからこそ、ここで流れる曲は、有名な「フォースの主題」でなければならない。

 そして、レイは、スターキラー基地でカイロ・レンと戦った後、再びジャクーに戻る道もあったはずだ。だが、レイはルークに会いに自らが出かけることを決意して旅立つが、ここが第二の場面になる。だからこそ、レイに対してレイアは「フォースとともに」と言葉をかけるのだ。

 『フォースの覚醒』により示されたレイの行動の目的は、すなわち以下の通りだ。そして、これは三幕構成でいう最初の第一幕、「設定」において、主人公の行動する目的が定義されるという物語の定石にしたがっている。

 このうち『フォースの覚醒』では、ルーク・スカイウォーカーに出会うまでが描かれたわけだが、これも『フォースの覚醒』という一つの映画におけるエンディングとして、主人公の行動の解決が示されるという意味で非常に良い終わり方をむかえ、物語として実にうまくまとまっている。  

 

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まとめ

 『フォースの覚醒』は、まさしくフォースとレイの出会いを描く映画であったわけで、このような物語の進行の見事な構成と演出が、物語に感動を与えているといえる。「フォースの主題」の音楽と「フォースと共に」の台詞の使い方が実に見事だ。

    このあたり、J. J. エイブラムスらしい、あるいは脚本のローレンス・カスダンの功もあるだろう、がっちりとした構成で組んだ本格的でクラシカルな映画といえる。

 さて、同時に『フォースの覚醒』は新三部作を三幕構成で考えてみた場合に、その第一幕である「設定」の役割を果たしている。つまり、レイは「自分の両親との再会」が彼女の人生の目的であることには変わっていないわけだが、これに対する解決はまだ描かれておらず、続くエピソード8で、それに対する「対立」、目的のための障壁にぶち当たる主人公と、エピソード9ではそれを乗り越えて最終的な「解決」につながる物語が展開される。